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第1部   人間性豊かな生活環境に向けて
第2章  社会・生活と科学技術
2  生活の場における変化
(2)  家庭生活


戦後,国民生活の変化に最も大きなインパクトを与えたものの一つは,家事労働の自動化を軸にした家電製品の開発と普及である。

このような動きが本格化しはじめたのは,昭和30年頃であり,まず,白黒テレビの普及が先行し,さらに家事を省力化する電気洗濯機,電気掃除機,電気冷蔵庫が普及した。次に,昭和35年からカラーテレビ放送が始まり,昭和39年のオリンピックを契機に本格的に普及し,カー,クーラーとあわせて新三種(3C)の神器時代を形成した。さらに,ステレオ,電子レンジ等の普及が進んだ後,昭和50年代に入ってもルームエアコン,電子レンジ,VTR等の普及が進んだ( 第1-2-17図 )。この間,企業はシェアの獲得と拡大に向けて,製品の性能やデザインの改善に努力したが,多くの製品が性能,品質面で消費者が一応満足しうる水準に近くなり,同時に昭和40年代後半からカラーテレビ,電気冷蔵庫,電気洗濯機等の普及率がほぼ頭打ちとなって,買い換えと新家族形成による需要に支えられるようになっている。このため,昭和50年代からは,各製品技術は,消費者の個性にあわせた製品の多様化やスタイリング,フィーリング等の非経済的価値を織り込む方向での改良が中心となり,いわゆる個性化の時代になってきた。また,この頃には,コンピュータの生産ラインへの導入により同時に多品種の製品の生産を行いうるFMS技術が完成され,こうした個性化時代を支える生産技術が整ってきた。現在,例えば,電気冷蔵庫の場合には,食品のまとめ買いをする人の増加に対する大型化,単身者,学生向けの小型化,使用目的にあわせた多ドア化等の容量幅の増大,急冷,解凍,種別同時異冷却等の機能の拡大や高度化,これまでの白を基調としたカラーコードに対し,アイボリー,緑,赤,ピンク等のカラー化が進んでいる。

第1-2-17図 主要家電製品の普及率

こうした動きの中で,より高機能なもの,より使い易いものを追求した技術の開発も着実に進展をみせている。

電気洗濯機の場合,一槽から二槽に,続いて全自動へ,さらには,乾燥機付ホームランドリーへと複合化が進み,すすぎセンサー,布センサー,光センサー等のセンサーの進展やICの導入による高機能化が進んでいる。

テレビも昭和28年からの白黒テレビから昭和35年のカラーテレビに,さらに現在では多重放送(音声,文字)の機能も付加され,今後は高精細度TV,壁掛けTV,折りたたみTV,VTRメール等多様な発展を遂げようとしている。

こうした家電製品の普及は,個々の家事労働の負担を軽減し,生活は便利になるとともに,テレビ,VTR等それまでの生活体系にはなかった新たな手段をも加えて生活の豊かさを拡大してきた。

また,こうした家事労働の軽減は,外部をみつめる余裕を産み,家事労働の外注化(洗濯の場合,ドライクリーニングは,昭和27年に1.7万店から30年2.3万店,50年9.7万店,58年13万店と増え,裁縫でみても衣料完成品の購入の拡大が進んでいる。)も進んでいる。

このように,家庭は物質的には豊かになり,家事の省力化は進んでいるものの,他方では,家事製品による作業の合理化の進み方に比べて,主婦の家事時間はそれほど変化していない( 第1-2-18図 )。前述の世論調査でみたように,便利さの向上が生活能力の低下につながるところを問題視する人も多いこと,また,核家族化が進展してきたこと等からみて,家事ノウハウの継承や多様性はむしろ低下傾向にあるとみられる。

第1-2-18図 主婦の家事時間

しかし,家事は,毎日のことであり,また一生を通じて実行するものであるところから,21世紀に向けてこれからの家庭生活を主体的,精神的文化的にも豊かなものにしていくためには,家事,家庭ノウハウ等の知識,能力の拡大を図り,明日に向かっての活力の原資となる知的ストックの拡大を図っていく必要がある。このため,職場と同様に,家庭においても知的ウェイトを高めつつ,家庭生活を創造性と活力のあるものにしていくために必要となる素材や方法論の豊かさを実現していくことが重要となってきている。

現在,家事の合理化の流れはさらに続いており,これまでの個々の家事を合理化する家電製品に替わって,今ではそれを総合化したホームオートメーションが進化し始めており,火災,ガス,防犯等のホームセキュリティ,風呂の水温制御,照明制御等の集中管理化や外部からのテレコントロール化,さらには,健康管理,高機能電話,余暇情報,家庭学習,ホームショッピングやバンキング等その適用領域も拡大の一途をたどっている。この場合,装置,物資等ハード面での生活関連技術の進展に比べて,これらの使い方等ソフト面での生活関連技術の進展はかなり遅れる傾向がみられ,今後は,自由な選択肢を拡大する方向でハードウェアの進展を図るとともにこうした技術を有効に使い,生活をゆとりあるものにしていくための生活ソフトウェア,生活機器のユースウェアの開発と高度化も重要な課題となってきているといえよう。


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