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第1部   21世紀の新たな技術の創出を目指して
第5章  欧米主要国の基礎的研究の動向
1.  欧州主要3国における基礎的研究の動向
(2)  基礎的研究の現状


このような科学技術振興の状況を基礎的研究の面から見た場合,欧州主要3国に共通することとして基礎的研究重視の姿勢が認められることである。

1) 性格別研究費について基礎研究の占める割合は,欧州主要3国は,いずれも日本,米国より高い。 さらに基礎的研究の主要な担い手である大学の基礎研究費の比率も,これら3国は日本や米国より高い( 第1-3-2図参照 )。
2) 大学の研究者数は,いずれも1960年代後半において高い伸びを見せ,西ドイツとフランスでは全体の研究者の伸びを若干上回る伸びを示している。
3) 大学を含む各国内の基礎的研究の水準向上のため,種々の支援を役目とする政府関係機関が存在する。

(1) 西ドイツ

西ドイツにおける基礎的研究は,主に大学,マックス・プランク協会傘下の研究所及び大規模研究機関で実施されている( 第1-5-1表 )。

連邦政府の科学技術振興への関与は,1962年連邦科学研究省設置以来増大した。

従来,州政府によりその経費が負担されていたマックス・プランク協会及び研究助成機関であるドイツ研究協会に対し,これ以降その経費の半額を連邦が負担することとなった。また,この頃高エネルギー物理学,原子力研究等のために大規模研究機関が次々設立された。これらの経費については,連邦政府9割,州政府1割の比率で負担されている。1972年に連邦科学研究省は,連邦教育科学省と連邦研究技術省の2省に分割され,以来教育科学省は大学における研究及び研究者養成の推進,研究技術省は連邦諸機関全体の研究活動の調整とその推進及び技術革新の推進を任務としている。ドイツ研究協会は,主に大学における長期共同研究等を含む研究活動を助成する公的研究助成機関である。

マックス・プランク協会は,大学外での基礎的研究を振興するために設立されたウイルヘルム皇帝協会(1911年)を前身とし,戦後再建されたもので大学とともに西ドイツの基礎的研究に中心的役割を果たしている。国家的・社会的要請の強い基礎的分野の特定課題を推進するため,研究者約4,000人を擁し,規模,設備,資金の面で大学では実施しにくい基礎的研究を中心に自ら実施するほか,大学との共同研究,有能な研究者の支援,協会の研究設備の提供など,基礎的研究を実施している研究者や研究機関に対し,種々の方法により助成している。また,同協会は,傘下の研究所の研究活動及び研究所の研究成果を定期的に評価し,これに基づき部局・研究所の改廃などを実施し,研究水準の維持,国家的・社会的要請への対応を図っている。

第1-5-1表 西ドイツの大学,マックス・プランク協会 傘下研究機関大規模研究機関の研究費

大規模研究所は,高額な設備や多額な資金を要する重要な研究開発を推進するために設立されたもので,現在,ユーリッヒ原子力研究所,ドイツ航空宇宙研究所,ドイツがん研究センターなど13の研究機関が活動している。

以上のことから,基本的経費が保証され自由な研究活動を行っている大学,利益追求を目的とする産業界の間にあって,マックス・プランク協会と13の大規模研究機関は基礎的研究から応用・開発研究にわたる国全体の研究活動が国家の長期的戦略に沿って進展していくための推進の役割を果していると言えよう。


(2) フランス

フランスは,他の国に比べ伝統的に中央政府の力が強く,科学技術の振興についても,1960年代初めから国の定める経済社会発展計画などの中に位置付け,その強化を図ってきた。1984年から88年における経済社会文化発展計画では,近代化を一層推進するため,産業,研究,職業教育への投資を拡大することとしている。この計画の中で12の優先プログラムを定め,その1つとして研究開発努力の増大と企業における技術革新の促進をうたっている。

また,科学技術振興に関する法律により定められている1985年までに研究開発投資の対国内総生産比を2.5%(1982年実績は2.06%)とする目標を本計画に取り入れ,さらに86年から88年について,この割合を維持するよう求めている。このほか上記の研究開発努力の増大等のための国の予算措置額を定めている。また,1981年には,研究長官所管の科学技術研究総務庁,大学省所管の国立科学研究センター(CNRS),工業省所管の技術革新本部等を吸収し研究技術省が新設され,産業技術の近代化等のための強力な推進体制を整備した。

国民教育省(元「大学省」)は,大学における研究者養成,研究実践を通じての訓練の推進を主たる任務とし,研究技術省(上記の研究技術省が1981年以降数回組織改正の後本年7月新たに発足)は,科学技術政策の立案,研究技術予算の調整,国立科学研究センター(CNRS)の管理を主たる任務とするものと思われる。

第2次大戦後のフランスは,1939年設立されたCNRSの再建を始めとし,原子力庁(CEA),国立航空宇宙研究所等各種研究開発機関の設立により,科学技術の振興を進めた。1963年国立研究機関やCNRSと大学との連携開始などの動きを背景に大学に対する重要性の認識が高まってきた。

第1-5-2表 フランスの基礎研究予算概要

CNRSは,西ドイツのマックス・プランク協会と同様,大学と並び基礎的研究を振興するために同協会に約30年遅れて設立された。戦後,次第に規模を拡大し,フランスの科学復興に大きな役割を果たしてきた。現在,基礎的研究分野全般における中心機関として約1万人(1983年)の研究者を擁し,我が国の国立試験研究機関全体に匹敵する研究費を使用し,直轄の研究施設や大学の研究者との連携などにより研究を実施するほか,特定テーマの研究の助成などを実施している( 第1-5-2表 )。

CNRSと連携を持つことは,大学の研究者にとり高い評価を得たことと認められていることもあり,大学の研究者の約3割が連携を持っているとされている。CNRSは,基礎的研究分野全般を幅広く網羅していること,また産業界に研究者を派遣したりコンサルタント業務を行うなどの点でマックス・プランク協会とは異っている。


(3) イギリス

イギリスは,自然科学系ノーベル賞受賞者の総数が米国に次いで2番目であり,しかも西ドイツ,フランスが戦後受賞者の比率を急減させたのに比し戦前,戦後とも約2割を維持していることから分かるとおり ( 第1-5-3表 ),基礎的研究分野で輝かしい成果を挙げ,限られた研究費を重点的に配分し十分な成果を挙げていると評価されている。

イギリスにおける基礎的研究は,主に大学及び教育科学省所管の5つの研究会議傘下の研究所で実施されている。

現在の科学技術体制は,1970年代初めロスチャイルド報告に基づき編成された。これによりイギリスは,西ドイツやフランスのように科学技術全般を調整する中央行政機関は置かず,基礎的研究分野は教育科学省が担い,各省は,それぞれの行政上の必要に応じて所管する研究所を運営し,又は大学,他省の国立研究所等と委託契約を締結し研究開発を実施することとなった。

この結果,全般的に応用・開発指向が高まってきたと言われている。

教育科学省は,研究開発活動に関しては大学補助金委員会,5つの研究会議を通じ,大学や研究会議傘下の研究所の研究を支援することをその主たる任務としている。

第1-5-3表 ノーベル賞受賞者数の国別比率の推移

大学補助金委員会は,給与や基本施設の経費などに対する補助金を通じ,大学における平常的な研究活動を支援している。

また,科学工学研究会議(SERC)等5つの研究会議は,それぞれ傘下研究所(ラザフォード・アップルトン研究所,ダールズベリー研究所,グリニッチ天文台など)で研究を実施するほか,大学における大型の研究,特に深化させるに値する研究を補助し,大型機器等の設備を設置・運営して大学の研究者の利用に供することにより,研究を助成し,大学院学生に奨学金を提供して研究者養成を援助し,また欧州の国際研究機関への参加促進などを実施している( 第1-5-4表 )。


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