? 昭和58年版科学技術白書[第1部 第3章 1]
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第1部    情報化の新たな展開に向けて
第3章  情報化を支える科学技術の発展
1.  記憶・回路等の素子の開発


コンピュータや通信機器の記憶,増幅回路等を構成する要素は一般に素子と言われており,コンピュータや通信機器の発展の基盤となっている。

1948年に米国で発明されたトランジスタは,半導体理論の発展,材料技術,プロセス技術の進歩を背景に信頼性,高周波特性,経済性の向上が図られてきた。これによって従来電子管が用いられてきた機器がトランジスタ化され,次第に電子管は,陰極線管(ブラウン管)のほか,高出力放送機器やマイクロ波大電力用など実用的な半導体素子が開発されていない特殊な用途に限られるようになってきている。また,1960年代に入って集積回路(IC)が開発され,トランジスタも次第にICに置換されてきている( 第1-3-1図 )。

第1-3-1図 我が国における素子生産額の推移

初期のトランジスタは,Ge(ゲルマニウム)を材料としたものが主であったが,Si(シリコン)の結晶技術やプロセス技術の発展により,今日では信頼性が高く耐高温特性の優れたSiトランジスタが大部分を占めている。近年,新たな材料としてGaAs(ガリウム砒素)などの化合物半導体が注目されるようになっている。1960年代半ばに米国で開発されたGaAs FET(ガリウム砒素電界効果トランジスタ)は,Siトランジスタの使用限界を超えるミリ波に近い周波数帯まで使用可能で,低雑音かつ高出力であり,第1-3-2図に示すように,高周波化,高出力化が図られてきており,従来電子管が用いられてきたマイクロ波通信機器や衛星通信用機器などにも用いられるようになってきている。

一方,1950年代後半に入って,航空宇宙用,軍用に高度の電子機器が求められるようになり,米国を中心にいくつかの素子や部品をまとめて小形,軽量の機能ブロックとし,高密度実装を図るとともに高信頼性を達成しようとする動きが活発化し,1960年代に入ってICが開発された。

第1-3-2図 大電力用GaAsFETの開発推移

ICの集積度は第1-3-3図に示すように大きくなり,近年,10万素子以上を集積したVLSI(超LSI)が開発されるまでになっている。これによって,第1-3-4図及び第1-3-5図に示すように経済化,高信頼度化が達成されている。

第1-3-3図 集積度の推移

第1-3-4図 MOS RAMの画格推移(平均)

第1-3-5図 半導体素子の機能当たりの故障率の推移

また,近年,IC技術の進展により,複数の機能を一つのICに組み込むことが可能になり,マイクロコンピュータをはじめ,音声認識,音声合成,画像処理,通信用CODEC(符号復号器)など様々な用途のICが開発され,応用範囲を拡げている。

このように素子技術は急速に進歩しているが,高集積化,高速化,高機能化への要求は一層高まっている。このため,これまでのシリコン素子の限界を超えるGa As素子,HEMT(高電子移動度トランジスタ),ジョセフソン素子など新しい材料や新しい原理による高速素子についての研究開発が,通商産業省電子技術総合研究所,電電公社,理化学研究所,民間企業等において活発に進められている。また,我が国で開発されたSIT(静電誘導トランジスタ)技術を背景に超高性能素子創出の可能性を探る「完全結晶」の研究開発が科学技術庁の創造科学技術推進制度において,素子を立体的に構成して高集積化と多機能化を図る「三次元回路素子」,従来の素子の限界を超えた超高速動作をすると期待される「超格子素子」等の研究開発が通商産業省の次世代産業基盤技術研究開発制度において,また,「半導体の格子欠陥を利用した材料機能の研究」が科学技術振興調整費によって進められており,成果が期待されている。


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