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第1部   21世紀の新たな技術の創出を目指して
第5章  欧米主要国の基礎的研究の動向
2.  米国における基礎的研究の動向
(3)  基礎的研究の強化とレーガン大統領の政策


1960年代後半から70年代中頃にかけては,公害問題など科学技術に対する不信感が高まりを見せ,冷戦の終結に伴う国際的緊張の緩和,予算の緊縮化による政府の他の資金需要との競合等もあり,政府の科学技術に対する取組みも停滞期を迎えた。

政府の基礎的研究投資は,1968年以降実質的に減少し続け,68年の水準を回復したのは78年になってからである( 第1-5-8図 )。大統領の科学政策に関する作業部会は,1969年,こうした状況を普遍的危機と位置付けている。

基礎的研究に対する投資は,1970年代後半から再び上昇に転じた。政府の研究開発予算のうち,国防省関係を除いた部分に占める基礎研究費の割合は,1977年以降増加しており,レーガン大統領が本年2月議会に提出した1985会計年度予算教書では,約4割を占めている。このような政府の研究開発における基礎的研究の重視は,近年の傾向であり,政府の役割の見直しとともに強化される傾向にある。

第1-5-8図 米国における基礎研究費負担額の推移

政府の行うべき研究開発は,国防,各種規制業務等政府が業務を行う上で必要な政府の直接的ニーズと,農業,医療,エネルギー等国の経済,福祉の向上などの国家的ニーズに対するものとされている。そのうち後者については2度の石油危機を背景に短期的な代替エネルギー開発が特定の国家的ニーズとされた時期もあったが,現在では民間には十分な投資が期待できない分野へと役割がより明確化されつつある。基礎的研究は,後者に属するものとして開発研究への投資が減少する中で,政府によりその強化が図られている。

産業界においても,基礎研究費は1970年代後半から増加に転じており,75年から81年までは,研究開発費全体の伸びを上回っている。産業界による大学に対する助成も増加傾向にある。産業界における基礎的研究強化の理由としては,経営の多角化,新産業の誕生,競争,生産性の向上等への対処が挙げられている。勿論,内外での競争の激化は,応用・開発研究の強化を促す面の方が強いが,近年の電子機器,コンピュータ,半導体等の進歩に見られるように急速に変化しつつある先端産業においては,企業の活力を維持していくために基礎的研究は不可欠とされている。

基礎的研究を実施している大企業を対象としたNSFの調査によれば,バイオテクノロジーのように企業の研究所では手に入らない新しい研究方法が発展しつつあること及び大学における研究自体が,産業界の大きな関心のある領域にシフトしてきていることなどを理由として,85%の企業が1981年に大学の基礎研究を助成し,3分の2は,1981年中に増加あるいは82年に増加させることを計画しているとされている。

レーガン大統領は,政府による基礎的研究への投資の増加に加えて,科学技術の振興に関連する各種政策をとっている。


1) 人材養成

有能な若手研究者に対する研究助成制度を1984会計年度に創出した。同制度によりNSF及び民間からの拠出資金により,年間200人に対し最高10万ドルの研究費を大統領が与えることができる。


2) 研究設備の高度化

研究設備の近代化,高度化を進めるために政府の助成を拡大するとともに,スーパーコンピュータの導入,政府の既存ネットワークの利用拡大を進める。


3) 産官学の交流の奨励

米国が直面する科学,技術問題の解決のため必要な科学者を結集することを目的として,NSFによる学際センターの設置等が提案されている。

これらの諸制度とあいまって,米国の基礎力は,今後さらに強化されるものと思われる。


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