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第3部   政府の施策
第2章  政府機関などにおける研究活動の推進
6.  多分野の協力による研究開発の推進
(4)  航空技術研究開発の推進


航空技術は知識集約性,技術先端性に優れているため,単に航空輸送の発展を導くのみならず,先導的・基盤的科学技術としての他の分野への波及効果により,我が国が今後科学技術を基礎として発展するうえで不可欠な自主技術基盤を形成するものである。


(1) 我が国の航空技術研究開発の動向

我が国では,これまで民間輸送機YS-11を始めいくつかの航空機を自主開発することにより技術を蓄積し,最近では,国際共同開発計画によりボーイング767旅客機の設計及び製作に参画するなど,航空技術の水準において国際的な舞台で活躍するまでに成長してきている。民間航空機の開発においては,国際共同開発による方式が今後はますます世界の主流を占める傾向にあり,現在,我が国では民間航空機YXXの国際共同開発が計画され,また民間航空機用ジェットエンジンV2500について日本,イギリス,米国,西ドイツ,イタリアの5か国による国際共同開発が進められている。

今後とも予想されるこのような国際共同開発の場において,我が国が対等の立場で開発,製造等に一層積極的に参画して行くためには,国際的に競争力のある自主技術の確立を早期に図る必要がある。このため,従来から航空・電子等技術審議会及びその前身である航空技術審議会の建議や答申に沿って,航空技術研究開発の推進を図るための施策が講じられてきたところであり,その一環として,科学技術庁航空宇宙技術研究所においては,我が国の将来の航空機開発に必要となる技術の確立をめざした研究開発が進められている。なかでも,低騒音STOL実験機飛鳥による短距離離着陸技術,低騒音技術等の各種新技術の実証をめざしたファンジェットSTOL機の研究開発は,最重点課題として強力に推進されている。このほか,航空宇宙技術研究所では,ジェット輸送機やジェットエンジンに関し,性能向上のための研究,安全性向上のための研究及び航空公害を防止するための研究を実施するとともに,各種風胴等の大型試験研究設備を関係機関の共用に供し,我が国の航空技術の発展を図るうえで主導的な役割を果している。

また,運輸省電子航法研究所においては,航法・管制に関する技術について,航空交通の安全性を向上させるための研究等を実施しており,これらの研究は今後の航空輸送の発展を図るうえで極めて重要なものとして期待されている。

なお,これらのほか,社団法人日本航空宇宙工業会の革新航空機技術開発センターにおいては,革新航空機技術開発に関する調査研究が進められている。


(2) ファンジェットSTOL機の研究開発

ファンジェットSTOL機は,将来の航空輸送において活躍が期待される新型航空機の一つであり,在来のジェット輸送機と比べて短距離離着陸(STOL=Short Take-Off and Landing)性に優れ,また地上に及ぼす騒音も格段に少ないという特徴を有しているため,国土が狭隘でかつ人口密度が高いという我が国の国情に適したものである。

航空技術審議会では,昭和50年12月,このようなファンジェットSTOL機の開発に必要となる技術については,我が国が積極的に研究開発を行うべきであるという考え方の下に,建議「我が国に適したSTOL輸送システムの具体的推進方策について」を行い,実験機の試作と飛行実験を中核としたSTOL技術の総合的研究開発の推進を提唱した。

この建議を受けて,科学技術庁航空宇宙技術研究所では,昭和52年度から「ファンジェットSTOL機の研究開発」を進めており,昭和54年度からは,この一環として低騒音STOL実験機“飛鳥”の製作を行っている。

“飛鳥”は,国産ジェット輸送機C-1を原型機とし所要の設計変更を施したものであり,これに通商産業省工業技術院が航空宇宙技術研究所の支援のもとに開発したFJR710エンジンを搭載した我が国初の純国産大型ジェット実験機である。“飛鳥”の主要諸元は,全長29.0メートル,全幅30.6メートル,全備重量38.7トンであり,旅客機として使えば乗客90人乗りに相当し,必要滑走路長は800メートル,騒音被害面積は現用ジェット機の5分の1〜10分の1に軽減可能という画期的な性能を有している。“飛鳥”には,これらのSTOL技術及び低騒音技術はもとより,コンピュータ飛行制御技術,電気式操縦システム技術,複合材技術等の最先端の新技術が数多く取り入れられており,これらの各種技術についての研究開発が“飛鳥”の製作と並行して進められている。

“飛鳥”は現在,全機組立てをほぼ完了しており,昭和60年度には初飛行を行い,その後,STOL技術や低騒音技術を始めとする各種新技術の実証を目指した飛行実験を安全性の確保に十分配慮しつつ実施することとしている。この研究開発を通じてファンジェットSTOL機が開発される際に必要となる技術基盤が確立されるとともに,我が国の航空技術水準の飛躍的向上が図られるものと期待されている。


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