? 昭和58年版科学技術白書[第1部 第1章]
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第1部    情報化の新たな展開に向けて
第1章  我が国の情報化の現状

我が国の社会経済は,1960年代まで世界経済の急速な拡大,豊富かつ低廉な資源・エネルギーの海外からの供給,主として海外からの技術導入による技術革新の進展,耐久消費財等新製品を中心とする大量消費市場の出現等を背景に,設備投資と輸出を主導力として高度成長を続けてきた。1970年代に入ると,資源・エネルギー制約の高まり,貿易面での国際摩擦の増大等により高度成長を支えた環境条件が大きく変貌するとともに国民生活の面では,高度成長によってもたらされた所得の向上によって国民の多くが中流と意識する傾向が顕著となり,国民のニーズは,物的財の充足から生活の質の向上にも向かい,また,国民の価値観も多様化するようになった。

これらに伴って,経済のサービス化の進展,産業構造の変化等,社会に新たな変化が生じており,その動向が注目されるようになっている。

この様な社会的現象については,我が国のみならず他の先進工業諸国にも多く見られるものであり,このような現象の特徴をとらえるため種々の観点から様々な言葉が使われている。例えば,産業の面においては「知識集約化」,「高付加価値化」,国民の価値観の変化については「物ばなれ」,さらに社会全般にわたる変化については「情報化」,「ソフト化」,「脱工業化」などである。

これらの言葉の意味するところから一つの重要な認識を導くならば,社会において「情報」のもつ意味が物的資源等に比べて相対的に増していることをあげることができよう。そこで,本白書においては,我が国のこのような情報を巡る社会変化を「情報化」という言葉でとらえ,本章ではその現状を社会,経済指標等から概観する。

まず,国民が現代及び今後の社会についてどのように見ているかを内閣総理大臣官房広報室が行った調査結果から見ると第1-1-1図に示すように,大多数の国民が現代を情報化社会と認識しているとともに情報に対する考え方についても,社会生活を営む上で重要性・必要性が高く,今後その重要性は増大するという見方が支配的であり,情報化の進展が広範囲な社会現象となっていることを意識の面から裏付けている。

第1-1-1図 情報化に関する意識    

また,この様な情報化において起動的かつ重要な役割を果たしているコンピュータについての国民の意識を見ると,一方で「コンピュータは必ずしも個人の利益に役立つとは限らない。」という考え方もあり,コンピュータを社会的に必要なものと認めつつも個人生活に関与する場面では不安のあることも示されているが,コンピュータの有用性は高く評価され,「現代社会にとってコンピュータは不可欠のものである。」とするものが大多数を占めている。5年前の調査に比べるとコンピュータの必要性の評価は,一段と高まっており,コンピュータの社会又は国民生活への浸透に伴って国民の意識が大きく変化してきていることを示唆している。

また,我が国の情報化は,就業構造の面から見てもその進展が著しい。情報労働者として,工業・サービス業等の各産業における研究者,技術者等(情報生産者),上級公務員,管理職等(情報処理者),教育者,ジャーナリスト等(情報流通者),タイピスト,電話交換手,事務機械保守管理要員等(情報インフラストラクチャー職業従事者)を抽出し,これと残余の農林漁業・工業及びサービス業労働者の4分類でOECD諸国の労働者数を比較したOECDの調査( 第1-1-2図参照 )によると,米国の場合,1950年においては工業部門が40%弱を占め,情報部門は約30%であったものに対して,1970年にはその比率が逆転している。我が国の場合,1960年においては情報部門は農林漁業部門,工業部門に次いで18%を占めるにすぎなかったが,1975年には情報部門は約30%に達し,最も大きな比率を占める工業部門に迫っている。また,イギリス,西ドイツ,フランスなどにおいても情報部門の占める比率は,急速に高まっており,このような傾向は先進国に共通したものと言えよう。

第1-1-2図 各国の部門別労働者数比率

さらに,各国の情報化の程度を(財)電気通信総合研究所の情報化指数の考え方により情報量(1人当たり郵便差出通数,1人当たり電話通話回数,100人当たり1日新聞発行部数,1万人当たり年間書籍発行点数及び1一当たり人口密度),情報装備率(100人当たり電話機数,100人当たりテレビ台数及び1万人当たりコンピュータ台数),通信主体水準(第3次産業就業人口割合,100人当たり大学在学者数)及び情報化係数(個人消費支出中の雑費の比率)の各側面0から総合的に指数化すると,第1-1-3表からも明らかであるように,1965年においては,米国は我が国の約2.5倍の水準にあったが,1980年においては,我が国の指数が高まり,この差は約1.5倍までに縮まるとともに,西ドイツ,イギリスを超える水準となっており,我が国の情報化が急速に進展してきたことを示している。

特に我が国の場合,特徴的であるのは情報装備率の伸びが極めて高いことである。このことは,我が国の情報化がコンピュータ通信機器等情報機器の普及を中心として進展してきていることを示していると見ることができる。

また,郵政省が毎年行っている情報流通センサスにおいても総供給情報量がここ10年間で約2倍になるなど我が国の情報化の急速な進展が認められる。

第1-1-3表各国の情報化指数

この傾向をより詳細に見ると第1-1-4図及び第1-1-5図に示すとおりであって,産業及び社会・生活の情報化は,共に進展してゆく傾向を示しているが,社会・生活の情報化のコンピュータ系の進展度合も著しく,今後は社会・生活面においてもコンピュータ系を中心とした情報化が進展する可能性が予測される状況にある。

第1-1-4図 情報化の進展と予測-1970,1975,1979(実績),1985, 1990(予測)年度(1970年度を基準とした増加率)

第1-1-5図 情報化総合指標―分野別指標の年度別推移と予測


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