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第1部   人間性豊かな生活環境に向けて
第3章  今後の方向と課題
2  人間的な豊かさに向けた科学技術を推進するに当たっての諸課題
(4)  豊かな科学技術に向けた科学的体験の重視


昨年の科学技術白書でも取り上げたが,創造性発揮条件の調査によれば,我が国を代表するような研究者10人が,成功につながった条件として,若いうちから責任を任され,自由な雰囲気で研究ができたという研究環境のよさ,よき研究指導者に恵まれたことと並んで科学的好奇心を育てた青少年期の原体験をあげた人が多い。このような自然と親しみ,技術的工夫を楽しむといった青少年期の体験は,単に国際的にも通用する独創的な研究成果を出す上で重要であるばかりでなく,科学技術のシーズを産み,育て,応用する研究開発の各プロセスで必要となる着想力,構想力の基礎となる感覚を養うものとして,我が国の研究者一般の創造力を高めていく上で重要な意味をもっているといえよう。

また,科学技術の発展本来の姿としてみても,自然に学び,人間に学ぶということ自体が,それまでの人が考えた人工的なものを超えた新たな科学技術の発展の原点となり,同時に,自然に親しみ情緒ある人間を育てることこそが人間的な豊かさを増進する科学技術発展の原動力ともいえよう。

このような意味で,基礎的研究を強化して独創的新技術を創出することにより,国際的にも貢献していくことが必要であり,又,科学技術と人間性との調和が重視されるようになってきた我が国の今後の科学技術の発展を考える上で,科学的あるいは技術的好奇心を伸ばせるような原体験あるいはその疑似体験の充実は極めて重要なものとなってきている。

第1-3-9図 博物館数の推移

こうした原体験の充実は,家庭で,学校で,職場でというように社会の様々な局面でそれぞれ考えていかなければならないものが多い。特に科学技術面での原体験の機会に限ってみれば,自然の中で遊び,あるいは身近かなところで自然や技術に対する好奇心を養うことがまず必要であるが,博物館活動,サイエンスクラブ活動,あるいは博覧会等のイベント等を通じて肉体的,知的な原体験,模擬体験をさせ,また,自然に対する好奇心を啓発していく機会を拡大していくことも重要である。

ここで,博物館についてみると,近年特に市町村を中心に郷土博物館,美術博物館等を整備する動きが盛んであるが,科学技術についても,自然に親しむ動・植物園,産業や生活技術の変遷を教える歴史博物館,現代科学技術の理解の増進を図る科学博物館等多様な形で着実に進展をみせている( 第1-3-9図 )。

これを設立主体でみると地方公共団体や公益法人等の公共的なものも伸びているが,昭和61年の民間動向調査の対象企業773社のうち,企業博物館を保有しているもの44社,具体的な設置計画に入っているもの3社,設置について検討しているもの31社というように博物館を持つ企業が多くなり,これまで多くの先端技術を社会に送り出し,科学技術の面でも大きな役割を果たした企業もこうした社会的側面でも大きな役割を果たしはじめている。

また,その活動内容も技術を単に静態的に陳列するものから,装置を動かしたり,光と音楽も使いながら動態的に見せるものが増え,あるいは参観者が触わり,動かす等によって体験的に見,パソコンクイズ等自分で考えさせるいわゆる参加型の展示が増えてきている。

例えば,国際科学技術博覧会でも飛び乗り発電機,乗って捜す日本地図,パソコンクイズ等参加型のものに子供が群がり),また横浜子供科学館のようにトンネル,パソコンコーナー等当初から参加型展示を中心とした設計を考えた博物館が増え,なかにはそのほとんどをパソコンクイズ等参加型で占めるものまで現れてきている。

こうした科学博物館は,さらには,電力,ガス関係でみられるようにクッキング教室や科学者による講演教室を開いて主婦に身近なところで科学技術を考えていく場を設けたり,横浜市や神戸市の科学博物館のようにサイエンスクラブ型の体験の場を織り込んでいくものも増えている。

こうしたクラブ型の活動は,単に,博物館活動の延長としてだけではなく,サイエンスクラブ等として,それ自体が独立して行われるものも多くみられ,なかには科学的実験や体験を専らとする塾やセミナー等も人気を呼ぶものが出はじめている。

さらには,百貨店,新聞社,業会団体等によるハイテクを利用した製品展示,ハイテクを利用した芸術展や生活展あるいは恐竜,熱帯生物等の展示も多種多様の人々にこうした科学技術の理解を深めてもらうのに大きく貢献しているといえよう。

第1-3-10図 国際科学技術博覧会を見て良かった点 科学万博を見て「非常に良かった」,「まあ良かった」 と答えた者(257人に,複数回答)

また,世論調査の結果,国際科学技術博覧会を見てよかった点として「世界の最先端の科学技術の現状を知ることができた」を挙げる者49%,「科学技術に関する興味,関心が深まった」31%,「子供の科学技術に対する興味,関心を深めるのに役立った」30%等が挙げられており(第1-3-10図),科学技術への理解を深める機会として,科学的内容を伴ったイベントも大きな効果があるとみられる。こうした科学技術上の原体験,疑似体験を増やすという視点からは,こうしたイベントの充実も重要である。このため,科学博物館,自治体や企業の活動の中にもこうした科学的な要素をもったイベントを主催するものが多くなっているが,それとともに子供の日行事として野外フィールド等で科学的体験を織り込んだ行事が企画され,あるいは日本全体としては科学技術週間行事等によって全国的な規模でこうした機会を作っていくことが行われている。

しかし,我が国を代表する国立科学博物館の収蔵標本資料約130万点に対して米国のスミソニアン国立自然博物館5500万点というように,我が国の科学博物館活動は欧米に比べてまだ層が薄く,さらに一層の充実が必要とみられる。

また,例えば英国自然史博物館では館をそのまま教室として使うことが自然に行われているというように国民生活へのなじみ方の面でも我が国は遅れており,科学的イベントの活用等こうした面での対策も重要となっている。

また,国立公園,国定公園等はある程度整備されてきているものの,より身近なところで自然を体験できるような自然フィールドの数は少なく,こうした社会施設の充実も必要とみられる。


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