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第1部   研究開発の新展開と連携の時代
第1章  向上しつつある研究開発能力
3  量的には拡大しつつある研究開発資源
(3)  拡大しつつある科学技術の知的ストック


研究開発によって得られた知識経験(以下ここでは科学技術の知的ストックという意味での「知的ストック」という。)は,現在の経済社会における諸活動において大きな効用を発揮するとともに,将来の研究開発に向けてその活動容量を左右し,また,その全体的高まりの上で,新しいものが出るという意味で基盤的研究資源として極めて重要である。

また,この場合,研究費の年々の変化が研究開発活動の活発度の変化を示すのに対して,将来に向けての活動容量を見ていくためには,研究開発活動の結果を科学技術知識の総体としての価値である科学技術の知的ストックを把えていくことが必要である。

しかし,研究開発の成果は,特許,学術論文のようにある程度数量的に認識できるものもあるが,製品,製造工程の改良・改善,ノウハウ等数量的に認識できないものが多く,これを定量的に把えることは難しい。

しかし,これらの成果全体としては,研究開発投資と科学技術水準との連関性が極めて高いことから,研究投資は一定の期間(以下「タイムラグ」という。)後には,投資と見合った有形,無形の何等かの成果を産出すると仮定し,また,それらの成果は新しい技術や知識の出現,あるいはその技術や知識の適用場面の喪失等によって一定の期間で陳腐化していくものと仮定して,これらの累積で技術,知識の量を計る「科学技術の知的ストック」を一つの指標として考えていくことも一つの方法である。

このようにして計算した知的ストックは, 第1-1-25図 に見るようにほぼ全業種にわたって着実に増大を続け,特にここ数年伸びが大きくなっている。

これを業種別に見た場合,技術のライフサイクルの比較的長い総合化学,鉄鋼,機械等の業種の知的ストックのシェアが研究費のシェアより高くなる等各業種ごとの過去の投資の累積,タイムラグの長さ,成果たる技術の陳腐化等が異なり,単なる研究投資の変化とは異なるものになるが,総額では自動車,通信・電子・電気計測器,機械,総合化学,電気機械器具の順に高く過去5年間の伸び率では精密機械,通信・電子・電気計測器,自動車,窯業の順に高く,総合化学等は極めて低くなっている。

このように知的ストックはマンパワーの場合とほぼ類似した傾向が見られ,成熟化の進んだ分野においては知的ストックはあるもののその伸び率は低く,どちらかといえば,これまでの知的ストックを使いながらの展開が多いと見られるのに対して,いわゆる高度技術への依存度の高い業種例えば通信・電子・電気計測器,窯業,医薬品等の分野の知的ストックの伸び率が大きく,これらの業種ではストック自体が成長途上にあるといえよう。

また,産業全体の知的ストックについて日米の比較をした場合,米国の産業における研究費は,1960年代後半をピークとし,その後アボロ計画の影響等もあって約10年間横ばい傾向であったのに対し,我が国の産業の研究費はその間比較的急ピッチで伸びてきたため,1980年度には日本の知的ストックは米国の62.0兆円の19%にあたる11.7兆円にすぎなかったのが,1985年度には米国の55.6兆円の28%にあたる15.5兆円と日米の格差は縮少傾向にある( 第1-1-26図 )。しかしながら,絶対額で見れば,まだ米国に比べて知的ストックの面で大幅な差があり,前に見たような基礎研究の成果,研究開発ボテンシャルにおいても同等とは言えず,量的な拡大とともに質的充実が必要である。

第1-1-25図 科学技術の知的ストックの推移

第1-1-26図 科学技術の知的ストックの日米比較


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