? 昭和58年版科学技術白書[第1部 第2章 2 (1)]
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第1部    情報化の新たな展開に向けて
第2章  社会の各分野における情報化の進展
2.  公共分野における情報化
(1)  交通


空,海,陸の交通における情報化の進展は多彩であり,それぞれの分野で,経営向上,サービス向上,安全度の向上などの面に寄与している。

航空における情報化には,航空管制業務を支援するためのコンピュータ導入,航空機へのコンピュータや航空電子技術の適用による飛行管理,地上の航空保安施設と自動操縦装置などの搭載装置による計器着陸や自動着陸,航空会社による予約,発券,出発管理などへのコンピュータの利用などがある。管制業務を支援するシステムは,航空管制情報処理システムと呼ばれ,第1-2-13図に示すように,パイロットから提出された飛行計画(フライトプラン)を処理するFDP(飛行計画情報処理システム),航空路監視レーダからの情報を処理するRDP(航空路レーダ情報処理システム)及び空港周辺の管制業務に関わるARTS(ターミナルレーダ情報処理システム)からなる。

第1-2-13図 航空管制情報処理システム

我が国で管制業務にコンピュータシステムを導入するという考えが具体化したのは,基本構想が明らかにされた昭和37年であった。この構想に基づき,昭和40年度に東京航空交通管制部でFDPシステムの整備が始まり,昭和45年度に運用が開始された。その後,昭和46年の雫石上空の全日空機と自衛隊機の空中衝突事故を契機として,急拠航空路レーダ網と管制情報処理システムの整備が進められることとなり,昭和48年度から,機能と規模を拡大した新FDPシステム,新規開発のRDPシステム及びARTSの整備が行われ,昭和51年度末から逐次運用に入って,現在では全国規模でシステムの運用が行われている。各システムは,データ通信回線を介して相互に緊密な連携を保ちつつ管制業務を支援しており,安全性と処理能力の向上に貢献している。

また,航空機の性能向上とILS(計器着陸装置)等の地上施設の充実とにより,運航の定時性と就航率は,近年著しく改善されている。

一方,各定期航空会社は,大型コンピュータを利用した情報システムを形成し,各支店事務所及び空港事務所,さらに旅行代理店に専用端末を設置し,全国的なオンラインシステムとして,サービスの向上と省力化を図っている。

海上交通においては,東京湾内を航行する船舶に対し,他船の動向,気象の状況等航行に必要な情報を提供する情報提供業務と巨大船等に対する航行管制業務を行っているレーダ情報処理システムがある。昭和40年代始め,既に東京湾及び浦賀水道においては船舶交通が著しくふくそうしている状況にあったので,種々の検討を行い,昭和46年度に観音崎レーダー局建設に着手した。昭和52年2月,東京湾海上交通センターが発足した。同センターでは,現在,観音崎,本牧及び浦安のレーダ映像を常時監視するとともに,レーダ映像を始めとして船舶交通に関する各種の情報をコンピュータ処理して,情報提供業務と航行管制業務を実施している。

また,外洋を航行する船舶は,現在,通信は主に短波で行い,測位は米海軍の航行衛星(NNSS; Navy Navigation Satellite System)を利用している。NNSSは,もともと米海軍が軍用に開発した位置決定システムであるが,昭和42年からは民間の利用が可能となった。大型船では,インマルサットシステムによる衛星通信を導入しているものもある。

一方,自動船の開発も進んでいる。昭和36年には機関室内に独立制御室を設置して機関部関係の監視・計測装置を集中し,遠隔操縦を可能にするとともに,船橋からも遠隔操縦を可能としたいわゆる自動化第一船が誕生している。昭和40年代に入って,エレクトロニクス技術が飛躍的に発展し,船舶においてもコンピュータが利用されるようになった。航法,機関等の船舶の機能をトータルシステム化しコンピュータを活用して集中制御することにより,船内労働の低減,安全性の向上,運航経済性の向上を達成することを目指した研究開発が行われ,昭和45年に,本格的な船舶のコンピュータ制御機器を搭載した超自動化第一船が竣工した。大型外航船は,従来30〜40名程度で運航されていたが,現在では20名程度以下で運航されるものが実用化している。

道路交通ではコンピュータを使用した広域交通制御が行われている。交差点付近等に設置された車両感知器が車の量,速度などの情報をコンピュータに集め,交通量に応じて信号の点滅時間の長さを制御するとともに一定地域内の信号機を連動させることにより,交通渋滞の解消等交通の安全と円滑に役立てている。また,高速道路においては,パトカー,車両感知器等からの情報を基にして,情報板等により,車両の運転者に対して各種情報を提供している。さらに,道路沿いの必要箇所に設置した情報提供設備により現用のカーラジオを通じてドライバーに局地的に緊急を要する道路交通情報を即時に提供することができる路側通信システムが導入され始めている。道路における公共交通機関であるバス事業の情報化は,鉄道と比較すると遅れていたが,デマンドバスシステムやバスロケーションシステムが導入され始めてきている。運輸省が進めている「都市新バスシステム」は,バスロケーションシステム等を取り入れる一方,コンピュータによる運行管理システムを導入している。これは,コンピュータと車載器を公社回線又は無線で結び,全車両の状況を把握し,バスに指令を出すことによって適当な間隔を保つシステムである。

鉄道における情報化は,座席予約,貨物予約,コンテナ情報のようなサービス向上を目ざすもの,駅業務のシステム化,ヤードの自動化のような業務能率の向上を目ざすもの及び,運転保安,運転管理面での高度化といった安全度の向上とともに経営面での向上につながるものなどがある。

座席予約システムは,旅客サービスの向上に大きい貢献をしている。「みどりの窓口」として親しまれている国鉄の座席予約システムの発展を第1-2-14図に示す。昭和35年に特殊専用機を使用した試作システムが開発され,その成果を踏まえて,昭和39年に汎用コンピュータと多数の端末を通信回線を介して接続した我が国初の本格的なシステムが誕生した。昭和47年には,販売管理,印刷の全面自動化等の大幅な機能強化を図ったマルス105が完成し,収容可能な座席数は一日当り約70万座席となった。また,団体予約,プッシュホン電話機からの予約のためのシステムも完成し,一方,旅行会社のシステムとも,昭和55年に3社と,昭和57年にもう1社と結合され,利用者の利便が図られている。民鉄においても,指定座席のある特急列車を運転しているすべての会社が指定座席の予約システムを導入している。

第1-2-14図 国鉄の座席予約システムの発展

鉄道の運転管理の分野においては,コンピュータの導入等により,以下のように情報化が進展している。

国鉄では,全トランジスタ電子方式のCTC(列車集中制御装置)を開発し,新幹線に本格的CTCとして採用し,全線の進路制御等の列車運転管理を総合指令所で集中して行っていたが,需要の変動に即応した輸送の実施並びに異常時の列車運転管理面における改善がさらに要請されるに至り,昭和47年3月,コンピュータが導入され,コムトラック(COMTRAC;Com-puter Aided Traffic Control)システムが実用化された。第1-2-15図に機能の全体構成を示す。コムトラックシステムの導入により,正常な運転状態にある場合の進路制御が完全自動化されたばかりか,列車ダイヤの大きな乱れに対し,グラフィック・ディスプレイを使用した対話方式で整理案ダイヤを作成し,これに承認を与えるとそれに従って進路制御が実行されるなど異常時対応の迅速化,正確化がもたらされた。また,民鉄においても昭和40年代後半から運転管理にコンピュータが使用され,省力化はもとより,線区全体の複雑な列車運行に対応するためのシステムが積極的に導入されている。このうち,神戸市,大阪市で開業した新交通システムにおいては自動運転等の無人対応設備を制御する総合システムが使用され,在来鉄道とバスの中間の需要に対応する新しい交通機関のシステムとして注目されている。その他,大手民鉄,地下鉄等では電力管理のコンピュータ化等も活発に行われており,一部ではこれらに駅務管理等を含めたすべての情報管理をトータルシステムとしてコンピュータ管理する事業者もある。

第1-2-15図 新幹線コムトラック(COMTRAC)システム の機能の全体構成図


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