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第3部   政府の施策
第2章  政府機関などにおける研究活動の推進
6.  多分野の協力による研究開発の推進
(5)  海洋開発


海洋は,生物,鉱物等多種多様の資源を包蔵するとともに,豊富なエネルギー及び広大な空間を有しており,その開発利用は重要な課題である。

海洋の開発に関連して,新しい海洋の秩序を確立するため第3次国連海洋法会議は,1982年4月に国連海洋法条約草案を採択し,12月の最終議定書及び条約署名会議において117か国及び2地域が同条約に署名し終結した。我が国も1983年2月に署名を行っている。

同条約は,領海幅12海里,国際海峡の通過通航,200海里の排他的経済水域,大陸棚,国際機関の管理下での深海底資源開発,海洋環境の保護及び保全,排他的経済水域及び大陸棚における海洋の科学調査についての沿岸国の規制,許可に関する権利等を含み,海洋に関する包括的な秩序を構成するものとなっている。

同条約は1984年12月に署名期間を終了し,当該時点までに159の国及び地域によって署名が行われ,1985年3月現在18ヶ国(1985年9月現在24ケ国)の批准を得ている。

既に我が国では,このような新海洋秩序の時代へ向けての国際的な動きに対応し,昭和52年7月に領海12海里及び漁業水域200海里の設定を行い,さらに昭和57年7月,深海底鉱物資源開発に関する国内法を制定しており,今後同条約の精神を遵守しつつ,国民福祉の増進,社会経済の発展のために海洋のもつ豊富な資源・エネルギー及び広大な空間のより一層の有効利用を環境保全に配慮しながら推進していく必要がある。


(1) 総合的な海洋開発の推進

政府においては,以上のような認識の下に,各般の海洋開発施策を進めている。これらの施策は,まず,関係省庁がそれぞれの行政目的に即して推進しているが,海洋開発に関する基本的かつ総合的事項については,内閣総理大臣の諮問機関である海洋開発審議会が調査審議を行うこととなっている。

昭和53年2月,新海洋秩序時代に対応し,我が国として海洋開発の長期的展望とそのための具体的施策を改めて検討することの要請が増してきたため,第2号諮問「長期的展望にたつ海洋開発の基本的構想及び推進方策について」が同審議会に対し出された。この諮問に対し,同審議会は,昭和54年8月,西暦2000年の社会,経済における海洋開発のあるべき姿を示した第1次答申を提出し,昭和55年1月,第1次答申に示された1990年の具体的目標を達成するための推進方策を示した第2次答申を提出した。

さらに海洋法条約採択を始めとする国際情勢の変化に対処し,今後の我が国の海洋開発の推進方策の検討に資するため,昭和57年より国際問題部会において,海外の海洋開発動向及び我が国が推進すべき海洋科学技術国際協力課題について調査し,昭和59年11月に報告書をとりまとめた。


(2) 海洋科学技術開発の推進

海洋開発を推進していくためには,海洋に関するより多くの知見を得るための海象・気象等の海洋調査研究,海底資源調査,海洋生物資源の生産力の調査等を強化する必要があるとともに,海洋開発の進展を支える海洋観測技術開発,潜水作業技術等の基礎的共通的海洋科学技術開発を強力に推進する必要がある。このため,昭和44年以来,関係14省庁の官房長等で構成される海洋科学技術開発推進連絡会議が設置されており,同会議において,「海洋科学技術開発推進計画」(昭和45〜53年までは「海洋開発のための科学技術に関する開発計画」)を取りまとめてきた。

昭和59年からは,内閣官房に置かれた海洋開発関係省庁連絡会議(昭和55年設置)において海洋科学技術に限らず海洋開発全体に範囲を拡げた「海洋開発推進計画」を策定している。この推進計画は,毎年,見直しが行われており,関係省庁では,同計画に沿って各種の施策を実施してきている。

昭和59年度において関係省庁が実施した主要な海洋科学技術開発は以下のとおりである。


(イ) 海洋生物資源開発

海洋生物資源は,我が国の将来における食料供給において大きな役割を果たすものと考えられている。このため,海洋のもつ基礎的生産力を活用し,海洋生物資源の利用の増大を図るためには,資源培養技術開発,漁場造成技術開発,未利用資源開発等を推進する必要がある。

本分野の技術開発は水産研究所,各県水産試験場,栽培漁業センター等を中心に各種の調査・研究を実施している。

資源培養技術開発の分野について見ると,栽培漁業技術では,昭和59年度は,ぶり,ひらめ,くろそい等の種苗生産等の技術開発を実施するとともに,府県が実施している放流技術開発等に対する助成を行った。

また,近海漁業資源の家魚化システムの開発に関する総合研究(マリーランチング計画)を推進し,必要な技術開発を行った。

漁場造成技術開発の分野については,沿岸漁場整備開発事業と関連して,人工魚礁漁場造成,増養殖場造成及び海域総合開発等に関連した砂泥域問題などの各種調査研究を行った。

未利用資源開発の分野については,中層トロール,まき網漁法等による新漁場開発調査,あろつなす,しまがつお等の新資源開発調査トロール漁法による深海域の開発調査等を実施した。

また,海洋生物資源開発調査研究として,科学技術振興調整費を用いて「海洋生物資源の生産能力と海洋環境に関する研究」を行っている。


(ロ) 海水・海底資源開発

海洋には海底の石油,天然ガス,マンガン団塊,熱水鉱床等の有用金属資源等が豊富に存在している。また,海水には多種類の物質が溶存しており,これらの物質が利用が期待されているほか,海水自体も水資源としての価値が見直されている。地下資源の乏しい我が国にとっては,これら海水・海底資源を開発することは重要な課題となっている。

本分野の技術開発は工業技術院を中心として推進している。

昭和59年度は,日本近海における国内石油・天然ガスの開発については,常盤〜鹿島沖の海域(水深500m〜2000m)において基礎物理探査を実施するとともに西津軽沖及び気仙沼沖において基礎試錐を実施した。また,水深300m以深の海底油田からの石油生産を行うための海底石油生産システムの研究開発を実施し,システムを完成させ,成果をまとめた。

深海底マンガン団塊の開発については,資源探査船「第2白嶺丸」を用いてハワイ南方海域における賦存状況調査を実施したほか,マンガン団塊採鉱システムに関する研究を行った。

また,海底熱水鉱床の実海域探査を行うための調査手法の確立,調査体制の整備等を行った。

海水資源開発については,省エネルギー型海水淡水化技術に関して逆浸透法の大型実験プラントの運転実験等を引き続き行ったほか,海水からのウラン回収技術に関してはウラン回収実験用モデルプラントの建設を行った。


(ハ) 海洋エネルギー

海洋には,波エネルギー,海洋温度差エネルギー,海流エネルギー等の様々な形のエネルギーが存在するが,再生可能なエネルギー源として,これらの海洋エネルギーの有効利用を図っていくことは,我が国の将来のエネルギー供給において大きな意味をもつものと考えられる。

本分野の技術開発は海洋科学技術センター,工業技術院が中心となって推進しており,他に港湾技術研究所においても研究を進めている。

昭和59年度は,波エネルギー利用技術開発として,波力発電装置「海明」に使用予定のタンデム無弁式発電装置,空気流位相制御装置の開発を行い「海明」に装備し,船体と計測装置を整備するとともに沿岸固定式の波力発電についての実証研究を行ったほか,波力発電防波堤の斜め入斜波に対する模型実験を行った。海洋温度差発電システムの研究については,トータルシステムの検討,環境アセスメント並びに要素技術とサブシステムの開発を行った。


(ニ) 海洋空間利用開発

国土の狭小な我が国にとって,生活の場,工業生産の場,貯蔵の場等として海洋空間を有効に利用することが必要である。

本分野の技術開発は港湾技術研究所,各港湾建設局,土木研究所,各地方建設局等を中心に進めているが,他に船舶技術研究所,建築研究所等においても研究・検討を実施している。

このため,昭和59年度は海洋空間利用調査研究として沿岸域利用事業調査,港湾整備及び海岸防災に関する調査等が行われた。

また,大阪湾泉州沖に設置する関西国際空港について,着工の準備のために気象・海象の通年観測等を継続して行った。

さらに,我が国周辺の水深50mないし100mの沖合大水深海域において利用できる大型の海洋構造物の開発に資するため,科学技術振興調整費を用いて「海洋構造物による海洋空間等の有効利用に関する研究」を行っている。


(ホ) 海域総合利用技術開発

我が国の多様な沿岸域を有効に利用していくためには,特定の海域について特性を踏まえた総合的利用を実現していくことが重要である。このような利用を実現するためには,第一に従来から,海面の主たる利用分野であった水産業と新利用分野の共存利用技術,第二に複数利用分野の有機的結合を図る多目的利用技術,第三に海域の自然条件を人工的に変換し,効率的利用に見合うようにする海域制御技術の大きく分けた3技術分野がある。

本分野の技術開発は海洋科学技術センター,港湾技術研究所,土木研究所等において推進されている。

昭和59年度は,海水流動の観測手法の開発,各種の海域モデルによるシミュレーション,消波,海水流動の促進等をはかる構造物の研究開発を行うとともに,沖合人工島を含む海洋空間の総合的利用等について検討した。


(ヘ) 海洋環境保全技術開発

島しょ国である我が国にとって,海洋の環境の我が国経済,社会に与える影響は大きい。このため,海洋汚染の実態調査及び海洋環境の悪化防止,改善のための技術開発が行われている。

この分野の調査研究は環境庁,海上保安庁,気象庁,国立公害研究所,港湾技術研究所,各港湾建設局,工業技術院,土木研究所,各水産研究所等で行われている。

昭和59年度には,海洋汚染の実態調査として,汚染状況の把握及び汚染機構の解明を図るため日本近海海洋汚染実態調査,我が国周辺海域における海洋汚染の調査,外洋のバックグラウンド汚染調査等を実施した。海洋環境の悪化防止,改善のための技術開発としては,瀬戸内海について,各水域間の海水交換の実態を把握するとともに,海水交換の基礎的解明のための数理模型実験及び数値実験を行った。また,赤潮発生,海域の富栄養化に対処し,あわせて漁場の機能回復を図るための技術を体系的に整理するとともに新たな改善技術を緊急に開発するため,生物的赤潮防除技術開発試験等を実施した。


(ト) 海洋調査研究

海洋の開発を効率的に推進するためには,海洋に関する調査研究をより充実させる必要がある。

この分野の研究は主として海上保安庁,気象庁が中心となって推進しており,他に海洋科学技術センター,工業技術院,国土地理院,大学等においても取り組みがなされている。

我が国の正確な領海の基線及び外縁線の確定,海洋の開発・利用等に資するため「沿岸の海の基本図」の整備を進めており,昭和59年度には中城湾のほか5カ所の測量を行い,5万分の1の海底地形図及び海底地質構造図を作成した。

さらに,国連海洋法条約により新たに定義された大陸棚の我が国の範囲の確定のための調査を昭和58年度から実施している。

一方,我が国の管轄海域の確定の基準となる本土及び島しょにおける精度の高い測地を行うため,昭和57年度よりレーザ測距装置を導入して測地衛星ラジオスの観測を実施している。また,沿岸域の各種開発・保全・利用計画等の策定の基礎資料として2万5千分の1の沿岸海域地形図及び沿岸海域土地条件図の作成を進めているが,59年度は,周防灘,島原湾地区の海底地形地質調査等を行い,2万5千分の1の沿岸海域地形図及び沿岸海域土地条件図を作成した。

さらに,黒潮の開発利用に資するため,その変動機構等の定量的把握を目的とした黒潮域の総合調査,西太平洋の海洋の変動機構等を解明するための国際共同調査である「西太平洋海域共同調査(WESTPAC)」,沿岸の海象を把握し沿岸海域の保全及び開発に資するための沿岸海象調査を行っている。

このほか,我が国は,深海掘削船を用いて海洋底を掘削し,大洋底の地殻構成,大洋底成立の経緯の解明等を行う「国際深海掘削計画」に参加しているほか,科学技術振興調整費を用いて,南太平洋諸国と共同で,「インド洋・太平洋プレート境界海域における島弧・海溝系の地質構造に関する研究を行っている。


(チ) 基礎共通科学技術開発

海洋開発を推進するためには,深海探査技術や潜水作業技術など海洋のもつ高圧,暗黒,低温等の悪条件を克服するための基礎共通科学技術の研究開発が重要である。

本分野では海洋科学技術センターが中心となって先導的,基盤的技術開発を推進している。

深海探査技術については深海潜水調査船システムの研究開発を行っている。昭和59年度においては,昭和56年10月に完成した2,000m潜水調査船「しんかい2,000」及び支援母船「なつしま」に用いて,南西諸島,三陸沖,相模湾,駿河湾において潜航調査を行い,海洋生物学に関わる調査,海底地形・地質の調査等を実施し,多くの成果を得た。また,広範囲にわたる調査や有人潜水船による調査が困難な海山や峡谷付近の調査等を目的とした無人探査機の研究開発を進めるとともに,2,000mより深い海域の調査が可能な高耐力潜水調査船システムの研究を行った。

潜水作業技術については水深300メートルを目標とした飽和潜水作業技術を確立するため,300メートル潜水シミュレーション実験を行うとともに,実海域実験を行うための海中作業実験船の建造を推進した。

また,迅速かつ的確な海洋観測を行うことを目的として,新たなる海洋観測システムを研究開発や海洋遠隔探査技術の開発研究を推進した。

さらに,科学技術振興調整費を用いて,「我が国周辺200海里水域における新調査システム開発に関する研究」に着手し,第1期として海洋観測用の信頼性の高いセンサーの設計,各種ブイ等海洋データ取得システム設計等の調査技術開発を進めた。


(リ)国際協力

昭和57年4月,新海洋秩序を成文化した国連海洋法条約が採択され,海洋開発も国際化時代を迎えている。これに伴い,海洋科学技術の研究開発も,国際的な取り組みが活発化するものと考えられる。我が国としても海洋国としてこのような状況に柔軟かつ強力に対応していくことが必要である。

このような観点に立って,昭和59年度は米国,フランス,西ドイツとの二国間協力により,情報交換,研究交流等を行い,フランスとは協力の枠内で日仏日本海溝共同調査(KAIKO計画)の第1期計画を実施し,フランス調査船「ジャン・シャルコー」により日仏の科学者が協力して日本海溝,南海トラフ等の海底地形・地質等の調査を行った。このほか,多国間協力として前述の西太平洋海域共同調査(WESTPAC),国際深海掘削計画等の推進を行った。また,海洋情報,海上気象の資料交換等を実施した。


(3) 海洋科学技術関連予算等

第3-2-17表 に我が国の海洋科学技術関連経費予算を示す。

第3-2-17表 昭和59年度海洋科学技術関連経費予算の総括表



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