? 昭和58年版科学技術白書[第1部 第2章 2 (5)]
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第1部    情報化の新たな展開に向けて
第2章  社会の各分野における情報化の進展
2.  公共分野における情報化
(5)  研究開発


情報処理,通信技術の発展は,様々な分野の研究開発活動の高度化・効率化を実現する重要な要因となっており,今日では基礎研究の分野においても,これらの技術は不可欠のものとなっている。例えば,組換えDNA技術を中心とするライフサイエンスの急激な発展は,DNA,蛋白質等に関する知見を飛躍的に増大させており,これに伴って,これらの物質の構造の推定等大量の情報の処理の必要性が高まっている。また,社会的要請の極めて強い地震予知研究の推進に当たっても,観測網を展開するとともに,これから得られる膨大なデータを迅速に処理,分析することが必要であり,情報処理,通信技術は研究の効率化に大きな役割を果たしている。

一方,宇宙開発,原子力開発といった大規模な研究開発においても,情報処理,通信技術は,大きな役割を果たしているが,これらの研究開発におけるニーズがこうした技術の促進要因ともなっており,相互に影響を及ぼしつつ技術開発が進展している。また,人文・社会科学の分野においても,社会活動の分析におけるシミュレーションへの応用等コンピュータの果たす役割は大きい。

このように,情報化を支える科学技術は,様々な分野における研究開発の進展に重要な役割を果たしているが,同時に,新たな学際的分野を産み出していることが一つの特徴である。この典型的な例としてロボット技術を始めとするいわゆるメカトロニクスの発展を挙げることができよう。これは制御を司るコンピュータ技術と人間の感覚器管に相当する機能を提供するセンサ技術及び機械技術が融合して進展している領域である。

もう一つの特徴として,情報処理,通信技術の発展により各分野においてこれまでには得られなかった情報が生み出されるようになっていることが挙げられる。CT技術の発展により,脳の状態等人間の体内の状態をより詳細な画像として得ることが可能となり,医学研究のための新しい情報が生み出されている。また,人工衛星を用いたリモートセンシング技術の発展は,資源・環境等について従来の観測法では困難であったデータの収集を可能とし,研究の進展をもたらしている。

一方,広範な研究開発活動を支える基盤として不可欠なものである科学技術情報については,科学技術の急速な進歩につれて量的に拡大するとともに,近年の研究開発の総合化,学際化に伴い様々な分野の情報を迅速かつ的確に研究者に提供することが研究開発の効率的推進を図る上で不可欠となっている。

科学技術情報の流通方策については,科学技術会議から「科学技術情報の全国的流通システム(NIST)」構想(第3部第4章3参照)が提示されているが,近年のコンピュータ技術,通信技術等の進展により,オンラインによる機械検索を可能としたデータベース活動がその中心となりつつある。

データベースには,大別して,雑誌に掲載される論文・解説等の雑誌記事情報,特許・実用新案等の特許情報,技術レポート,会議資料,学位論文等の文献情報を取り扱う文献データベースと物性データ,自然観測データ,生物・医学系データ等の情報を取り扱うファクト・データベースの2種類がある。

文献データベースに関しては,我が国における科学技術情報の中枢的機関である日本科学技術情報センター(JICST)において,世界50数か国から収集した資料をもとに,第1-2-21図に示すようにして年間約46万件の抄録処理を行い,科学技術文献速報を始めとする各種の二次資料を発行するとともに,データベース化を行っている。JICSTでは,これらの情報とともに外国から導入したデータベースも含め,一般へのオンライン情報サービス(JOIS)を行っており,JOISのデータベースは第1-2-22表に示すとおりとなっている。

現在,JOISの端末は約2,000台,年間利用件数は約37万であり,利用件数は増加する傾向にある。

第1-2-21図 JICSTによる科学技術情報の収集・処理・蓄積

我が国で作成されている科学技術情報データベースとしては,JICSTのJICST文献データベース(年間約46万件)とJAPATIC((財)日本特許情報センター)の日本特許データベース(年間約40万件)の2つが科学技術全般を扱うものとして代表的であるが,世界中でデータベースに記録される情報が,数え方にもよるが年間450万件以上と言われており,米国及び西欧の年間収録件数がそれぞれ530万件,650万件(1983年。ただし,重複して収録されているものを含む。)とされているのと比較するとはるかに少なく,立ち遅れている。

またファクト・データベースに関しては全世界で約450種以上も作成されているが,我が国ではほとんど小規模なものばかりであり,今後材料設計等へ適用し得る高度なデータベースの開発も含め,その整備を図ることが必要である。

第1-2-22表 JOIS(JICSTオンライン情報サービス)のデータベース (昭和58年12月15日現在)


さらに,日本の科学技術情報に対する各国の要請は強くなっており,国産データベースの整備・拡充とともに,英文データベース等海外に提供できるデータベースの作成が大きな課題となっている。


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