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第1部   21世紀の新たな技術の創出を目指して
第2章  代表的分野における基礎的研究
3.  ライフサイエンス分野


近年のライフサイエンスの研究の進歩に大きく貢献している組換えDNA技術は,DNAの二重らせん構造の発見,遺伝子を運ぶベクターの研究,DNAの制限酵素の研究などの基礎的研究の積み重ねの後,確立された技術である。この組換えDNA技術を用いることにより,近年では遺伝子の構造を塩基配列のレベル(分子レベル)で解析したり,インシュリン,インターフェロン等の特定の有用タンパク質を微生物に大量に生産させることが可能になっているが,現時点では,最先端の技術を用いても特定の生物の一部の機能に関する遺伝子を取り扱うことができるに過ぎない。しかしながら,遺伝,免疫,代謝,発生等の生命現象の多くは,多種多様な核酸,タンパク質等の生体分子の複雑かつ精緻な相互作用の下に営まれており,これらの複雑な相互作用を司どる遺伝情報の発現調節メカニズムの詳細については,生命現象に関する基礎的研究による知見の蓄積に待つところが大きい。また,脳機能など,生命に関するより高次元な現象の解明についても同様である。

今後重要となるライフサイエンスの分野としては,高等動植物等(真核生物)を対象とするものが多くなってくると思われることから,これら高等動植物等の持つ機能について,分子レベルから細胞レベル,個体レベルに至る幅広い段階で理解することが極めて重要である。このため,

1) 細胞分化に関与する遺伝子の分画,同定及び解析並びにその発現及び調節機構の解析等細胞分化に関する研究を進め,また,細胞周期の調節機構の解明等細胞増殖に関する研究等を進めることによって,細胞レベルで利用し得る技術を開発すること。
2) 細胞間の情報伝達機構や脳・神経系,免疫系,代謝系等個体全体にわたる調節機構の解明等を進めることによって,個体レベルで利用し得る技術を開発すること。
3) 真核生物,とりわけ植物に関する分子生物学研究等を推進し,真核生物に適用できる遺伝情報系の操作技術を確立すること。

について特に配慮しつつ,ライフサイエンスの先導的・基盤的技術の研究開発を進めていくことが必要である。このようなライフサイエンスの先導的・基盤的技術は,タンパク質やDNAの構造や機能の解析等の生命現象の原理を解明していくという基礎的研究の積み重ねによって創出されることが多い。また,ライフサイエンスの先導的・基盤的技術を活用することにより,遺伝,免疫,代謝,発生等の生命現象の解明やがんや遺伝病等の本態の解明が二層加速化されることも期待できる。さらに,こうした解明の成果や新たな先導的・基盤的技術を用いれば,革新的な医薬品・新品種,バイオチップ等の開発等,保健医療,農業,工業等の広範な分野における研究開発において,市場価値の高い技術を創出することも可能となる。従って,今後,ライフサイエンスの一層の進展のためには,生物学,物理学,化学,農学等の多領域にわたる異分野間の密接な協力体制のもとで基礎的研究を充実していくことが不可欠である。

第1-2-3図 先端技術分野における主要専門誌掲載論文数

ライフサイエンス分野での我が国の貢献の状況について,研究課題として,「蛋白質構造解析」を一例として選び前節と同様に論文数で見てみると( 第1-2-3図 ),他分野と同様,米国の貢献が大きく,また,国際協力を含め共同研究の増加の傾向が注目される。


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