? 昭和58年版科学技術白書[第1部 第3章 3]
ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
第1部    情報化の新たな展開に向けて
第3章  情報化を支える科学技術の発展
3.  ソフトウエア技術


コンピュータは,ソフトウエアを変更することによって多様な要求に柔軟に対応することが可能であり,これが今日におけるコンピュータの広範な分野への普及の大きな要因となっている。

ソフトウエアは,ハードウエアの基本的な働きを管理するオペレーティングシステム(OS)などの基本ソフトウエアとコンピュータの利用者が具体的な仕事に適用させるための応用ソフトウエアに大別されるが,第1-3-12表に示すように発展してきており,特に最近では,ソフトウエア・エンジニアリングとして広範なシステム工学を含めての概念としてハードウエアに対応する大きな技術分野と目されるに至っている。

第1-3-12表 ソフトウエアの発展過程

第1段階においては,コンピュータそのものも初期の段階であり,ソフトウエアという概念も成熟していなかった。プログラミングは機械語又は機械語に近い言語によって行われており,コンピュータに精通した専門家によってのみその利用が可能であった。しかし,既にこの時期にプログラミングの簡略化のため,サブルーチンの概念が導入されていた。

第2段階に入るとハードウエアに対比するものとしてソフトウェアという呼称が定着し,ハードウエアとは独立して開発されるようになってきた。このような中で,FORTRAN,ALGOL,COBOLなど今日でも広く用いられている汎用のプログラミング言語が欧米で開発され,ISO(国際標準化機構)やJIS(日本工業規格)において標準化された。これらの高水準プログラミング言語には,1)機械命令の知識がなくてもプログラミングすることが可能となる,2)プログラミングの工数が少なく誤りが発見し易い,3)同じソフトウェアを異なる機種のコンピュータに適用することが容易になる,などの特長があり,コンピュータの普及に大きな役割を果たした。

特に米国の大学で開発されたBASICは,近年におけるパーソナルコンピュータの急速な普及の原動力となった。

また,1950年代後半には,コンピュータをシステム全体として効率良く動作させるためのオペレーティングシステム(OS)が開発され,いくつかの仕事をまとめて連続的に処理するバッチ処理が可能になり,コンピュータの処理効率が高まった。さらに,データが発生した時点で直ちに処理が行われるリアルタイム方式及び一つのコンピュータシステムを多数の端末から時分割の会話型処理によって利用するタイムシェアリングサービス(TSS)が開発され,これにより1960年代以降通信回線によってコンピュータと端末を結ぶオンラインシステムが発展した。航空機や鉄道の座席予約システムはオンラインリアルタイム方式の,日本科学技術情報センター(JICST)のJOISや電電公社のDRESS (販売在庫管理サービス)などはオンラインTSS方式の例である。このようなプログラミング言語やOSなどの基本ソフトウェアの発展は,コンピュータの使い易さの向上や高機能化に大きく寄与すると同時にその利用分野を拡大する契機ともなっている。また,コンピュータの高性能化に伴うシステムの高度化の要請も強く,より高次のソフトウエアの重要性がますます高まっている。

このようにソフトウエアの重要性が高まってきているが,技術革新によって急速に経済性の向上するハードウエアに対して主として人間によって行われるソフトウエアの生産性の向上は低く,第1- 3-13図に示すように1960年代後半にはソフトウエアの経費比率がコンピュータシステムの過半に達するようになった。このため,構造的プログラミングをはじめとしてソフトウエアの開発コストを低減するためのソフトウェア開発技術が新しい科学技術分野として認識され,1970年代半ば頃からソフトウェアの生産をより科学的,工学的,組織的に行うソフトウェア・エンジニアリングという言葉が定着し,今日,多大の努力が国際的に払われるようになっている。

第1-3-13図 ハードウエアとソフトウエアの 経費比率の推移

我が国は,第1-3-14図に示すとおり,ソフトウエアの導入件数が多く,しかも近年急増している。応用ソフトウエアについては,一部高い水準に達している分野もあるが,基本ソフトウエアとともに外国からの技術導入に依存している部分も多く,我が国はソフトウエアの開発がハードウエアの開発に比べて遅れていると見られている。このため,昭和54年度から5か年計画で開始された通商産業省の「次世代電子計算機用基本技術の研究開発」計画においては,次世代の電子計算機に必要不可欠な基本ソフトウエアであるOS技術の確立をハードウエアのシステムと並ぶ主要な目標の一つとして積極的に開発が進められている。

今後コンピュータの普及及び適用分野の拡大に伴ってソフトウエアの需要ばますます増大し,かつ,ソフトウエア自体の高度化が要請されており,ソフトウエアの生産,保守の効率及び信頼性の向上を図ることが課題となっており,この分野においてもミニコンピュータやパーソナルコンピュータを利用してソフトウエア生産の効率及び信頼性の向上が図られ始めている。

一方,ソフトウエアの流通については,第1- 3-15表に示すように我が製品の売上げ高の割合が著しく小さい。これは,個々の利用者に合わせてソフトウエアを作る傾向が強い我が国の慣習によるところが大きいが,今後一層拡大すると見られるコンピュータの利用を考慮すると,汎用性のあるソフトウエアについての流通の拡大を図る必要性が高まろう。

国においては,ソフトウエア業全体の売上げ高に占める汎用のソフトウエア

第1-3-14図 電子計算機関連技術の導入件数の推移

第1-3-15表 ソフトウェア流通の各国比較


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ