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第1部   研究開発の新展開と連携の時代
第1章  向上しつつある研究開発能力
1  我が国の科学技術の水準と研究開発のポテンシャル


我が国は,教育や技能の伝統的な水準の高さを基礎にこの一世紀余りの期間に西欧の文明を効果的に取り入れて目覚しい発展を遂げたが,今や欧米先進諸国とともに人類の繁栄に向かって安定し,充実した未来を創造していくために,先進的な努力が必要とされるようになってきた。

科学技術の面からこれを見れば,昭和30年代から昭和40年代にかけての欧米最先端技術の導入とその消化,理工系人材の大幅拡充と研究開発活動の強化等によって科学技術の水準は大きく向上し,昭和40年代中期以降の環境公害防止技術,昭和50年代前半の省資源・省エネルギー技術,昭和50年代中期以降のメカトロニクスを含む電子技術等に見られるように独自の展開力をも有するようになってきた。

ここで我が国の「過去の科学技術活動の蓄積又は成果として現在到達している水準」としての科学技術水準と,「新しく研究開発を要する問題に遭遇した場合,それまでに蓄積した科学技術を活用しながら直面するであろう様々な障害を乗り越えて,自力でどの程度新しい問題を解決することができるかという,潜在的な自主開発能力の水準」である研究開発のポテンシャルについて欧米との比較をしてみれば 第1-1-1図 (日米比較)及び 第1-1-2図 (日欧比較)に見るようにかなりの項目について欧米と同等のレベルに達し,全体としては米国と西欧の中間点に位置するようになってきている。

これを内容的に見れば,我が国はファクシミリ,ビデオ,産業用ロボット等民間ニーズが強く,ある程度の量的需要のある分野の技術水準が高く,また,発酵技術等我が国がこれまで築いてきた周辺技術の高さに支えられた分野の水準が高くなっている。

また,我が国の技術の発展においてはユーザーの要求水準が大きなウェイトと役割を果たしており,単に民間のユーザーのニーズのみならず,都市防災,地震予知,軽水炉安全性等国民の要求水準の高い領域の技術が相対的に高い水準にある。

これに対し,1)人工衛星,ロケット,航空機,深海調査船等の大規模の技術システムを必要とする分野,2)CAD/CAM,データベース,資源探査等基本的なソフトウェアの構築を必要とする分野,3)資源開連技術等民間事業者による需要が相対的に弱い分野や4)化学物質の安全性評価等リードタイムが長い,あるいは企業特色の出ない基盤的な分野については相対的に水準がやや低くなっている。

第1-1-1図 科学技術水準と研究開発ポテンシャルの日米比較

第1-1-2図 科学技術水準と研究開発ポテンシャルの日欧比較

これを全体として見れば,我が国の研究開発は,その四分の三を民間で負担していることからもわかるように民間を中心として展開されており,1)民間のインセンティブが強く,かつ,技術のユーザーの要求水準の高い領域の技術が強い反面,2)民間活動を中心にした場合の限界でもある(a)大規模あるいは先導的基盤的技術等のリスクの極めて大きい領域及び(b)基本的なソフトウェア,遺伝子資源の管理等長期にわたる地道な努力と経験の積み重ねを必要として,経済的効率性の低い領域が相対的に弱く,国全体としてこれらの弱さを十分に補いきれていないという構造になっている。

このように,我が国の科学技術水準と研究開発ポテンシャルは,民間企業の動向に大きな影響を受けており,今後の科学技術振興の在り方を考えるに当たっては,まず,民間の研究開発動向を把握し,その上で国全体としての研究開発の方向を考えていく必要がある。


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