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第1部   21世紀の新たな技術の創出を目指して
  結び

基礎的研究については,科学技術全体の発展の基礎となるものとして,以前からその着実な進展が図られてきた。近年,21世紀を目指した経済社会の安定した発展への要請と我が国の国際的地位の向上に伴う国際社会や経済に対する我が国の積極的な貢献への期待に対応して,科学技術の振興がこれまで以上に求められており,自らの手で新しい技術を継続的に創出する能力を強化していくことが重要になってきている。このため,新しい技術の創出の源泉である基礎的研究の重要性がますます増大してきている。

また,現在の産業技術において,我が国の民間企業は,欧米諸国と同等あるいはそれ以上の水準にある分野も多くなっているが,自ら新しい技術を創っていく技術開発力については必ずしも同等に達したとは言えず,このため,我が国の民間企業においても基礎的研究の重視の認識が高まっている。

しかしながら,我が国の基礎的研究の現状を以上分析したところに基づき概観するならば,基礎的研究に対する取組みは必ずしも十分とは言い難い。

現在の基礎的研究の先端分野について,限られた分野ではあるが,論文数から見た場合,我が国は国際的に十分高い貢献をしているとは言えない。

研究投資の面から見ても,我が国全体の基礎研究費は,米国のほぼ10分の3に達し,欧州主要3国を越えているとはいえ,基礎研究費比率は,欧州主要3国よりも低く,かつ,大学と政府研究機関において漸減傾向にある。また,全基礎研究費に占める政府負担の比率は,欧米主要国に比べ低く,その比率は低下傾向にある。

近年,基礎的研究の重要性を認識し,研究投資の面で積極性が感じられる民間企業においても,アンケート調査によれば,今後の基礎的研究の大幅な強化は期待し難く,我が国の基礎的研究の今後の充実に対して,大きな役割を求めることは困難と考えられる。これに対し,研究費と研究者数において圧倒的な能力を持つ米国は基礎的研究重視の施策を打ち出しており,欧州主要3国は基礎的研究重視の伝統を持っている。

一般に,基礎的研究は,長期にわたる息の長い研究が多く,研究の当初から成果の見通しを付けることは難しい。また,その成果は特定の技術だけでなく,広く他の技術の創出にも役立つものである。この様な状況を踏まえ,政府においても,基礎的研究を国家的ニーズとしてとらえその積極的な推進が望まれる。

その際,以上各章の分析を通して出てきた以下の諸点に留意していくことが重要である。

1) 基礎的研究はその性質上成果の見通しを当初から得ることは難しいものであり,優れた着眼,大胆かつ緻密な論理展開,創意あふれる研究方法というような独創的研究態度が求められるため,優れた人材によるところが大きい。
2) このような優れた着眼と創意あふれる研究方法への刺激を研究者に与えるとともに,分野間の境界領域における新分野を開拓することに役立つ異分野間の交流・協力が重要である。
3) 基礎的研究は新しい技術の創出の源泉であるとともに,技術開発過程で遭遇する未知の事象は,基礎的研究のテーマを与え,これを促進させる役割を果たしている。したがって,技術開発を目的とする産業界,基礎的研究を主とする大学,及び国立試験研究機関を始めとする政府研究機関との間のいわゆる産・学・官の交流・協力は,技術開発のみを目的とする者にとっても,基礎的研究のみを目的とする者にとっても,研究実施上有益であり,基礎的研究から技術開発にわたる国全体の研究開発活動をより一層活発化し,新技術の効率的,効果的創出に役立つものと考えられる。
4) 近年,基礎的研究においては,新材料,情報・電子技術,ライフサイエンス分野に見られるように,その推進に当たって,高精度,高性能な実験装置が不可欠になっている。また,以上の各章では直接触れなかったが,科学技術情報の流通促進や研究用の資材・生物の開発供給が円滑に進められることも基礎的研究の効率的な推進上重要となっている。

我が国が,以上の諸点に留意し,基礎的研究の効果的な推進を図っていくに当たっては,大学,及び政府研究機関特にその基礎的研究の中核である国立試験研究機関における基礎的研究のための人的資源を含めた投資の充実,未知の課題への挑戦的意欲に富む創造性豊かな人材の育成,異分野間や産・学・官における交流・協力の促進,高精度,高性能な測定装置など研究基盤の強化などの課題が挙げられ,今後,このような課題を解決していくことが重要であろう。

基礎的研究は,21世紀を担う我々の子供達への遺産であるとの認識の下に,長期的視点に立って,その推進を図っていくことが必要である。


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