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第1部   研究開発の新展開と連携の時代
第3章  次の躍進への我が国の課題
1.  国全体としての革新的創造力の強化


第1章で見たように,近時の科学技術の経済社会へ与える影響の増大に伴って研究投資へのインセンティブが向上し,我が国の研究開発はその規模においても,また,今後の発展力の基礎となる人的,知的ストックの面でも国際的に見てもかなりの水準に達している。

また,科学技術の水準と研究開発のポテンシャルは,我が国の研究開発が民間に依存するところが特に大きいこともあって,生産技術,製品技術の面では国際的水準にあるものも多くなっているが,構想力,高度システム技術,コンピュータソフトウエア等総合的なソフト技術の面及び遺伝子資源管理等の先導的ないし基盤的な活動の面が弱く,基礎,応用,開発研究に分けた場合国全体として応用研究・開発研究への指向性が高いことから基礎研究の面が相対的に弱い構造になっている。

一方,科学技術会議第11号諮問に対する答申「新たな情勢変化に対応し,長期的展望に立った科学技術振興の総合的基本方策について」(以下,「科学技術会議第11号答申」という。)でも明らかにされているように,今後,我が国が21世紀に向けてより豊かな社会を築いていくためにも,また,我が国が国際社会において主体的貢献をしていくためにも,これらを支えるべき創造性豊かな科学技術の発展が不可欠であり,そのための積極的な研究開発活動を展開していく必要がある。とりわけ,今後の展開に当たっては,原理,現象に立ち返った技術シーズの創出を図るとともに,これを社会的ニーズと結び付け,改善・改良の枠を超えた独創的な科学技術の創出(以下,ここでは「革新的な基本技術の創造」という。)を図っていく水準での我が国独自の基本技術の創造を図っていくことが重要となってきている。

しかしながら,我が国の科学技術においては,基礎的研究,基盤的研究,研究開発支援基盤等,革新的な基本技術の創造の基本的要素ともいうべきところが弱い構造になっており,今後の新たな発展のためには,国全体としての革新的な基本技術の創造力の強化に向けて,まず,この面の構造的な改善が緊要の課題となっているといえよう。

この場合,我が国のこれまでの発展を大きく支えてきたものは民間企業の旺盛な活力であり,今後の革新的な基本技術の創造に当っても民間機関の活動に期待するところは極めて大きいといえよう。しかし,第2章で見たように,近時の研究開発は,基礎の裾野の広がり,異分野進出の拡大,研究期間の長期化等新たな展開に向けて大きく変化し始めており,これまでとは異質なより基本的な局面からの大きな努力を必要とし,また,これまでの単一機関のみの研究開発では十分目的が達せられないものとなっており,今後も民間活力を引き出していくためには,産学官等の連携協力環境の整備を始め,これまでよりも広汎かつ高度な民間活動の環境と条件の整備が必要となってきている。

また,基本的技術シーズの創出等公的部門に期待される部門について見れば,これまで国公立試験研究機関等の研究開発は安全基準,予報等行政業務の改善等の応用開発の面では大きな成果を挙げているが,目的性,効率性を重視した研究が大きなウェートを占め,基礎的ないし先導基盤的領域の研究は比較的弱いまま残され,これが我が国の革新的な基本技術の創造力の弱さの大きな一因をなしている。

すなわち,基礎研究に対する各部門別努力の国際比較を行った場合, 第1‐3-1表 のように,大学及び企業においてはそれぞれ基礎研究費で米国の三分の一に達し,西欧主要国よりも多くなっているが,政府研究機関による基礎研究への努力は,欧米主要国よりもかなり低水準にある。

また,基礎研究に対する投資を人口に対する比で見た場合,政府研究機関では米国は我が国の2倍,西ドイツは4倍,フランスは2.4倍,また,大学でも米国,西ドイツ,フランスともに我が国の1.3倍であり,この面での我が国の努力は相対的に低い。

第1-3-1表 国別・実施組織別・研究の性格別研究開発支出額

また,例えば,西ドイツではマックスプランク研究協会59研究機関約4,000人に対して,日本では理化学研究所など科学と技術の接点を中心的な研究業務とする機関はわずかであることからも,科学技術シーズ創出の面の弱さの一端が示されている。

現在,科学研究費補助金制度,創造科学技術推進制度,科学技術振興調整費,次世代産業基盤技術開発制度等この面の弱点をカバーするための施策も進められているところであるが,これらのみでは質的にも量的にも不十分であり,国公立試験研究機関等全体における基礎研究の強化や革新的基本技術の創造の強化を目指した研究運営の改善が不可欠である。

以上述べたように,現在我が国においては,国全体としての革新的基本技術の創造のための活動強化がひとつの大きな重要課題となっており,このうち特に,近時の研究動向として重要性を増している産学官等の連携環境の整備,国公立試験研究機関等の基礎研究の強化,国公立試験研究機関等の運営改善,特に科学技術シーズの創出の牽引力の強化をとりあげ,整理してみたい。


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