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第1部   研究開発の新展開と連携の時代
第2章  新しい技術を求めて動き出した研究開発活動
3.  新たな展開を見せる研究開発活動
(3)  異分野への進出


一方,成熟化した技術を多くかかえている業種の企業を始めとして,今後の生き残りと事業規模の維持拡大を目指して川上,川下方向を含む異分野へ進出していく動きも活発化してきている( 第1-2-17図 )。異業種への進出は,これまでにも鉱山,繊維等いくつもの分野でその動きが見られたが,これらは主力製品分野の売上げが低下する都度,その状態から脱皮するために止むを得ず転進したものか,または,鉱山機械から機械または電機への進出の例に見られるように新たな需要発生領域においてそれに近い技術的ポテンシャルのあるところが進出したというどちらかと言えば,個別的進出が中心であったのに対し,近時の動きは経済の低成長という要因はあるものの,ハイテクブームに見られるようにむしろ積極的に異分野を目指し,そこに新たな活動領域の創造を求め,またそれが多くの業種にわたって同時発生的に進み始めているところに大きな特徴が見られる。

第1-2-17図(1)全研究費に占める電気機械に関する研究費の割合の推移(資本金1億円以上の会社等)

第1-2-17図(2)全研究費に占める医薬品に関する研究費の割合の推移(資本金1億円以上の会社等)

この場合,企業は,それまで築いてきた人材と技術の蓄積を基礎に新たな発展を図るのが通例であり, 第1-2-18図 に見るように民間動向調査によっても,従たる事業分野として異業種への進出を図ろうというものが75.0%にし,半分ずつ以上に異業種分野へ進出しようとするものは7.8%にすぎない(なお,異分野進出をまったく考えていないものは17.0%)。

このため,新規参入が増えるそれぞれの領域において,企業は従来以上に厳しい競争の下に置かれ,大量生産技術等物質的充足に向けて大規模化,安定化を目指した技術体系から多品種同時生産技術や個性化した機能技術等を軸にしれものに移行し,さらには「ハイタッチ」等人間の心にも感応しうるような技術体系への進展を目指そうとする技術の流れと相まって,今や企業技術は個性化と競争の時代に入り始めている。

第1-2-18図 今後の異業種分野への取組み

また,異分野進出の動きを現在企業の売上げの中心になっている製品との関係について見るため,企業の全売上高に占める単一製品のシェアにより,主力製品領域(単一製品のシェアが10%以上のもの),従たる製品領域(同1%以上10%未満)及び低シェア製品領域(同1%未満)に分けることとする。主力製品領域では,全売上高の90%以上を占めているのに対し,研究費におけるシェアは79.8%と低く,5年前の82.3%からやや減少している。これに対して,従たる製品領域では,全売上高の8.1%を占めるのに対し,研究費のシェアは,10.7%と高く,5年前の9.4%からやや増加している。さらに,低シェア領域では,全売上高に対するシェアが1%であるのに対し,研究費におけるシェアは8.2%と高く,5年前の5.7%から急増している。

第1-2-19図 売上高シェア別製品領域の研究費の動き

以上は,全業種を通じての動きであるが,特に技術開発に重点を置いた企業では,既存主力製品部門70%,新規部門30%の売上高比に対し,逆に研究開発投資は既存主力製品部門30%,新規部門70%というように,既存主力製品部門で収入の安定を図りつつ,次の時代に向けて新規部門開拓へ主力を傾注するものが増えている。

このような動きの中で,企業は積極的に新領域に乗り出し,人材確保の面でも多様化が進みつつある( 第1-2-20図 )。

第1-2-20図 専門別研究者の分散度

研究者の専門別で見た場合,例えば建設業では当該業種固有の土木・建築系の研究者の割合が10年前に比べ増加し,集中化傾向を示すのに対し,総合化学工業では,化学系の研究者の比率が多いのは当然として,薬学系,農学系の研究者が10年前に比べ増え,分散化傾向が見られる。研究者の分散度は,ほとんどの業種で0.5を超えており,ほぼ全業種的に異分野進出が続いている。

ここで新しい領域への進出状況を光関係の技術を例に見てみる。

まず,光通信技術の進展に伴って,電線メーカーが光ファイバー,スイッチ,コネクター分岐器等の光デバイス,光伝送システム及び機器等への進出を図っているが,これはその業界の技術の新しい展開として当然とも考えられる。これに対して,総合電機メーカーでも光デバイス,光送受信機,光伝送システム等の光通信の領域へ進出する企業も多い。また,化学工業でプラスチックファイバーへ,ガラス工業でガラスファイバーへ,精密機械(カメラ)工業でガラスファイバー,光デバイスへというようにそれぞれの保有する技術を媒介にしてこの領域への進出を図っている企業がかなり見られる。

一方,通信以外でも総合電気メーカーから光ディスク,レーザープリンタ,レーザー加工機,光計測機器へ進出する企業が多いのをはじめ,化学工業からアクリル等を用いて光磁気ディスクヘ,計測技術を用いて光測定機器へ進出する企業が見られ,また,石油工業からプラスチックレンズ,光学グレードヘ,機械工業からレーザー測定,光センサー,レーザー加工機等へ,精密機械工業からレーザー測定,光センサー レーザー加工機等へ,精密機械工業からレーザー測定,光センサー レーザー用ガラス等へというようにいくつもの業種からの進出が進んでいる。

このように新しい技術領域に対し,多くの業種からの進出が見られるが,これらの大部分が,1)食品から医薬へ,医薬から食品へ,総合化学及び通信・電子・電気計測器から計測器へ,自動車部品から電子製品へというように自己の保有する技術(この場合,生化学,計測等の技術)を媒介にした他領域への進出,2)電気通信,自動車,精密機械からのセラミックスへの進出のように自己の手がけてきた領域の素原料方向への,いわゆる川上方向への進出,3)鉄鋼から金属加工製品へ,電気通信から医用機械へ,繊維から医療機械へというように自己の手がけてきた領域の製品方向,いわゆる川下方向への進出,4)鉄鋼における複合材料,メカトロニクス等自己の技術にまったく新しい領域の技術を融合させる方向での展開の4つのパターンに集約され,材料メーカーが通信に出る等まったく新しい領域の技術により新しい領域に進出する例も散見されるものの,このタイプの展開はまだ少ない。

また,これらの動きの中で新たな領域として,特にエレクトロニクス,ライフサイエンス,新材料の領域へ進出を図ろうとしている企業が比較的多いことが注目される。

第1-2-21表 代表的三分野の売上高,研究費及び研究者数のシェア


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