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第1部   21世紀の新たな技術の創出を目指して
第5章  欧米主要国の基礎的研究の動向
1.  欧州主要3国における基礎的研究の動向
(3)  今後の動向


1970年代に入り,2度にわたる石油危機など世界経済秩序の動揺により科学技術に対する投資も停滞気味となった。しかし,近年先端技術を通じてもたらされる技術革新を世界経済活性化の原動力と期待する声が高まっている。

このような状況で欧州では,エレクトロニクスなどの先端技術分野で日米両国に遅れをとり,これが停滞する各国経済の活性化,国際競争力の維持・向上に悪影響を及ぼしているとの認識が高まっている( 第1-5-5図 )。欧州主要3国においても研究開発の振興に当たり,先端技術分野を重点的に取り上げるほか情報関連技術,ライフサイエンス分野等に長期的計画を策定し振興を目指している。

第1-5-4表 イギリス研究会議の予算概要

また,欧州共同体(EC)においても,このような動きを反映し情報技術研究開発欧州戦略計画(ESPRIT)を発表し,域内の協力に基づき長期的に振興を図ろうとしている。このほか,バイオテクノロジーについてもECにおける長期計画を策定しようとの動きがある( 第1-5-6表 )。

第1-5-5図 日本,米国,西ドイツ,フランス及びイギリスにおける技術集約品の貿易動向

これらの計画には,伝統的に高い水準を持つ基礎的研究分野の成果を技術革新に円滑に結びつけることによって経済活性化を図るべく,基礎的研究に高い水準を持つ大学,国立研究機関と産業が協力,分担して効率的に研究を進めようとの考えが認められる。しかしながら,この様な動きにもかかわらず各国政府とも財政難に苦しんでおり,その先行きは不透明である。

このような状況で,基礎的研究の分野においても次に述べるような問題がある。

1) 欧州主要3国では,高度経済成長の時代とほぼ同時期に大学も急速に成長した。しかし,現在,国における財政緊縮下で今後の成長は殆ど望めなくなっており,大学の研究者養成機能と大学自身の研究機能の拡大は困難となってきている。 若手研究者のポストの増大が困難となったため,研究者を目指す優秀な若者が大学に見切りをつけ,企業に職を求めることが多くなったとも言われる。 この,若手研究者のポスト不足は,基礎的研究を実施する大学以外の研究機関においても同様である。このため西ドイツは,ハイゼンベルク計画の名のもとに特定の期間の研究生活を保障する趣旨で奨学金制度を設立し,イギリスでも同様に奨学金制度の充実などの措置を取っている。フランスにおいても,CNRS等を中心に計画的定員増を図っている。
2) 財政難は欧州主要3国に,大なり小なり影響を与えているが,特にイギリスにおいて影響が大きいと考えられる。また,近年の先端技術振興の動きから欧州主要3国に共通のこととして,大学や政府研究機関における応用・開発指向が高まっており,研究開発資金が応用・開発部門に移りつつあり,それだけ基礎的研究に対する資金不足の影響が増大している。
3) 前述のように,優秀な若者が大学よりも企業に職を見い出す動きや,大学や政府研究機関における応用・開発指向の動きは,今後,先端技術の向上という欧州主要3国の共通目標から見て必ずしも望ましくないことではない。欧州主要3国の基礎研究費比率は,日米両国に比べまだ高い。特定の基礎研究費比率の値を最適として各国の比率を評価することはできないが,この欧州主要3国における基礎的研究の動向が,将来これらの国の科学技術全体にどういう影響を与えていくか注目される。
第1-5-6表 先端技術分野の振興計画概要



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