? 昭和58年版科学技術白書[第1部 第3章 4 (2)]
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第1部    情報化の新たな展開に向けて
第3章  情報化を支える科学技術の発展
4.  通信技術の発展
(2)  無線通信技術


空間を伝わる電波を情報伝送媒体として用いる無線通信には,広帯域信号の伝送に適する,広い範囲をカバーする,回線の設定が比較的容易であるなどの特長があると同時に他の無線通信からの干渉を受ける恐れがあり,また,伝搬特性が変動するなどの制約条件がある。

無線通信は,こうした特徴を踏まえて固定地点間の通信,自動車や船舶などを対象にした移動通信に広く用いられている。

固定通信を代表するマイクロ波通信回線は,テレビジョン信号のような広帯域信号を経済的に伝送する必要性の高まりとともに,我が国においては昭和20年代後半に国鉄,NHK及び電電公社によって相次いで開設された。その後の公衆通信用マイクロ波通信技術は,第1-3-20図に示すように進展し,大容量化が進められた。昭和30年代後半以降は,有線通信回線と同様に機器の固体化(半導体化)が進み,最近ではインパットダイオードやGaAsFET(ガリウム砒素電界効果トランジスタ)など新しい素子技術の進展により大電力増幅部もTWT(進行波管)から固体化されるすう勢にあり,機器の小形化,低消費電力化が進んでいる。昭和51年に開発された伝送速度400Mbit/s(電話5,760回線相当)のPCM方式を用いた20L-PI方式は,世界最大容量の無線通信方式であると同時に準ミリ波帯という新たな周波数帯を開拓した意義を有している。さらに,これまでアナログ方式によってマイクロ波通信の主軸となっていた4,5,6GHz帯にも最近周波数利用効率の高い新しいディジタル変調方式が導入されるなど,マイクロ波通信もディジタル化の傾向が著しい。

第1-3-20図 マイクロ波通信技術の発展

一方,移動通信は,無線通信の特徴を最も良く生かしたものであり,戦前においては,船舶,航空機を主な対象として発展してきたが,戦後,超短波(VHF)帯,極超短波(UHF)帯技術の発展や素子技術の発展による無線通信機器の小形化などの技術的進展と移動体との通信に対する社会的な需要の高まりを背景として警察,消防等の公共業務やタクシーなどの民間における自動車無線として普及した。最近では,昭和40年代前半に実用化された列車内公衆無線電話やポケットベルに加えて,自動車電話,パーナル無線などが実用化され,移動通信は,高度化するとともに多様な形態で用いられるようになってきた。この結果,陸上移動局だけで我が国の全無線局数約200万局の約3分の1に達している。


注)周波数帯と呼称


第1-3-21図に示すように昭和30年代半ば以降無線局数は急増しており,増大する通信需要に対処するため,大容量化に加えて利用周波数帯の拡大,周波数利用効率の向上を目的として研究開発が進められている。特に今後利用が期待される30GHz以上の周波数帯(ミリ波帯)については,素子,電波伝搬など基礎から応用に至る幅広い研究開発が郵政省電波研究所,電電公社を中心に大学,民間企業も含めて活発化しており,画像や高速データの短距離伝送が可能な50GHz帯の簡易無線が最近実用化された。

このような地上系無線通信技術の進展に加えて,近年,衛星通信が注目されている。衛星通信の有効性と技術的可能性は,昭和30年代後半に米国の衛

第1-3-21図 無線局数の推移

星を利用して我が国も含めて行われた国際共同実験によって確認され,これによって初めて国際間テレビジョン中継が可能になった。1965年にはインテルサット1号が打ち上げられて商用国際衛星通信が開始された。インテルサット衛星は,第1-3-22表に示すように次第に大形化,大容量化しており,回線当たりの投資額は大幅に低下し,これに伴って我が国の国際通信回線に占める衛星通信の比率は昭和46年以降50%を超えている。

第1-3-22表 インテルサット衛星の発展状況

また,1970年代に入って,カナダ,米国等で国内衛星通信が実用化されるようになり,我が国においても実験用中容量静止通信衛星(さくら)の開発及び実験の成果を踏まえて通信衛星2号(さくら2号)が昭和58年に宇宙開発事業団の種子島宇宙センターから打ち上げられ,これによって小笠原諸島と日本本土間の電話が即時化され,我が国の国内公衆通信の完全自動即時化が達成された。さらに,昭和59年には,実験用中型放送衛星(ゆり)の成果を踏まえて世界初の実用放送衛星(放送衛星2号)が打ち上げられる予定になっており,我が国も衛星通信の本格的な実用化時代を迎えた。

こうした状況を背景に,昭和62年度の打上げを目指してより大形で高性能の通信衛星3号の開発が昭和58年度に開始され,さらに,SS/TDMA(衛星交換時分割多元接続方式)や衛星内再生中継方式など,より高度な運用が可能となる衛星通信方式に関する研究開発,小形の船舶や航空機を対象とした移動衛星通信方式に関する研究開発が進められている。


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