? 昭和58年版科学技術白書[第1部 第4章 4 (3)]
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第1部    情報化の新たな展開に向けて
第4章  情報化の新たな展開に向けて
4.  今後の科学技術の開発の在り方
(3)  社会的要素を踏まえた発展


情報化に関連した科学技術は,その社会に与えるインパクトが極めて広範囲に及ぶとともに,個人の価値観との関係等人間個人とも深いかかわりを有しており,これらの科学技術を社会に適用していく過程では,従来の社会システムに様々な変化が生じることとなる。この傾向は,これまでの情報化の中心となっていた産業分野において顕著である。製造部門における自動化の進展は,労働環境を大きく変化させてきており,また,近年のOA技術の発展は,事務部門における業務の形態をこれまでとは異なったものにしようとしている。

このような変化に伴って様々な社会的課題が発生するのは,ある意味で避け難いことである。情報化がこれまでの産業中心の限られた分野での展開から,社会,生活にわたる広い分野に広がる動向にあることを考えると,今後,情報化に向けて科学技術の適用を拡大していく上で発生する問題をいかに軽減,解消していくかが重要な課題となっている。

特に,急速な技術発展と情報利用の一般化,高度化に伴い,個人の情報を含む大量の情報が一般に容易に蓄積,利用され得る状況が出現し始めているので,プライバシーの保護の確保が基本的に必要である。

また,労働への影響について見れば,今日まで我が国は,終身雇用制,企業への帰属意識の強さといった独自の社会環境の下で欧米諸国に比ベスムーズにロボットの導入等自動化を進めてきたが,今後の進展度合によっては,女子,中高年労働者への影響を懸念する意見もあり,適切な対応が求められている。我が国の産業における生産技術の水準の向上には,新技術の積極的な導入とともに,現場の第一線の技術者,労働者がこれを使いこなし,一層高度なものに改良してきたことが大きく寄与しているとされている。コンピュータ,ロボット等の導入は,労働の場における熟練の質を大きく変質させることが考えられ,今後,労働環境の変化に応じた新たな熟練が生産の場における活力を維持し向上させていく上で重要となろう。

技術予測において紹介したように情報化へ向けての科学技術の適用について専門家の間でも様々な意見があるものもある。具体的には医療の場におけるロボットの導入,教育の場におけるコンピュータの導入等が挙げられる。

このような分野については,充分に関係者更には広く国民のコンセンサスを得るものでなければ実効ある導入は困難になると考えられるので,技術開発を進めるに当たってもこのための努力が一層重要である。

さらに,今後の情報化を考える上では,付加価値通信サービス(VAN)の実現,ソフトウエアの法的保護の問題に見られるように,法制面の整備を必要とする課題も多く,これらについても適切な対応が求められている。

今日までの産業を中心とする情報化の過程においては,欧米諸国の事例を参考とすることが可能であった。しかしながら,今後,これが社会又は生活の分野に広がるのに当たっては,我が国独自の社会的伝統,風土といった要素が大きな比重を占めることになり,独自の道を切り開いていくことが必要である。


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