? 昭和58年版科学技術白書[第1部 第3章 2]
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第1部    情報化の新たな展開に向けて
第3章  情報化を支える科学技術の発展
2.  コンピュータの発展


社会経済の発展に伴って自動計算機械の必要性が高まり,20世紀前半にはかなりの技術的進展を見せた。しかし,1930年代の後半になって機械式計算機の計算速度の限界が認識されるようになり,1940年には米国のウィナーによって新たな計算機は,1)ディジタル式であること,2)電子管を採用すること,3)二進法を採用すること,4)データの記憶が必要であること,などであるべきであると提唱された。

このような理論面での発展とレーダの開発によって培われたパルス技術の進歩によって,従来の計算機械では処理しきれない高速の動作をする電子計算機(コンピュータ)を可能とする環境が次第に整った。

人類初のコンピュータは,1946年に米国で開発された電子管を論理素子とするENIACであり,当時の電気機械式計算機の約1,000倍の計算速度を有する画期的なものであった。それ以後のコンピュータの発展は素子の開発とともに急速なものがあり,第1-3-6表のとおり体系化されている。世代の区分は,コンピュータを構成するハードウエア技術及びソフトウエア技術の進歩を反映しているが端的には使用されている論理素子によって代表されていると言えよう。

第1-3-6表 コンピュータ技術の進歩

第1世代は,電子管を論理素子に用いた四則演算を中心としたものであり,ハードウエアの基礎技術が確立されるとともにプログラミングの基礎概念が確立され,コンピュータの有用性が広く認識されるようになった。我が国においては,米国に約10年遅れて民間の手によって電子管式の国産第1号のコンピュータが開発されたのをはじめ,我が国で発明されたパラメトロンを素子としたコンピュータが電電公社電気通信研究所を中心として開発された。また,これらとほぼ同時期に当たる世界的に見ても早い段階の昭和31年にトランジスタを用いたコンピュータが通商産業省電気試験所において開発された。

第2世代に入ると,トランジスタの信頼性,高周波特性等の性能が向上して論理素子に用いられるようになり,これに伴ってコンピュータの高速化と高性能化が進んだ。また,この世代の後半には,コンピュータ利用の需要が各分野から起こり,これに伴ってソフトウエアの重要性が認識された結果,ソフトウエアの概念がハードウエアに対するものとして定着し,コンピュータ技術の基盤が確立した。

第3世代には,ICの開発等半導体技術の進歩により,コンピュータの高速化,小形化,低価格化がもたらされ,ハードウエアの機能は飛躍的に向上した。これに対し,ソフトウエア開発の低生産性が問題になり始め,特にソフトウエアの体系化と互換性が重視されるようになった。このため,大規模のコンピュータシステムから小規模のものまで同一の設計思想で開発するコンピュータのファミリーシリーズの考え方が定着した。

このような進展を見せたコンピュータ技術の中心,特に情報やコンピュータへの指令の入出力装置,情報の処理,演算を行うとともにコンピュータ全体の監視,制御を行う中央処理装置及びプログラムやデータを記憶する記憶装置等いわゆるハードウエアについて,その発展の軌跡を見ることとする。

この中でも中央処理装置は中枢をなす部分であり,前述したとおりここに用いられる論理素子は電子管からトランジスタ,ICへと進歩してきた。このような論理素子の高集積化に伴って,第1-3-7図に示すとおり中央処理装置の演算速度は飛躍的に向上し,また,能動部品数が減少して信頼性が向上してきた。

1970年代初めには,中央処理装置の機能をLSI化したマイクロプロセッサ又はこれと周辺の記憶機能などを組み込んだマイクロコンピュータ(マイコン)が生まれた。当初マイコンは電子式卓上計算機に用いるために開発されたものであるが,産業用機械や家庭用電化製品の制御に用いられるとともに機能,性能の高度化が図られ,今日ではパーソナルコンピュータの普及の原動力となっており,ミニコンとほぼ同性能のものも開発され始めている。

第1-3-7図 中央処理装置の性能の向上

記憶装置(メモリ)は,中央処理装置から直接アクセスできる高速の主記憶装置と大量のデータを経済的に記憶するファイル記憶装置とから構成されており,今日ではコンピュータのハードウエアコストのうちでも大きな割合を占めるようになっている。主記憶装置には初期においては様々なものが用いられ,1950年代半ばから1970年代初めまでは高速で安定度の高いコアメモリが用いられた。しかし,IC技術の進歩によりICメモリの経済性が高まり,1970年代に入ってコンピュータの主記憶装置に用いられ始め,急速にコアメモリからICメモリに置き換えられるようになった。ICメモリの容量は当初1kbitであったが,急速に高集積化が進み,近年,256kbitのRAM(書き込み,読み出し自在のメモリ)が開発されるまでに大容量化が進んでいる。こうした技術の発展に伴って,第1-3-8図に示すように主記憶装置の高速化が進み,今日では初期のものの1万倍程度の高速化が達成されている。

一方,ファイル記憶装置については,コンピュータの応用範囲の拡大に伴って必要性が高まり,1950年代半ば頃から本格的に用いられるようになった。磁気記録技術による磁気テープ装置,磁気ディスク装置などがその代表的なものとなっており,大容量化,低コスト化が進んでいる。最近では,画像ファイル用などに光技術を応用した新しいファイル記憶装置なども現れ始めている。

第1-3-8図 主記憶装置の高速化

こうした主記憶装置及びファイル記憶装置の記憶容量とアクセス時間を見ると第1-3-9図のとおりになり,高速であるが記憶容量の小さい主記憶装置と大容量であるが低速のファイル記憶装置の間にはギャップが存在する。それぞれの大容量化,高速化に加えてこのギャップを埋めるものとして1960年代末に米国で発明された磁気バブルメモリ及びCCD(電荷結合デバイス)メモリが近年注目され,実用化され始めている。

以上見てきたようなハードウエア技術の進展により,今日のコンピュータは初期のものと比較して第1-3-10表に示すように大きく性能が向上している。特に,低価格のパーソナルコンピュータは,机上に置ける程の小形,軽量化が図られているにもかかわらず初期のコンピュータの性能をかなり上回るまでになっている。また,コンピュータの使用料も第1-3-11図に示すように急激に低下し,25年間でほぼ千分の1になっている。

第1-3-9図 記憶装置の容量とアクセス時間

第1-3-10表 ENIACと今日の我が国の代表的 コンピュータの比較

第1-3-11図 コンピュータの使用料の推移


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