ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
第1部   研究開発の新展開と連携の時代
第3章  次の躍進への我が国の課題
3.  国公立試験研究機関等における基礎研究の拡大と運営の改善


科学技術会議第11号答申「新たな情勢変化に対応し,長期的展望に立った科学技術振興の総合的基本方策について」でも示されているように,これからの日本にとっては,まず第一に基礎的研究等を強化して真に独創的革新的な新技術の創出力を高めることが必要とされており,大学,国公立試験研究機関,企業を通じて基礎的研究をより一層強化し,新技術創出の牽引力の設定,独創的な力を産みだすための研究運営の改善等そのための体制を強化していくことが必要となっている。

この場合,我が国では企業の果たす役割には大きなものがあるが,企業の場合1)全企業では研究費で見ても1社当たり平均約2億5,800万円,資本金100億円以上の大企業でも1社当たり約100億円の規模にすぎず,原子力,宇宙等の大規模技術への取組みには規模的な限界があること,(航空宇宙産業の自立度の高い米国の場合でも,航空宇宙産業は売-上高の18.3%を研究開発に使用しているが,そのうち自己資金は4分の1であり,政府の研究投資あるいは調達に大きく依存している),2)また,企業はその活動目的から自己の事業に役立つものしか手がけられず,基礎研究についても実用化までの期間が化学6年,鉄鋼5年,電機4.6年(昭和57年経済企画庁調査)と比較的短かく,基礎研究の面でも限界があること,等から大学,国公立試験研究機関,とりわけ公的部門が大きな役割を担っている。

1.で述べたように,国全体の構造から見た場合,国公立試験研究機関の基礎部門への努力の強化が必要なことはもちろんであるが,民間の眼から見た場合でも,国公立試験研究機関に対する基礎部門の強化への期待が大きい。民間動向調査によると国立試験研究機関に特に期待する研究の性格別内訳は,基礎研究39.8%,応用研究36.2%,開発研究24.1%であり,全体として基礎研究への期待が多くなっている。このように基礎研究,応用研究,開発研究の順に要望が強いという点は,素材型業種,加工組立型業種ともに同じであるが,大規模企業になるほど基礎研究への期待が大きく,応用研究,開発研究への自信が見られる。また,中小規模の企業でも未だなお応用研究,開発研究への期待には根強いものが残っているものの今や基礎研究への期待が最も多くなってきている( 第1-3-2図 )。

また,研究分野との関係を見れば 第1-3-3表 のように業種全体としては,近時躍進の著しい電気通信,新材料のひとつであるセラミックスの分野での応用研究への要請が1,2位を占め,しかも,電気通信,窯業以外の多くの業種から要望されている。続いて3位に電気通信分野の基礎研究,4位にセラミックス分野の基礎研究,5位に化学分野の基礎研究,7位に生物学分野及び有機化学工学分野の基礎研究というように基礎研究に対する需要が上位に並び,特に,高度技術の有望分野である電子,材料,バイオテクノロジーに関係する基礎研究への期待が大きい。

第1-3-2図 国立試験研究機関に対して研究の充実を要望する分野

第1-3-3表 国立試験研究機関に期待する研究の分野と性格

なかでも,直接関係の深い業種を持たない生物学に対する期待が素材,加工組立型産業を問わず全体的に大きくなっているのが注目される。

このように,国公立試験研究機関は,純粋基礎研究において大きな役割を果たす大学,実用技術の研究開発を行う企業の中間にあって,国全体としての革新的基本技術の創造のための活動の中核となる新しい科学技術のシーズ創出に向けて基礎的研究を質量ともに強化していくことが必要となっている。

独創的な基本技術を産み出す力を強化していくためには,研究運営の改善も重要である。

科学技術会議第11号答申を策定するに当たり,研究運営の改善等の方策を考える基礎データを得るため,ノーベル賞,学士院賞を受賞した人のうち10人を選んでケーススタディ(創造的な研究開発を推進するための条件調査(昭和58年度科学技術庁委託調査研究報告))が行われ,創造性を発揚するための条件因子としては様々なものがあるが,その中で共通的に重要なものとして次の3点が挙げられている。その第1の点は,少年期に自然現象等の好奇の目を向け,それを追求することを覚え,熱中したことが今日につながっていると考えている人が多く,少年期にこのような経験を持つ層が厚くなることが優れた研究者輩出の基礎であることである。第2の点は,受賞原因となる着想は平均32歳と比較的若く,その着想が出るまで特に効果があったと意識されるものとして,若いうちから責任を任されていたこと,組織も持つ伝統,情報,設備等の有形無形の知的ストックがあったこと,現象への着眼や解をみつける直感力と粘ばり強く集中的に取り組む馬力があったことである。第3の点は,若手研究者が自由に研究できる環境を作って能力を引き出し,それを評価できる良い指導者に恵まれていたことである。

国公立試験研究機関においても,今後,より独創的な基本技術の創出を拡大していくためには,この調査に示されているような条件(特に第2,第3の点)をできるだけ多く整備していくことが望まれる。特に,国公立試験研究機関においては,定員抑制の影響等により,近時新人補充が少なくなっており,全体として高齢化が進んでいる。

このため,前記調査に見られるように,より革新的な研究成果を得るためには,例えば若手研究者を中心とした基礎研究グループ,経験豊かな研究者を中心とした応用研究グループを編成するというように,組織そのの編成にまで踏み込んだ若手研究者の能力発揮条件の整備が必要である。

また,前記調査でも指摘されるように,飛躍的な研究成果を出していくためには,現代の研究開発においては幸運と偶然に支えられた直観というよりも,目的意識を持った集中力に支えられた直観がより重要になってきており,基礎的研究の面でもこのような研究推進を可能とする研究の目標の設定と研究運営も重要である。


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ