? 昭和58年版科学技術白書[第1部 第2章 2 (2)]
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第1部    情報化の新たな展開に向けて
第2章  社会の各分野における情報化の進展
2.  公共分野における情報化
(2)  医療


医療における情報化は,各種医用電子機器の導入に始まり,次第にコンピュータ等を活用した医療情報システムの開発・普及へと進みつつある状況にある。医用電子機器は,画像診断,生体信号解析,検体検査,患者の監視などに用いられ,診療部門における診断及び看護の精密化,効率化,省力化等に貢献している。また,医療におけるコンピュータの利用は,病院管理部門を中心に進みつつある。

画像診断機器として既に臨床面で広く用いられているものに,X線CT及び超音波診断装置がある。X線CTは,体の断層面での多数の方向からX線ビームを曝射して被検体を透過したX線量を測定し,その吸収量データを用いて断層画面としてもとの画像を再構成する装置であり,昭和56年の厚生省調査では,頭部(頭頚部)用CTが9.8%の病院で,全身用CTが7.0%の病院で使用されている。超音波診断装置は,体内に向けて発射された音波の反射から体内臓器等の状態を観測するものである。これらの装置は,生体に対するセンサと情報処理機能を一つにまとめたものであるが,エレクトロニクスの発展によって性能と経済性の面で実用の域に達した。さらに,新しい画像診断機器として,X線に比べて人体への影響が小ないと言われ,1 H(水に最も多く含まれる)の分布を形態的に把握できるなどの特徴をもったNMR(核磁気共鳴)-CTが開発されている。

生体信号を自動的に解析して医療診断の効率化を図ろうとするものに心電図の自動解析器がある。通信回線を介して専用コンピュータに接続するものと,マイクロコンピュータを組み込んだものとがある。

病院における検体検査は,生化学検査,細菌検査,血液検査,細胞検査など多種にわたり,かつ検体数が多いことから,早くから自動化が要望されてきた。パターン認識技術及びマイクロコンピュータ技術などの成果によって血液検査の自動化装置が開発実用化されており,子宮ガンのスクリーニングのための細胞検査の自動化が近く実用化される段階にある。

ICU(集中強化治療室)は,常時監視の必要な重症患者,術後患者を集め,心電計等の種々の計器を使って心拍,血圧,呼吸などの状態を常時モニターし,異変に即時に対処できるシステムであり,昭和56年末現在で既に大病院を中心に9.8%の病院で採用されている。

その他,人工臓器,各種の福祉機器については,小型化,高信頼度化の努力が続けられており,素子,マイクロコンピュータなどの発展とともに,携帯型,体内埋込型など,より使い易いものが開発される方向にあり,現在ではマイクロコンピュータなどを使用し,患者の介護をする看護ロボットも試作されている。

医療情報システムについては,厚生省及び通商産業省がその開発を進めている。このため,昭和49年に(財)医療情報システム開発センター(MEDIS-DC)が設立され,第1-2-16図に示すようなシステムの開発を行っている。そのうちのいくつかのシステムについては既に実用に供されており,その概要は,以下のとおりである。

地域医療情報システムは,地域医療に必要な多様な保健医療情報を有効に活用し,保健医療機関の協力が円滑に行われることをねらいとしたもので,モデル地域を設定し,種々のシステムの評価と組織体制の整備を行っている。そのうち,救急医療情報システムは,救急医療情報センターに各医療機関の患者受入れに関する情報を通信回線を通じて集積し,コンピュータのファイルに登録しておき,救急時に適切な医療機関を迅速に見いだすシステムであり,神奈川県三浦半島地域における実験を経て,現在,全国で東京都,神奈川県など25都府県に普及している。

第1-2-16図 医療情報システム開発センターが開発した医療情報システム

病院情報システムは,病院内で得られる種々の複雑な診断結果,検査結果などの情報の統合化・蓄積を行い,病院管理,診療等に必要な諸データが即時に医師等関係者に利用できるシステムであり,また病院情報システムの一形態である共同利用型病院情報システム(SHIS;Shared Hospital Infor-mation System)は,多数の病院がハードウエア,ソフトウエア及び専門要員をできるだけ共同利用して,高度な病院情報システムを容易に利用できることを目的としている。病院情報システムのいくつかのものは,既に普及段階に入っており,昭和56年の厚生省調査では,診療報酬請求事務を中心に41.7%の一般病院でコンピュータが利用されている。

医療情報サービスシステムは,医療に関する最新の情報を収集整理し,必要時に迅速に医療関係者にこれを提供することにより,医療の質的向上を目指すシステムである。例えば,腎移植情報システムとして,腎移植希望者,腎移植に必要な組織適合性,血清などの情報をコンピュータに入力し,腎提供者が現われた場合に速やかに最適の患者を選ぶシステムが開発され,腎移植の中核的施設である国立佐倉病院と各地方ブロックの地方腎移植センターとの間のオンライン化の完成により,昭和58年3月から同システムが稼動し,極めて短時間のうちに,最適の患者を選ぶことが可能となった。この腎移植情報システムの導入に先立ち,昭和52年度から,国立佐倉病院と地方腎移植センターが体系的に整備され,昭和50年代に入るまで極めてわずかであった死体腎移植が,昭和57年には148件にものぼっており,今後,上記システムの効果が期待されている。

また今後は,各種医療機関の医療情報システムをネットワークによって結合し,トータルシステム化を図る方向へ進むと予想される。このようなトータルシステム化を図る医療用コンピュータネットワークシステムとしてヘルスケアネットワークシステムが現在開発実験中である。


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