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第1部   人間性豊かな生活環境に向けて
第3章  今後の方向と課題
2  人間的な豊かさに向けた科学技術を推進するに当たっての諸課題


我が国は,この40年間技術革新により国力を伸ばし,豊かな国民生活を築いてきた。

これからの21世紀に向けてもやはり,科学技術会議第11号答申でも指摘されているように国力の基礎を人間の知的創造力に求めていかざるを得ず,将来の可能性を科学技術の新たな発展に期するところは極めて大きい。

昭和58年に閣議決定された「1980年代経済社会の展望と指針」にもふれられているように,これまでの発展によって,国民の所得水準や生活の自由度が向上し,国民のニーズはこれまでの物的豊かさの追求から総合的な生活の質の向上へと向かいつつある。すなわち,個人の健康の維持増進や生活環境等の身のまわりの健全性に関心が高まるとともに,生活の基礎単位である家庭,職場,地域社会の中で人々が生き甲斐と安心感を持って諸活動に参加し,人と人との触れ合いを求め,自己実現を図ろうという指向性が高まっている。こうした人間的な豊かさは,社会的諸制度や芸術文化的活動を含めた人間の諸活動によって総合的に実現されていくものであるが,科学技術も決して無縁ではない。

科学技術は,これまでにも利便性,快適性を中心に発展し,社会,生活に多大の便益をもたらしてきた。これからも,こうした利便性,快適性等の増進は依然として重要であるが,これからの人間的な豊かさの実現に向けてその一翼を担っていくために科学技術の面でもこれまで以上に社会や各人のニーズを的確に把握してこれと科学技術との効果的な結合を考え,単に科学技術そのものとして発展させるだけでなく,各人の個性と役割を十分に生かしていけるようなものに再構築し,人間及び社会の側からのニーズと一体となった展開を重視していかなければならなくなっている。

これからの科学技術は,「考え,行動する」主体者である人間との関わりをますます深めていくものとみられ,それだけに,21世紀に向けての新たな科学技術の展開は,これを人々の活力と創造性を発揚させていくものに如何に発展させていくことができるかによって大きく左右されていくものになるといえよう。

こうした観点から,これからの科学技術を人間的に豊かなものにしていくためには,これまでの研究開発活動の一層の発展を図るとともに,これに加えてまずその成果を享受する人間の立場に立って,人々の生活や活動の健常性や活力を高めていくための支えとなる研究課題の一層の深化を図り,同時に人々が安心で安定的な生活をしていくための技術基盤の強化を図ることが重要となってきている。

また,これらと並んでバイオエシックス等の新技術の適用に係るコンセンサスの問題や,悪用対策の問題も含め,ゆとりと活力の増大に向けた科学技術の適正な活用方策を確立していくことも重要化してきている。

他方,豊かな科学技術を産み出していくという立場からはそうしたことを可能にする人間の育成条件の確保も重要な問題となってきている。

これからの科学技術の推進に当たっては,基礎的研究の強化や研究活動の連携促進等重要な政策課題も多いが,ここでは,人間と科学技術の調和ある発展という視点から,特に重要となる技術課題とその周辺条件の問題として上記諸問題について取り上げてみたい。


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