ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
第1部   研究開発の新展開と連携の時代
第2章  新しい技術を求めて動き出した研究開発活動
3.  新たな展開を見せる研究開発活動
(5)  地域における科学技術へのニーズの高揚


人が集まればそこに何らかの集積効果が発生し,自然の流れとして人々はその集積効果の拡大を求めてだんだんと集中の度を高め,その規模も拡大していく。

これに対して,国家政策としては各地域のバランスのある発展を求めて,現在定住圏構想を進めており,その一環として生産活動の面で工場の地方分散を図ってきたが,近時ではテクノポリスに見られるように,産学住が一体的に構成された都市造りが行われる等それぞれの地域経済の発展の促進を図ってきた。

これを研究開発活動の面で見ると人の集積効果は生産活動に比べてより大きく,製造品出荷高のシェア26%の南関東に研究者(国勢調査による区分)の48%,大学教員の36%が集中していることからもわかるように,人口,産業の集中度以上に中核となる地域への研究開発関係人材の集積が見られる( 第1-2-26表 )。

これを歴史的に見れば,まず欧米では,カリフォルニア州のパロアルト地区,ボストンのルート128地区に見られるように,大学等の研究機関又は研究機関群を中核に新技術の企業化を目指す企業群が集まり,自然発生的にいわゆるサイエンスパークが発達し,最近では多くの研究機関の集積効果を目指して,米国ノースカロライナ州のトライアングル・リサーチ・パーク(大学,政府,企業の研究機関70余りを集めて発足),フランスの南イル・ド・フランス研究学園都市(国公立の研究・教育機関,大規模企業等26を基に発足)等計画的に大規模な研究開発都市機能の整備が進められている。

我が国においても,すでに首都圏からの機能分散の一環として国の研究機関を中心とした筑波研究学園都市の建設が進められており,また,関西文化学術研究都市も構想から建設の段階へ移行しつつあるなど,我が国でもより大きな研究者の集積効果を目指した都市造りが行われ始めている。また,欧米のように明らかな形で新技術の開発を軸にしたものではないものの,大学や研究機関等の知的機能が集まりやすい地域にその時代その時代の先端的技術に立脚した企業が集積してきた。

すなわち,理工系学部をもつ大学や国立試験研究機関の多数が立地する東京とその周辺には,企業の研究開発機能も大きく集積しており,また,これより緩やかではあるが,京阪地区,東海地区,さらには仙台,浜松等かなり早期から理工系学部をもつ大学,研究機関が立地していた地方都市でも技術指向性の強い企業の集積が見られる。

他方,現在,電子・通信,精密機械等高度技術を吸収した産業群によって東京圏,近畿圏,東海地区の経済成長が高まり,これに対してその他の地区の成長は相対的に低下しつつある等近時の科学技術の経済社会への影響はより大きなものとなっており,各地域の活性化と発展にとって科学技術は重要な要素となりつつある。

特に,近時の技術的変化の中で大きな役割を果たしている情報科学技術は,本来は,大きなシステムをよりコンパクトなものにしたり,科学技術情報の地域格差をなくす等中小企業や各地域にとって有利に働くべきものであるが,現在のところ大都市,とりわけ首都圏への諸機能の集中を促進する結果に作用しており,今後各地域における適切な対応が必要となってきている。

このような状況を背景に,テクノポリス等先端的技術の地域への導入,定着化を目指した新しい活動が展開し始めている。この場合,これまでの地域振興はともすれば企業誘致に主眼が置かれがちであったが,このような方向のみでは人間的な豊かさを含めた地域の長期的な発展には限りがあることに留意されねばならない。各地域の発展にとって電子素子等の生産の導入自体はそれほど問題ではなく,むしろ,今後は生産や製品の高度化等により既存産業の高度化を図るにせよ,また,ライフサイエンス,新材料等全く新しい産業の立地を指向するにせよ,文化性を含めた地域特性を活かした科学技術の発展がより重要になっている。

また,地域の科学技術面での高度化を成功させるためには,特に次の点をどう確保するかが問題となっている。まず,第1の点はポテンシャルのある人材をどう確保するかである。すなわち,地域特性を活かした新しい技術を創出していくための研究者がある程度必要であることはもちろん,これを技術としてものにしていくための技術者(第二次産業に属する機械,電気,化学等の技術者や技能者はもちろん,サービス産業に区分されているシステムの企画,設計,コンピュータ操作等も含めた広義の技術者)の確保,あるいは居住環境も含めた人材の確保のための条件の整備が求められるようになっている。

また,第2の要件として,その地域において必要な知識,技術をどのくらい調達可能かという点が重要化してきている。すなわち,当該地域において,大学,研究機関等の高度の科学技術,知識にどのくらいアクセス可能か,また,近時の高度技術を支えるための溶接工,電気機械組立工,情報処理技術者等の技能者をどの程度調達可能か,という問に対する答が求められている。

これらについては,地域に専門機関や関連企業があることが望ましいが,人材量等から各地域では必ずしもすべてをまかなうことはできず,例えば,大阪市立工業試験所が岡山県の企業のバイオ技術の指導をしたように,自治体の単位を超えた協力のメカニズムの整備が必要となってきている。

第3の問題として創造的風土条件の問題がある。例えば浜松地域の製材→木工具→楽器や絹織物織機→電気機械という地域全体としての技術展開に見られるように,その地域自体に歴史・文化的なものを含めた創造的な土壌があることが重要な意味を持つようになっている。この場合,所得のための地域政策のみでは,その時点では効果をあげることはできても長期的には必ずしも十分でなく,やはりこれからは地域の人々が文化的,精神的にも豊かに生きるための地域政策が重要化してきていると考えられ,科学技術の面でも歴史的・文化的な厚みのある科学技術の知的ストックの蓄積とそれを用いた地域技術の形成が各地域にとっての重要課題となってきている。

このように,地域においては,科学技術,特に先端的科学技術の導入と定着化が極めて重要であり,これを用いて地域の経済社会の発展を図っていくため,特に以上のような地域における科学技術振興の条件整備が不可欠である。これらのすべてを各地域のみで十分に充足していくことは難しく,現在,各地域からも基礎の強化,異分野進出,地域技術高度化に向けた産学官,異分野あるいは地域の間の連携がより強く求められるようになってきており,科学技術及びその進め方に対する地域の新たなニーズが高まってきている。

第1-2-26表 科学技術関係人材の地域分布


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ