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第1部   21世紀の新たな技術の創出を目指して
第2章  代表的分野における基礎的研究
1.  新材料分野


新材料の開発の歴史は,多くの合金材料や高分子材料の探索あるいはセラミックスの製造条件の決定や触媒の利用のように,経験と知識を踏まえた試行錯誤的,あるいはしらみつぶし的な研究開発によって,開発し改良してきた面が強い。

新しいセラミックスや導電性高分子のように,目的を持って行っていた研究開発から派生したものや,個人のひらめきから偶然発見された例も多い。

そしてこの新物質が,新たな研究開発を刺激し物質の知識を増大させてきた。このようにして得られた知識と経験の蓄積を踏まえて,この分野の研究開発は,現在新たな方向を見せている。例えば,高分子化合物材料については,現在,単量体(モノマー)から希望どおりの重合体(ポリマー)を製作することが可能になっている。また,異なったポリマーを組み合わせたり,ポリマーとセラミックス又は金属等異種材料各々の持つ優れた特性を複合した二成分繊維あるいは繊維強化プラスチックなど利用価値の高い新たな複合材料が得られており,この面での様々な研究開発が進められている。しかしながら,要求される材料の性質の高度化に伴い,これまでに蓄積された知識や経験則では試行錯誤的研究方式を克服し得ず,研究効率の低下の傾向が見られている。このため,多くの材料分野において研究の方向を与える何らかの指針が求められている。物質は,多数の原子・分子から構成され,それらの相互作用の集約が,人間が利用するその物質の性質機能として外に発揮されている。個々の原子・分子あるいはそれらの少数の集団の持つ性質は,これまでの基礎的研究によってかなり解明されているが,人間が扱い得る大きさの材料については,その性質を理論的に推定し,さらに,求める性質をもつ材料を研究するための指針を得るまでには,多くの基礎的研究を積み重ねていく必要がある。ガラスや合金など現実に人間が扱う.大きさの材料においては,そこに含まれる原子・分子の数が余りにも多いため,個々の原子・分子の性質あるいはその配列の仕方から材料の性質を理論的に導き出して説明できるまでには至っていない。さらに,セラミックスや金属などの現実の材料は全体が均質なわけではなく,結晶粒や折出物など多くの微細な相の集合体を成しているなど,その特性を支配する要素に知見の不充分なものが極めて多い。従って,新材料の開発においては,物質を構成する諸要素間の相互作用とその発生機構,化学反応のメカニズム,物質内部とは異なる状態にある表面・界面の現象,成形加工の原子・分子構造への影響等について,深い理解を得るための基礎的研究が重要となっている。また,高分子化合物材料については,例えば,モノマーから成形製品を直接重合反応によって生産する技術,及びモノマーの重合開始時期をそろえる技術などの研究が課題として挙げられる。これらによって,従来のプラスチックの性能を超える超プラスチックの低コストによる製造が期待される。

また,現在,利用・応用面からのニーズに対応し研究開発が盛んに行われている材料研究の分野として,光,磁気,電気,熱,圧力などのエネルギーが物質に対し,優れたあるいは特殊な性質を示すいわゆる機能材料がある。

高度化の著しい情報・通信分野では,将来の超高集積回路(VLSI)用の材料が求められており,現在,大規模集積回路(LSI)用材料として盛んに使われているシリコンあるいは実用化直前にあるガリウム砒素の単結晶を超える優れた性質を秘めた超格子素子が研究されている。超格子は,数原子層又は数分子層の異なる物質を交互に積層したもので,いわゆるハイブリッド材料の一種であり,物質の通常持つ性質とは異った電気的,磁気的,光学的性質を得ることが期待されるものである。このためには,膜の表面を数原子の厚さで均一にかつ欠陥なく積層する技術が必要であり,結晶表面及び結晶と結晶との間の界面に関する電子・原子レベルの基礎的な物性研究が重要である。このため,電子顕微鏡では観察が困難な数原子層下の界面構造の分析法,全工程を超高真空下で行うための超高真空技術等の基盤技術の開発も重要となってくる。

機能材料としてはこの他にも,DNAの分離,微生物に作らせたワクチン用免疫原タンパクの分離など特定物質を選択的に識別・分離できる材料,あるいはビタミン,ホルモンの合成,炭酸ガス等の固定化等を効率化するような触媒などが求められている。

これらの機能材料の開発には,いずれも,構成する物質の物理的,化学的な性質,物質あるいは結晶の表面活性,結晶構造とその欠陥,膜機能,結晶あるいは粒子における界面特性等,物質に関する分子,原子レベルまで立ち入った基礎的な研究が必要とされている。このような基礎的研究においては特に物理,化学,生物,電気などの既存の学問分野の枠を超えた異分野間の相互刺激と協力が必要となっている。

第1-2-1図 先端技術分野における主要専門誌掲載論文数

我が国が,新材料分野における基礎的研究でどのような貢献をしているかを限られた研究課題ではあるが,「超格子」と「結晶界面」について,専門家から注目され引用される代表的国際学術雑誌に採択された論文数について,日本科学技術情報センターのJICST科学技術文献ファイルにより集計した結果から見ると,超格子の分野では,我が国は出遅れていること,また,いずれの分野も,米国の貢献がずば抜けており,特に企業における活躍が注目される( 第1-2-1図 )。


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