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第1部   人間性豊かな生活環境に向けて
第1章  科学技術の進展と研究開発機能の比重の拡大
3  科学技術の国民意識への定着化


このように研究開発活動そのものが社会の中でひとつの大きな位置を占めるようになり,あるいは社会の中に溶け込むようになってくると同時に,科学技術の国民生活への定着も進んでいる。

まず,OA機器,家電製品,自動車等様々な生産技術の分野や輸送,通信等の公共サービスに関する技術分野で,先端的技術の成果が社会の様々なところに取り込まれ,そのかなりの部分が生活の中で普通に使われるようになってきている。

例えば,居住環境の面でみれば,金属,セラミックス等の様々な材料の低コスト化,軽量化,高強度化,加工性能の向上等の技術の進展と生活上のニーズが結合され,アルミサッシや気密材,遮音ガラス,カーテンウォール,カーペット等の内装素材の安全性,衛生性,快適性,好感性等が大きく向上し,また,その種類も豊かになって,人々は,高度技術そのものの動きや木質材,無機質材,金属材の区別に関係なく,自らの生活感覚にあわせて任意にこれらの素材を選択し,組み合わせて,その望む生活空間を創造していくことのできる時代になってきている。

また,こうした製品やサービスの生産と消費の面だけでなく,自然災害,公害等の人々の活動環境の面でもその防止技術が普通のものとして社会に定着化してきている。

例えば,自然災害等に関する対策の面でも,時代の進展とともにその時点での最新の科学技術を活用した災害対策の充実等が進み,台風等による死者,行方不明者は昭和30年代に比べて減少している,( 第1-1-4図 )。

このような中で,科学技術を活用した災害対策が国民意識の中で一般化してきており,科学技術に対する国民の関心は,最近多発している土砂災害等に対する災害対策の充実や,技術的に手法の確立していない地震予知,火山噴火予知に関する研究開発等に移ってきている。

第1-1-4図 自然災害による死者・行方不明者の原因別割合の推移

このように,科学技術は国民生活のすみずみにまで一層の浸透をみせ,人々は科学技術を特別のものとしては意識せず,様々な生活行動の中の一部として把える局面が増えつつあるとみられ,国民の科学技術に対する関心の示し方も変化してきている。

例えば,昭和60年には筑波研究学園都市で国際科学技術博覧会が開催され,ロボット,光と音の科学技術等多くの先端技術の成果が展示されたが,昭和45年の日本万国博覧会では,科学技術の象徴的な存在であった月の石ひとつ見るのに4〜5時間も並んだのに対し,立体映像,動物の眼の映像等いくつもの情報技術の展示に観客が分散し,目で見,耳に感じることを楽しむ身近なものやパソコンゲーム等触ったり,参加することを楽しむものに人が集まる時代になっている。

さらには,今春のハレーすい星の接近によって,関連機器,出版物の売上げが伸び,ハレーすい星を見るツアーが催される等の例にみられるように,自然現象や科学的エポックそのものが国民の関心を呼ぶようになっている。

ここで,世論調査によって,国民が科学技術の進歩をどういうところに感じるかをみてみよう。

まず,回答者の過半数が「医療技術の向上」を挙げ,これに「エレクトロニクスやバイオテクノロジーなどの先端科学技術」,「日常生活における衣食住などの便利さや豊かさ」が続いている( 第1-1-5図 )。

このように,かつて人類の月着陸等大型の先端的科学技術が関心を呼んだ時代に比べ,医療,生活等の身近な局面での関心が増え,また,エレクトロニクスやバイオテクノロジー等の高度技術が日常生活の中で意識されるようになり,科学技術の国民生活への一層の定着化が進んでいることをうかがわせる。

逆に,マイナス面からの感じ方をみれば「生活の便利さの代償としての人間の能力低下」,「機械化による人間関係の希薄化」,「科学技術の悪用と誤用のリスク」の順になっており( 第1-1-6図 ),公害対策,安全対策に関心が集まった昭和40年代,エネルギー対策等に関心が集まった昭和50年代に比べて,科学技術を使うことによって生ずる人間の生理,心理面のマイナス対策に関心が高まっていると考えられる。これは, 第1-1-5図 の進歩を感じる局面として「精神的,人間的な面での充実」を指摘する者が少ないこととあわせて,これからの科学技術はこうした精神的,人間的側面での対策が重要になっていることを示している。

第1-1-5図 科学技術の進歩をどういうところに感じるか(複数回答)

第1-1-6図 科学技術のマイナス面をどういうところに感じるか(複数回答)


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