? 昭和58年版科学技術白書[第1部 第2章 1 (2)]
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第1部    情報化の新たな展開に向けて
第2章  社会の各分野における情報化の進展
1.  産業分野における情報化
(2)  オフィスオートメーション


製造工程又は工場の情報化とともに,情報技術の適用による企業内の一般事務処理の効率化(オフィスオートメーション)も進められている。

事務処理においては,19世紀末よりパンチカードシステム(PCS)が用いられており,1950年頃より米国でこの分野にもコンピュータが使用され始めた。第2世代コンピュータの登場により,パンチカードシステムで行われていた各種の業務のコンピュータへの置き換えが始まった。昭和30年代に入り我が国は,この種のコンピュータを輸入するとともに国産機の開発を進め,第1-2-8図に示すように昭和36年以降,高度成長期下で急速に普及した。

昭和40年頃には,第3世代のコンピュータが登場した一方,マークカードによる入力が台頭し,プロッター,ディスプレイによる表示が利用され始めた。コンピュータの稼動に対する信頼性が向上し,オンライン・リアルタイム・システムも実用化された。プログラムの上では,COBOLの使用頻度が高くなってきており,コンピュータは,より扱い易いものとなった。この頃,各企業は,MIS (Management Information System)に関心を示すようになり,昭和41年の日本情報処理開発協会の調査では,対象企業の67%がMISを指向している。MISを「経営のための必要な情報を必要な時期に提供するシステム」とすれば,オンライン・リアルタイム・システムの普及により,目指すものに近づいたとは言えるものの,扱う情報は数値情報が大部分であり,極めて複雑多岐にわたる企業情報を包括するような柔軟なシステムの構築は困難であった。

第1-2-8図 昭和30年代におけるコンピュータ設置台数の推移

MISの意図するところが各企業で実現したとは言い難いが,試行錯誤がやがて昭和40年代後半にかけての着実なコンピュータ利用の定着に結びついていったといえよう。

昭和40年代後半以降の事務処理機器の機器別普及状況は,労働省が企業規模1,000人以上の株式市場上場企業の本社を対象に調査した結果によると,第1-2-9図のとおりである。汎用コンピュータは,昭和40年代の後半には既に80%近くの企業で導入されており,昭和46年の公衆電気通信法の改正によりデータ通信が制度化されたことを契機に,コンピュータのオンライン処理化が進行し,オンライン端末装置も着実に普及している。ファクシミリは昭和47年に加入電話網と接続できるようになったことをきっかけとして広く普及してきている。また,昭和50年代に入り,オフィスコンピュータ,パーソナルコンピュータ等の導入が進んでおり,さらに,日本語ワードプロセッサの登場により,ワードプロセッサの普及が著しく,オフィスオートメーションが急速に進みつつある。

以上からも我が国においては一般事務処理部門においてもその情報化は,製造工程又は工場の情報化と同時並行的に進展してきていることが明らかである。

このようなオフィスオートメーション化の進展の背景には,ソフト,ハード両面での技術進歩があるが,中でも,非数値的な情報の処理技術は大きい要素である。特に,日本語処理技術の進歩は,オフィスコンピュータ,ワードプロセッサでの漢字使用を可能とし,それらの普及に貢献している。日本語処理技術は,日本語を扱うことが業務である新聞社,出版社などにおいてまず研究開発が進められ,ついで,多数の顧客の人名や企業名の漢字処理が必要な業種に用いられるようになった。その後,オフィスコンピュータや汎用コンピュータで日本語が取り扱えるようになってきた。一方,日本語ワードプロセッサが昭和5年に製品化されて以来,オフィスで日常的に使われるようになった。日本語ワードプロセッサの入力方式にはいくつかのものがあり,文字認識や音声認識によるものも試みられているが,最も広く用いられているのは入カボードによるものである。代表的なものは,タブレット入力方式とかな―漢字変換(又はローマ字―かな漢字変換)方式である。かな-漢字変換方式では,変換に用いる用語の辞書を合理的なものとすることが重要であり,また,同音異義語の処理のため,文法的なチェックや使用した熟語の頻度の管理が行われるようになっており,これらのいわゆるソフトの開発とその高度化が機器そのものの開発よりも重要なウエイトを占めている。

第1-2-9図 昭和40年代後半以降の事務処理機器普及状況

オフィスオートメーションの促進要因も昭和56年の労働省調査の結果から見ると,第1-2-10図に示すとおり,「事務の合理化・効率化」であって,調査企業の95.1%がこれを挙げている。その他生産性向上と競争力強化に関する各項目の割合が高い。なお,雇用面への影響としては,作業内容の変化や情報処理関係技術者の増加といった労働力需要構造の変化がもたらされつつあり,今後適切な対応が求められよう。

第1-2-10図 企業における事務処理機器の導入目的とその達成状況

オフィスオートメーションは,機器の単体での使用から,オフィスのシステム化,オフィス間のネットワーク化へと進展していくものと考えられる。オフィスオートメーションの現状と今後のネットワーク化のそれぞれについての調査の結果を第1-2-11図に示す。同図の(1)によれば,全体としては,機器の単体利用の割合が高いが,一部で,汎用コンピュータとその他の機器を結合又は統合化するといった進展が見られる。さらに,同図の(II)から分かるように,オフィスオートメーションのネットワーク化については,当面,構内でのネットワーク化,将来的には,オフイスオートメーション・ネットワーク相互間を接続し,広域化を図ろうとしている。このような機器と通信との結びつきの例として,ワードプロセッサに通信機能を付加した日本語テレテックスの開発を挙げることができよう。

第1-2-11図 オフィスオートメーションの現状と今後のネットワーク化

このような広範なオフィスオートメーションの進展につれて,人間と機器との関係が重要な問題を提起すると予測されており,今後この関係(マン・マシン・インタフェイス)の一層の改善が発展の重要な鍵と見られている。


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