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第1部   人間性豊かな生活環境に向けて
第2章  社会・生活と科学技術
1  職場における変化
(1)  工場における自動化(FA化)の進展


工場における自動化の歴史は長い。

まず,昭和30年代までにおいては,製鉄にみるストリップミル(昭和25年技術導入),連続鋳造(昭和30年技術導入),LD転炉(昭和34年技術導入),新型連続鋳造(昭和40年国産),あるいは造船にみる溶接工法(昭和27年),ブロック建造法(昭和42年)のように各生産工程における自動化,連続化が進み,より大量の処理,より生産効率の高い工程技術の発展をみた。

続いて昭和40年代には,工作機械にICが組み込まれて工程の自動化が大きく前進し,コンピュータと連続した産業用ロボットの実用化も始まった。

昭和50年代に入ってからは,工作機械にマイクロコンピュータが組み込まれるようになり,NC化率が大きく上昇した。

例えば,金属工作機械におけるNC化率をみても昭和45年度の8.5%から昭和50年度18.4%へと昭和40年代には漸増していたものが,昭和53年度頃から急速に増え,昭和55年度には50%を超えるに至っている。

第1-2-1図 産業用ロボット生産台数のタイプ別割合

こうしたNC化の進展の中でマシニングセンター,旋盤,放電加工,フライス盤,中ぐり盤等の各工程作業の自動化が進み,また,コンピュータと結合したシステム技術面でも昭和40年代までの第1世代ロボットともいえるティーチング型のものから,昭和50年代には第2世代ロボットといわれる各種センシング機能を備え,マイクロコンピュータを用いて簡単な適応動作が可能なものに進み,いわゆるメカトロニクスの隆盛をみている( 第1-2-1図 )。

このメカトロニクスは,工程処理のスピード化,高信頼性化,高精度化,作業の柔軟性の付与等によって技能者不足への対処,悪環境下の作業のような難作業の容易化,製品価格の低下あるいは付加価値の向上等生産現場の様々な要求に応え,単に工作だけでなく,検査,試験,塗装,装着等いろいろな工程に拡大されてきた( 第1-2-2図 )。

こうした流れの中で,当初,切削・研削,成型加工等工程単体レベルに始まった自動化は,順次関連するいくつかの工程をシステム的に統合した生産ラインそのものの自動化に進み,さらには,ひとつの生産ラインで同時に一品ずつ別のものをも製造できるFMS(Flexible Manufacturing System),あるいはこれまで人に依存してきた設計,製造管理等の作業の自動化技術(CAD/CAM)が導入され,今では工場全体をひとつの自動システムにしてしまうFactory Automationの実現をみるに至っている。

こうしたFA化の進展は,当然ながら職場における労働のあり方に大きな変化を与えている。

第1-2-2図 産業用ロボットの用途別納入台数実績

まず,これまでの機械化,自動化,大規模な設備更新の目的をみると「生産コスト低減68%」,「生産量拡大45%」,「人員削減32%」の順になっており,全体として生産コストの低減を目指したものが多くなっているが,今後大規模な設備更新を図ろうとするものの目的をみると「生産コストの低減73%」に続いて「生産の精度・柔軟性の向上47%」が大きく浮上してきており,FMS等生産の高度化を目指した動きが活発化しようとしている( 第1-2-3図 )。

第1-2-3図 生産ラインの機械化・自動化等における従来及び今後の目的

もっとも目的達成度でみると「人員削減87.4%」,「生産量拡大87.0%」,「労働条件改善86.0%」に比べ「精度向上69.5%」,「低コスト化75.4%」はやや低く,自動化の進展等による生産技術の高度化は,これからもさらに進展していくとみられる。

また,こうした大規模な設備更新等が労働内容に与える影響をみると,「作業が簡素化した52%」,「定型的作業が増大した18%」というように作業内容が簡明化したとするものがかなりある一方で,「定型的作業は減少39%」,「作業内容はすっかり変化27%」,「作業手順は複雑化11%」と作業内容が複雑化,高度化したとするものがそれ以上にある( 第1-2-4図 )。

また,肉体的精神的な健康面での利点は増大したとするものが31%で,支障を来たし易くなったとするもの2%を大きく凌ぎ,この面ではかなりの効果をもたらしているとみられる。

第1-2-4図 生産ラインの機械化・自動化等に伴う労働環境の変化の傾向

こうした生産技術の変化によって,機械に置き換えられた部門の人材は,他の部門や他の作業に職務内容を変換していく必要が生じてくるが,昭和61年「民間企業の研究活動に関する調査」 (以下,「民間動向調査」という。)でみると職種変換を生じた企業は38.4%,生じなかったものは61.6%となっており,同じ生産ラインに続けて従事するもののその作業内容が変化していくものが多くなっている。

職種を変換するにせよ,ラインに残って作業内容を変えるにせよ,そこに働く労働者にとってその業務を変えること自体は大変であることは否めないが,製品やサービスに対する要求などが時代とともに常に動いていることから,生産ラインの自動化等は今後ともさらに進むと考えられるので,個人,企業さらには国を問わず,こうした流れにうまく適応していくことが必要である。

そこで,新しい職務内容への適応についてみると,職種を変える場合には,20歳代では87%,30歳代では62%が容易と考え,困難とするものはそれぞれ10%にも達しないが,40歳代では困難とするものが44%と容易とするものの倍となり,50歳代では74%が困難としており,やはり高年齢化するほど転職は厳しいものとなっている( 第1-2-5図 )。

また,同じラインに続けて従事する場合の適応については,20歳代94%,30歳代79%,40歳代40%と全体的に適応は容易とするものが多く,困難とするものは40歳代20%,50歳代49%とやはり高年齢化が進むほど多くなっているものの職種転換の場合よりはかなり少なくなっている。

第1-2-5図 生産ラインの機械化・自動化等に伴う労働環境の変化への適応

第1-2-6図 業務の態様別の従業員構成比率の推移

こうした側面から考えればFA技術の進展は,そこで働く人々ができるだけ同じ生産技術の延長で勤務していけるものにしていくことが望ましく,また,職種変換を伴うようなものである場合にも知識的関連の強いところへ変えていくことができるようなものにしていくことが必要といえよう。

他方,業務部門別の従業員構成の動きでみると 第1-2-6図 のように生産関係従事者が減少し,総務・会計関係従事者がこれに続いているのに対し,研究関係従事者,続いて営業・販売関係従事者が伸びている。

このように職場における技術では,全体としては肉体的作業を減少させ,常に新しい知識を吸収し,考えていく必要のある知的作業を増やしていく傾向にあり,この意味での労働の知識集約化を進行させるものとなっている。

また,現代の情報・電子系技術においては,これまでのメカトロニクス技術に加えて,ある程度の学習や推論,より高度な適応制御を行う自律知能型ロボットや専門家の知識経験をデータベース化して使うエキスパートシステム等の研究開発が進んでおり,これからの職務内容はこれらを使ってより総合的,かつ,高度な思考を行っていく必要があるものが増えていくとみられ,職場では人間はさらに知的な存在になっていくものと予想される。

なお,近時,特に伸びが著しい研究関係従事者について,そこで重視される資質についてみると,企業は,基礎的研究部門においては,採用する人材に対しては専門知識(68%),思考の柔軟性(38%),豊かな着想力(35%)の順に重視しているのに対し,そこに働く人材に対しては専門知識(63%),豊かな着想力(41%)と並んで新しいものに対する構想力(36%)を重視するものが多くなっている。

また,応用開発研究部門においては,専門知識を重視するものは48%と基礎研究の場合よりやや少なくなるものの,思考の柔軟性37%,・豊かな着想力36%の順に重視しており,採用する人材に対しては基礎的研究の場合と同様の考え方をとっている。これに比べてそこで働く人材については,行動力45%が最も重視され,新しいものに対する構想力41%,専門知識32%,豊かな着想力32%の順となっている( 第1-2-7図 )。

第1-2-7図 研究本務者として望ましい知識及び資質等

このように,近時の職場では,専門知識や着想力,構想力,行動力が重視されるようになっており,他方では,時代の変化が激しいこと等もあって専門外知識も重視されるようになってきている等,研究現場でも学び,考えることが一層重要視されるようになってきているといえよう。


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