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第1部   21世紀の新たな技術の創出を目指して
第3章  科学技術統計から見た基礎的研究
3.  政府研究機関における基礎的研究


我が国の政府研究機関の研究費は6,501億円(昭和57年度),研究者数は,26,656人(昭和58年4月1日現在)である。国全体の研究開発活動に占める比率はそれぞれ11.1%及び7.8%であり,この研究費は大学の研究費の約70%である。しかし,国全体の基礎研究費に占める比率は,大学の約60%に比べ約10%に過ぎない( 第1-3-3図参照 )。

政府研究機関は,国公立試験研究機関及び特殊法人の研究機関から構成される。各々の研究開発活動を組織別に見る( 第1-3-12図 )。基礎研究費の最も多いのは,国立試験研究機関である。ここでは,国の業務に直接係る研究開発のほか,国家的に要請の高い分野で幅広い研究開発活動を行っている。研究費総額1,957億円(昭和57年度)のうち54.0%が工学系の研究機関で使用されており,基礎研究費比率は33.0%である。研究者数の最も多いのは公営研究機関である。ここでは,研究者数の55.6%,研究費の65.1%が農学分野に集中しており,基礎研究費比率は12.8%である。研究費の最も多いのは,特殊法人の研究機関である。ここでは,主として原子力や宇宙などの国家的,社会的要請が高く,しかし,民間企業ではリスクが大きくて実施することの困難な大規模なプロジェクトを扱っている。そのため,研究者数に比較して研究費が多いが,一部の機関を除けば全体として基礎研究費比率は低く3.0%(開発研究費比率は90.9%)である。

政府研究機関は,いずれの国にあっても国家的,社会的ニーズに対応した研究開発を行っている。しかし,その活動の範囲と組織形態は,各国固有の歴史的背景と行政制度の違いにより国によって差がある。農林水産分野や保健・医療,気象・防災,環境保護,運輸・通信,国防など,行政ニーズに直接係る研究開発は,国によって規模や活動範囲が異なるものの行政分野ごとに専門の研究機関を設置しており,多くが国立の研究機関で行われている(日本については,前述のように農林水産分野については公営研究機関が比較的大きな位置を占めている。)。

エネルギー開発や宇宙開発などの国家プロジェクトについては,多くの国が専門の研究開発機関を設置している。日本と西ドイツは,政府研究機関である特殊法人の研究機関において,研究開発を進めている。米国では,連邦政府の研究所のほか,エネルギー省や航空宇宙局(NASA)が設置し,大学や産業に運営を委託する連邦政府出資の研究開発センターにおいて研究開発が進められている。これらは連邦政府から70%以上の資金援助を受け,政府所有の施設・設備を使い,政府との契約に基づき大学や企業が運営し,研究開発を行うものである。これらの例としては,エネルギー研究開発では,ロスアラモス国立研究所,オークリッジ国立研究所など,宇宙開発ではジェット推進研究所などがある。


注)我が国の研究者数の統計は,実員数をそのまま集計しているのに対し,他の国の場合は,実際に研究開発に従事した時間数で換算した人数である(実働時間相当;full-tinle equivalent)。実働時間が研究に従事する時間に等しいと考えられる産業及び政府研究機関の研究者と異なり,大学の研究者は,教育等研究以外にたずさわる時間が多い。このため,例えば統計上,米国の大学の研究者数99,400人(1982年)の方が日本の大学の研究者数109,930人(昭和58年4月1日現在)よりも少ないが,教員数(文科系あわせて1978年に日本約11万4,000人,米国約59万7,000人)から見て,米国の大学の研究者数(実員数)は,日本の数倍に達すると考えられる。この意味で,本白書第1部では,大学における研究者数の比較はあえて行わなかった

第1-3-12図 私が国の政府研究機関における組織別研究費,基礎研究及び研究者数

第1-3-13表 政府研究機関における研究費及び基礎研究費の推移(各国比較)


これらは,米国政府の統計上,使用研究費として集計する場合は,大学受託の研究センターの研究費は「大学」として,企業受託の研究センターの研究費は「産業」として扱われている。また,原子力研究開発の場合,フランスとイギリスの両国は,特殊法人ではあるが,事業活動を行っているため「産業」として扱われる公社によって研究開発が行われている。

欧州主要3国は,西ドイツにおけるマックス・プランク協会(MPG)や大規模研究機関,フランスの国立科学研究センター(CNRS),イギリスの研究会議所管の研究機関などのように,大学と並び基礎的研究を行う強力な政府研究機関が設置されている( 第5章参照 )。

これらの機関の基礎的分野における研究活動に相当するものは,我が国の場合,主として大学及び大学附置の研究所,高エネルギー物理学研究所を始めとする国立大学共同利用機関で行われているものである。このほか,特殊法人理化学研究所や金属材料技術研究所等一部の国立試験研究機関などの政府研究機関も基礎的研究活動を担っている。米国の場合では,大学のほか,各省庁所管の国立研究所や連邦政府出資の研究センターが行っている研究が含まれる。


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