? 昭和58年版科学技術白書[第1部 第2章 1 (1)]
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第1部    情報化の新たな展開に向けて
第2章  社会の各分野における情報化の進展
1.  産業分野における情報化
(1)  製造工程・工場(ファクトリー・オートメーションへ)


昭和25年の朝鮮動乱を契機として,鉄鋼業,化学工業などの装置産業における生産が本格的に始まり,既存設備における個別プロセスの合理化,更に新鋭プラントにおける連続プロセスの採用へと進展した。また,制御装置の全面的な電子化により,プロセス相互の連動制御が行われるようになった。

戦前からあった機械式の自動制御装置の技術については,我が国は,当時大きく立ち遅れており,外国技術の導入に頼らざるを得なかったが,わが国メーカーは,電気式サーボモータを自力で開発し,昭和25年に,真空管を用いた電子式自動制御装置を完成した。我が国で最初にトランジスタを全面的に採用した制御装置は,昭和30年代の中頃に開発され,その後,制御装置の全面的なトランジスタ化が進展した。さらに,コンピュータがプロセスと直結した連続制御に耐え得る能力と信頼性を備えるようになった昭和30年代後半には,鉄鋼業等のプロセス制御に導入され,飛躍的な進展をもたらした。

昭和40年代に入り,それまで主としてアナログ・コントローラの制御をプロセス制御コンピュータで行っていたものから,ディジタルコンピュータでプラントを直接制御するDDC(Direct Digital Control)の実用化へと進み,制御方式もより高度なものが採用された。制御システムとしても,プロセス制御コンピュータを生産管理用の大型コンピュータに結合した大規模なオンラインシステムが鉄鋼業等に出現した。昭和50年頃になると,LSIを用いたマイクロプロセッサの進展により,分散型のDDCが可能となり,DDCの普及が一層促進された。

このように,プロセス制御の高度化には,コンピュータの導入が重要な役割を果たしており,コンピュータ技術の進歩による寄与が大きい。装置産業においては,鉄鋼業,石油化学工業,合成繊維工業等に見られるように,コンピュータの導入による大規模生産と製品の品質向上を実現するため,ユーザーとして独自のソフトウエアを開発し,プロセス・エンジニアリングの革新が進展した。

また,加工・組立産業においては,高品質かつ安定した加工精度等を通じての生産性の向上を目指して,NC工作機械,多品種の生産に対し,プログラムを変更するだけで容易に能率良く対応できるCAD/CAMシステム(Computer Aided Design and Manufacturing),産業用ロボット,さらには工場の自動化,無人化を指向する総合的なシステムであるFMS(Flex-ible Manufacturing System)へとその情報化が進められてきている。

NC工作機械は,1954年頃に真空管を使用した第1世代のものが登場して以来,新しいエレクトロニクス技術(トランジスタ,IC,ミニコン,マイコン)の導入により,約5年ごとに新しい世代のものが生まれている。NC工作機械を最初に開発したのは米国であるが,我が国は,昭和30年代に入ってこれを技術導入し,各メーカーによる開発が続けられた。その結果,昭和40年代までは欧米諸国に遅れていた我が国の工作機械業界の生産は,現在ではその生産台数において世界の首位に立っている。

第1-2-1図 NC工作機械の相対的価格低下と生産の伸び

加工・組立産業界の生産の省力化指向と供給側の努力により,第1-2-1図に示すように,NC施盤と多能自動工作機械であるマシニング・センタは,相対的な価格低下即ち経済性の向上に伴い,50年代に入り生産台数は,急激な伸びを示し,その普及に一層拍車がかけられている。

産業用ロボットについては,第1-2-2表のような分類がなされているが,その原点は,1954年,米国のDovel氏が特許出願したマニピュレーターのアイデアにあるとされている。その後米国において開発が進められ,1968年頃から実用期に入いった。我が国には昭和42年に輸入され,我が国メーカーは,各種産業機械,NC工作機械の開発によるサーボ機構,シーケンス制御などの自動化技術の蓄積を動員して産業用ロボットを開発し,その生産も,第1-2-3図のように,昭和51年以降急速に進展しそいる。

第1-2-2表 入力情報,教示方法による産業用ロボットの分類

さらに,その分類内訳を見ると第1-2-4図に示すように,昭和51年には,固定シーケンスロボットが,台数,金額ともに過半数を占めていたが,56年には,より高級なプレイバックロボットが金額で首位になるなど,生産台数そのものの増加とともに高度化の傾向が見られる。産業用ロボットの生産は,金額で見るとNC工作機械の成長ペースを4〜5年の遅れでたどっており,我が国は,汎用の産業用ロボットの生産,普及ともに世界の最高水準にある。

ロボット導入促進要因を日本産業用ロボット工業会が昭和54年に行ったアンケート調査から見ると,第1-2-5図に示すとおり,ロボットの経済性,生産システムの高度化,労働安全性向上ニーズ,熟練労働者・若年労働力不足などが挙げられる。また,同調査結果において,生産工程別に促進要因と特徴を見ると,人件費の上昇は,ほぼ共通であるが,鋳造,金属熱処理,鍛造,塗装では,人件費上昇以上に労働安全性の向上が重視されている。

第1-2-3図 産業用ロボットの生産の推移

産業用ロボットの導入については,雇用問題等から種々の懸念が内外において示されてきている。しかし,我が国における産業用ロボットを含む集積回路利用機器の生産,利用に関し,労働省が昭和57年11月に行った調査によると,機器を導入した工程の約40%で従業員を減員しており,導入した約30%の事業所では,同一事業所内の他の生産部門へ従業員の配置転換を行っているが,解雇,希望退職募集を行った所はほとんどない。また,これら機器の導入工程に引き続き配置されている労働者に対しては,第1-2-6図に示すように,約60%の事業所で一定期間職務を離れて行う教育訓練を実施しており,オン・ザ・ジョブ・トレーニングを含めると約80%となる。一方,従業員がロボット等の導入をどのように受けとめているかを関西生産性本部が昭和57年11月に実施したアンケート調査から見ると,第1-2-7図のとおりであり,新しい機器の導入に対し,従業員が積極的に取組む姿勢が.強い。一方,このような産業用ロボットの導入に伴う作業に従事する労働者の安全の確保を図る見地から,労働安全衛生規則の一部改正などの措置が講じられている。

第1-2-4図 産業用ロボットの分類別生産高比

第1-2-5図 ロボット導入促進要因

第1-2-6図 集積回路利用機器を導入した工程 の労働者に対する教育訓練

第1-2-7図 従業員に対するアンケート結果によるメカトロ ニクス機器導入時の会社,組合への施策希望


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