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第1部   21世紀の新たな技術の創出を目指して
第1章  新しい技術の創出をもたらす基礎的研究
(1)  基礎的研究と応用目的との関係


研究開発は,一般に新知識の探求,発見という基礎的な研究から実用化に近い段階の研究まで様々な態様があり,それぞれを区別するために種々の分類と定義がなされている。 注)

しかしながら,研究開発に関する国際比較を行うためには,各国ができるだけ共通の定義を用いるのが望ましく,経済協力開発機構(OECD)では第1-1-1表に示す「基礎研究」,「応用研究」及び「開発研究」の3つの区分を用いており,現在の我が国の科学技術統計及び米国の国立科学財団(NSF)の統計もこの定義に基づくものとなっている。OECD加盟国のみならず,その他の国においてもこの定義に基づき統計を作成している。


注)米国では,「Basic Research」,「Applied Research」,「Development」という一般的な区分の他に,米国国防省関係では「Research」,「Exploratory Development」,「Advanced Development」,「Engineering Development」,「operational System Development」の区分が用いられている。また,西ドイツでは基礎研究と応用・開発研究の2区分が統計上用いられている。我が国でも昭和42年度から昭和49年度までの間,「純粋基礎研究」,「目的基礎研究」,「応用研究」及び「開発研究」の4区分が総務庁(当時総理府の「科学技術研究調査報告」で用いられていた。

この定義は,OECD諸国の研究開発や統計の専門家によって,研究開発の実態と統計作成の容易さ等を総合的に調和させて作成されたものである。

元来,「基礎・応用・開発」という分類概念は,研究の目的性に着目しているため,「基礎的な研究は応用目的を持たないもの」というように,狭く考える向きもあるが,研究の実情は,このような定義では明確に割り切れない面をもっている。例えば,戦後,ジョセフソン効果の発見後,ほとんど期間を置くことなくエレクトロニクス・デバイスへ応用する研究が開始されたように,基礎的な研究と応用のための研究が近接してきており,近年では,新材料創出という技術的課題を克服するため,物質に関する新しい知識を探求するような基礎的な研究が推進されつつある。このように,研究現場においては,ますます「基礎研究」と「応用研究」の区別が難しくなってきている。

また,疾病発生のメカニズムや人間の体の機能等の理解を目指す研究についても,多くの研究者は純粋な学問的関心と同時に疾病に苦しむ人々を救うことを目的として研究を進めているが,これらの研究は一般的には基礎的な研究と受けとめられている。

第1-1-1表 基礎研究,応用研究及び開発研究の定義

さらに一方では,素粒子論のように物質あるいはエネルギーの本質そのものを究める研究のような基礎的な研究の中には,極めて長期的に見れば原子力利用のように,いずれは応用につながるかも知れないものもある。

このように,研究が基礎的かどうかを応用目的の有無,応用につながるまでの期間の長短等によって分類することは必ずしも容易ではなく,また,「基礎的」と「応用目的」とを対立してとらえることも適切でないと言えよう。例えば,米国における政府の研究資金の配分決定に当たって,出資側が「応用研究」において応用目的を強調するあまり,研究者自身は気づかないが実際は優れた応用的価値を持つ基礎的な研究を見過したり,逆に「基礎研究」の無目的性を強調するあまり,応用価値の高いと見られる基礎的な研究が採択されないことの危険について議論がなされたこともある。

従って,本白書第1部では,応用目的の有無等を問わず,仮説や理論を形づくったり,あるいは現象や事実について新知識を得ることに係わる研究を「基礎的研究」として,国際的に定義されている「基礎研究」と区別して広くとらえ,その動向を分析することとし,統計的分析についてのみ資料の都合上,国際的定義による「基礎研究」に限ることとした。


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