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第1部   研究開発の新展開と連携の時代
第1章  向上しつつある研究開発能力
2  活発化する研究開発投資
(3)  業種・規模等で異なる研究開発投資の動向



1) 対売上高比の上昇傾向

かっての人馬による交通が鉄道交通に,さらには自動車交通に,あるいは木炭から石炭に,石炭から石油にというように新技術の導入は産業や経済の構造を変え,それらに立脚する都市の構造を変化させていく。

このような流れの中で各産業は新しい技術の時代にも安定的な活動を確保できるよう研究開発努力を行っているが,各産業における研究開発活動の動向は,明日への展開の方向と可能性を示すものとして重要である。

そこで,まず研究費の対売上高比について見ることにする。昭和58年度の対売上高比について,4%以上の業種をAグループ,1.8%以上4%未満の業種をBグループ,1.8%未満の業種をCグループとし,昭和50年度からの変化を図示すると 第1-1-12図 のようになる。これによると,Aグループは,通信・電子・電気計測器,医薬品,電気機械器具,精密機械といったいわゆる高度技術製品のウェイトの高い業種から構成され,Bグループは総合化学,窯業のように,比較的付加価値要素の多い素材型業種及び機械,自動車等の加工組立型業種が中心となり,Cグループは,鉄鋼等の基礎素材型業種,繊維,食品等の生活産業型業種や運輸通信等サービス型業種が中心となっている。

第1-1-12図 研究費の対売上高比分析

このように対売上高比は,一般的には新しい技術への依存度の高い業種が高く,既成技術への依存度の高い業種すなわち成熟技術部門ほど低くなっている。

また,対売上高比の内部構成で見た場合,研究者1人当たりの研究費で見ると,運輸・通信・公益,鉄鋼,自動車等装置依存度の高い業種が高く,対売上高比との連関性は薄いが,従業員1万人当たりの研究者数ではAグループは500人以上,Bグループは300〜600人,Cグループは200人以下であり,研究費の対売上高比は研究者の全従業者に対する割合の高さと連関性が強くなっている。

これは,我が国の企業の場合,新技術への依存度が高い業種程人に依存して研究開発を進めるという構造を示している。

他方,グループと研究費の増減との関係で見ると,10年毎の研究費はほぼ全業種にわたって物価上昇率に比べても,はるかに高い水準で増加しているが,Aグループの業種では投資額の順位,全業種に占めるシェアとも他の業種よりも大きく上昇してきている( 第1-1-13表 )。

また,Bグループのうち,高度技術依存度の高くなってきた窯業は,著しく伸びてきており,機械などの加工組立型業種は他の業種に比べ,わずかではあるが伸びている。総合化学は昭和38年度には通信・電子・電気計測器と並んでトップグループを構成していたが,今では順位,シェアとも大きく下がっている。

Cグループでは,サービス型業種ではほぼ平均的な伸びを示しているものの,素材型業種ではその多くのものが平均より下の伸び率にとどまっている。

さらに,研究費について性格別に見た場合, 第1-1-14図 に示すように,金属製品,機械,電気機械器具,輸送用機械,精密機械等の加工組立技術を中心とする業種においては基礎研究のウェイトが低く,それぞれの技術の磨き上げに大きな力をさいているのに対し,医薬品,食品,総合化学,繊維等化学系,鉄鋼,窯業等材料系の技術を中心とする業種では基礎研究のウェイトが相対的に高く,新たな展開のためのよりどころのひとつを基礎方向への研究の深化に求めようとしていることがうかがえる。

第1-1-13表業種別の研究費順位

第1-1-14図 業種別に見た基礎研究費比率

このような各業種における動向を背景に,企業の研究開発への意欲は大きく,これまで研究費の対売上高比は年々上昇してきている。昭和60年度に科学技術庁で実施した民間動向調査によると,研究費の対売上高比として可能な上限値は,Aグループに属する医薬品は,現在の6.59%に対し,8%以上とする企業が過半数を占め,現在4.85%である通信・電子・電気計測器等でも8%以上とするものがかなりある。これに対し,Cグループの建設,食品,鉄鋼等では2%未満のままのものが過半数を占めている。

研究費の対売上高比はほぼ全業種にわたって将来的にはさらに上っていくと考えられている。

第1-1-15図 研究費の対売上高比について現在各企業で可能と考えられる上限値の分布

これを現在値と将来値との幅で見ると,医薬品,その他の化学,石油・石炭製品等の素材型業種や通信・電子・電気計測器,精密機械等のAグループ加工組立型業種ではその幅が大きいことから,その上昇余力が大きいと見られる。一方,油脂・塗料,運輸・通信・公益等中心となる技術が成熟している業種ではその上昇余力が小さいと見られる( 第1-1-16図 )。

このように業種の態様によって研究開発への取組み方が異なっているが,ここで業種態様別に動向を整理すれば,マイクロプロセッサー等の情報処理関連技術に支えられ,小型化,高機能化等が進んでいる電子機器,より精密化,高機能化等が進んでいる精密機械等Aグループに属する加工組立型業種では,現在,新しい技術が次々と登場し,大きく成長を遂げつつあるところであり,それぞれの領域の技術を中心に基礎から応用にわたり,積極的な研究開発が展開されているところである。

次に,NC化等で成功を収めた工作機械,メカトロニクス化からFA化と進みつつある産業機械,新エンジン,カーエレクトロニクス化等による製品の高度化を進めている自動車等Bグループに属する加工組立型業種では,現在,情報処理技術をベースに生産の面でも技術の面でもかなりの成長を遂げつつある。これらの業種では,中心となる技術はある程度成熟化しており,今後一層の展開のためにCグループと同様,素材を始めより基礎的なところからの技術開発へ向けて胎動が始まっている。

第1-1-16図 研究費の対売上高比の現在値,現在の上限値及び将来値

これに対し,新技術によるニューフロンティアの余地が大きく,現在研究開発努力の急進中のAグループに属する医薬品を除き,繊維,総合化学,鉄鋼,窯業等の素材型業種では,全体的には,それぞれの業種において中心となる技術はある程度成熟化し,鉄鋼における複合材料やエンジニアリングヘの進出,繊維における加工技術の精緻化等新しい技術領域への進出や基礎の深化に根ざした技術の高度化に向けて研究開発が進められている。

なお,まだ業種別統計は作られていないが,以上の他に原子力,航空宇宙,海洋,ファインセラミックス,バイオテクノロジー等次世代の産業技術部門についても多くの業種にわたって着実に研究開発が伸びているものと考えられる。

さらに,バイオミメティクス,放射光利用技術など将来大きな発展が期待される分野への取組みも始まっている。


2) 組織規模によって異なる研究開発活動

研究開発活動は,業種によって動向が異なるとともに規模によっても動向が異なる。

まず,全業種を通じて見ても総務庁統計対象企業18,000社のうち,研究投資における上位5社で全研究費の16.9%を占め,以下上位10社で25.9%,上位20社で34.7%と大きな企業に研究費が集中している。これを売上高の集中度と比較した場合, 第1-1-18表 に見るように研究人材の集中度はそれ以上に高く,研究費の集中度はさらに高く,諸技術の開発供給に当たっては,全体的には大企業がリーダーシップをとっていると考えられる。

また,業種別に見た場合,売上高そのもので上位5社が過半数を占めるものは,鉱業,石油・石炭製品,鉄鋼,電気機械器具,自動車等にすぎない。

研究費においては上位5社が過半数を占めるものは,上記業種の他に出版・印刷,ゴム製品,非鉄金属,通信・電子・電気計測器が加わる。このうち,鉱業,ゴム製品,鉄鋼,電気機械器具,自動車は上位5社で70%を超え,その他の輸送用機械では実に90%を超える等規模の大きいものに集中する傾向がある。

これに対して,金属製品では,上位20社でも50%に達せず,建設,食品,パルプ・紙,機械は上位20社合計で初めて50%を超えるなど分散の傾向が強い。

第1-1-17表 産業における売上高,研究者数及び研究費の集中度

第1-1-18表 資本金規模別の売上高,研究費等指標

これを資本金を基にした規模別の活動傾向について見ると,研究費の対売上高比,研究費の伸び,従業者1万人当たりの研究者数,基礎研究費比率のいずれを見ても資本金規模の大きい企業の方が高く,研究開発の面では規模の大きな企業がより大きな役割を果たしていることを裏付けている( 第1-1-18表 )。

一方,研究費の対売上高比は資本金500万円〜1,000万円の階層にもう1つのピークが見られ,その値も資本金100億円以上の大企業並となっていることは注目に値しよう ( 第1-1-18表 参照)。この階層には研究費の対売上高比が必らずしも高くない一般の中小企業が含まれていることを考えれば,独自の優れた技術,ノウハウを機軸に活動を展開している中小企業,いわゆるベンチャービジネスの研究開発活動の活発さがうかがえる。

ベンチャービジネスの研究費の対売上高比について大企業と比較して見ると,4%を境にそのシェアは逆転し,4%以上の企業のシェアはベンチャービジネスの方が高く,その差も研究費の対売上高比が高くなる程増大する。さらにベンチャービジネスでは,大企業では見られないような研究費の対売上高比が20%以上の企業も存在する( 第1-1-19図 )。

また,業種について見ても,今後の成長が期待される電気機械,精密機械等のエレクトロニクス,新素材,あるいは,我が国が相対的に弱いとされるコンピュータソフトウェア関連の業種が多い( 第1-1-20図 )。

さらに,これらのベンチャービジネスは,我が国の企業の対売上高利益率が全製造業平均で3〜4%と国際的に見ても低水準である中で,相対的に高い利益率をあげており,その技術力を背景に高い競争力を有している。

これらの数字は,ベンチャービジネスが一般に独自の優れた技術をてことして,高い成長力を有する企業としてとらえられていることから当然ともいえるが,これらのベンチャービジネスの中には研究費の対売上高比が35%,研究者の対従業員比が20%といった極めて研究開発集約度の高い企業も含まれており,今後の我が国の技術力向上への寄与が期待される。

第1-1-19図 ベンチャービジネスの研究費の対売上高比

第1-1-20図 ベンチャービジネスの業種分布(全産業)

勿論,大企業のように大規模の研究開発は困難であり,経営者は大企業,大学等からのスピン・オフが多いことからわかるように,資金面,人材面での制約はあるものの,上記のような分野は今後の成長が期待され,かつ,小回りのきく独自の創意工夫あるいは少量特化型高度技術製品の研究開発によっても新技術と新規の市場を開拓し得る分野であり,ベンチャービジネスを主体とした中小企業は我が国の技術力向上に大きな潜在的可能性を秘めていると考えられる。

また,大規模の企業においても,ベンチャービジネス型の研究開発の効果を取り入れるため,社内ベンチャーへの取組みが始まっている。


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