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第1部   研究開発の新展開と連携の時代
第2章  新しい技術を求めて動き出した研究開発活動
5.  類似性を高める各国の施策


近時,世界各国,とりわけ先進諸国を中心として,食糧,エネルギー,高度社会システム,高度技術等の領域を中心に自国の活動の安定化や総合安全保障を目指し,また高度技術等による既存産業の再活性化や新産業の開拓による産業と雇用の安定を目指して技術開発への意欲的な取組みが進み,研究費や研究人材両面にわたって各国とも大きな研究開発ポテンシャルを持つようになってきている。

この中でも米国の研究開発ポテンシャルは特に大きく,我が国に比して研究費で3倍,研究者で2倍の規模を持ち,また西欧もEC主要国合計で我が国に対して研究費で2倍強,研究者で1.5倍の規模を有している( 第1-2-38図 )。

第1-2-38図 世界の研究開発投資

産業部門で,先進主要国の業種別研究費の全産業に占めるシエアの順位を見れば( 第1-2-39図 ),電気・電子の分野は日本,西ドイツ,フランス,イギリスにおいていずれも1位であるが,米国においては2位であり,航空機の分野では米国の1位を始め各国とも上位を占めているのに対し,我が国では極めて低いことを除けば,多少の順位の変動はあっても先進主要国における業種別シエアの動向はかなり近似したものがある。

このため,各国の間における競争と協力の関係が拡大しつつあり,また各国の政策にも互いを意識した共通的な動きが強くなりつつある。

そこで,各国の研究開発計画に関する政策動向を比較すれば次のようになっている。

政府が主導的に推進している研究開発分野については,国防研究費の割合が極めて大きい(1984年61%)米国においてVHSIC(超高速集積回路)計画,STARS(ソフトウエア技術)計画等科学技術の面で注目されるべき研究開発が数多く推進されている。これを別格として,先進主要国では,共通的に政府は,原子力,宇宙,航空,輸送,通信等の大規模技術の研究開発の推進,医療福祉,環境公害等公共的に重要な技術の研究開発,いわゆる一般的科学研究,長期かつ高リスクのため民間企業で実施し難い先行基盤的研究の推進を図っている。

まず,大規模研究開発については,米国では航空宇宙局,エネルギー省等が直接研究を実施し,又は,大学・企業に対する委託・助成研究によってその推進を図り,西ドイツでは,原子力を始めとするエネルギー,高エネルギー物理,輸送,航空宇宙等を大規模研究開発機関で,フランスでは,宇宙,原子力,航空等の領域でCNES, CEA等の政府研究機関を中心にその強力な推進を図っている。我が国においても,原子力,宇宙等の大型研究開発について,政府研究機関を中心に研究開発が進められている。

第1-2-40図 に見るように,分野別政府支出研究費で比較すると,先進5か国のうち,エネルギーでは米国が最も多く,西ドイツ,日本,フランスの順であり,宇宙では米国,フランス,西ドイツ,日本の順になっており,イギリスはこの面ではいずれも比較的少ない。

第1‐2‐39図 研究投資の業種別構成比の国際比較

第1-2-40図 分野別政府支出研究費(1980年度)

また,公共的部門については,医療の領域で米国がずば抜けて多額の投資をしている他は,他の4か国はほぼ並び,地球・気象,環境保全,都市・農林計画,社会開発,運輸・通信等の領域でもほぼ各国似たような投資動向にある。

次世代の科学技術の基礎を築く一般科学研究については,西ドイツを始め各国とも比較的多くの額を投資している。しかし,基礎研究費総額のうち米国では,政府負担割合が約70%,西ドイツでは同80%,フランスでは同90%,イギリスでは同80%と推定され,これに対して我が国は同50%と推定され,他の先進諸国に比べ基礎研究に対する政府の取組みの弱さが目立つ。

このように各国とも基礎研究には,力を注いでおり,欧州主要3国は基礎研究の領域では自信を有し,むしろ,応用開発や政府系の研究成果の民間への移転に力を入れている。

他方,農林水産部門では米国,日本の投資額が多く,その半分以下でフランス,イギリス,西ドイツが続いている。

産業振興では,西ドイツが最も多く( 第1-2-40図 ),民間直接助成プロジェクト関係予算でも研究技術省の重点分野であるエネルギーに19.4億マルク(1982年以下同じ)と最も多くを投入し,以下交通運輸(2.5億マルク),宇宙(2.1億マルク),情報技術(1.9億マルク),天然資源(1.3億マルク)と続いているが,近時では,情報技術,バイオテクノロジー,新材料等の高度技術分野や,環境技術,労働条件の改善等の領域の研究に対する助成が比較的伸びている。

フランスは西ドイツに続いて多い。フランスでは,原子力,宇宙航空,通信のように政府主導分野は比較的産業の研究開発も良好であるが,一般民間部門の研究開発は弱く,政府機関における産業関連研究開発の奨励やその成果の移転促進を図るとともに,電子技術,ロボット,工作機械,省エネ,OA/FA等の面で産業に対する研究助成の充実を図っている。

三番目に多いのはイギリスである。イギリスでは貿易産業省が中心となり,日本の第5世代コンピュータ等の計画に類似するソフトウェア工学,知能機械,超集積回路等の情報技術振興計画(Alvey計画,総予算3億5,000万ポンド(約1,110億9,000万円))を推進する他,航空機,電子技術等リスクが高く,波及効果の大きい革新的な民間技術の育成援助に努めている。

日本及び米国の産業振興の資金は少ないが,米国の場合,国防による研究費や調達の中で民間技術発展の基礎となる研究がかなりの規模で進められており,この面では実質的には,日本が最も少ない投資水準となっている。

いずれにしても,以上5か国においては,各国共通して情報電子・新材料,バイオテクノロジーといった高度技術分野にかなりの力を入れ,しかも米国のVHSIC計画(高集積素子,ソフトウエア,人工知能,光素子等)等,日本の第5世代コンピュータ計画(人工知能,ソフトウエア等)等,イギリスのAlvey計画(高集積素子,人工知能,ソフトウエア等)等,互いに近接する計画が推進され,研究計画の面でも相互に刺激しあいながら発展していく傾向が強くなりつつあり,この意味で国内計画と国際的な計画の相互関係が強くなってきている。

先進諸国間の相互影響は単に研究開発計画のみならず,科学技術振興のための制度等の面でも拡大している。

民間の研究開発の推進条件を整備するため,米国では,増加試験研究費控除,試験研究用機械設備の償却期間短縮(ACRシステム),設備投資税額控除,大学への設備寄贈控除等が行われ,西ドイツで研究開発投資特別償却制度等が,フランスで科学研究費控除制度等が整備され,各国とも研究開発に対する税制上優遇措置を講じている。

また,産業界の研究開発力強化のために研究開発助成(イギリス,フランス,西ドイツ等),人件費助成(西ドイツ)等が行われ,国等の研究成果の移転に力を入れる(米国,西ドイツ,フランス等)等,きめ細かく対策がとられている。

また,近時の科学技術は産学間あるいは異分野の協力を要する局面が増大していることから,このための各種施策がとられている。

米国においては,政府研究機関から民間,地方自治体等への技術移転を推進するための体制,産学官の連携促進のための諸制度が整備されつつある。

特に産学官の連携については,従来から国立科学財団(NSF)からの一定期間の助成の下で大学と産業が共同して長期的な研究を行い,将来は自立運営を目指す産学共同研究センター制度,あるいはNSF,エネルギー省等の助成と民間の資金により連携を基本とした研究を助成する産学共同研究制度があるが,これまでに述べたような産学官の連携と異分野間の交流の必要性の高まりを受けて,1985年度より産業の研究者の参加を前提として,政府研究機関の研究者の参加も目指した工学分野の学際的研究を行う工学研究センター制度が発足している。また,産業間の共同研究の心理的抑制要因となっていた独占禁止法の緩和も実施されている。

一方,フランスにおいても,国立科学研究センター(CNRS)等の国公立部門の研究者の民間への出向,民間への技術移転の促進政策が見られる。

このほか,日本,西ドイツ,フランス等の産学官協力プロジェクトの推進等,各国とも産学官連携強化に向けて種々の政策展開を強化しており,各国の科学技術振興のための政策は類似性を高めてきている。


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