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第1部   創造性豊かな科学技術を求めて
  むすび

世界経済が低迷し,各国は新たな進展への道を模索している。我が国もその例外ではなく,国内的には財政再建という厳しい状況下にあって社会・経済の安定的な発展を,対外的には世界経済の再活性化に対する積極的な貢献を求められており,大きな試練の時期を迎えていると言えよう。このような中で,我が国のみならず,世界各国において科学技術に対する期待が大きくなっている。これに対応して我が国の科学技術がどのように進められており,どのような位置にあるのかを探ろうとしたのが本白書のねらいである。

我が国の科学技術がその発展とともに社会・経済に大きな貢献を果たし,その寄与の度合がますます大きくなってきていることは周知のとおりである。一方,我が国の科学技術はエレクトロニクスをはじめとして多くの分野で世界のトップクラスの技術水準を有するまでになったと言われているが,生産技術に重点をおいた発展であったがために,原理の発見や基本的な技術の発明などの基礎的な段階では比較的低い水準にあると指摘されている。

このため,創造的自主技術開発の必要性が絶えず叫ばれ,論じられてきた。もちろん,このような自主技術の確立は一朝一夕で成し遂げられるものではなく,我が国が過去において営々と築き上げてきた成果の上に立って徐々に進められてくるものであろうが,一方では,我が国の科学技術を取り巻く環境は急激に変化しつつあり,創造的自主技術開発に向けてできる限り速やかな対応が必要とされている。

幸い,我が国の研究開発投貿は,研究開発の主体をなす民間において著しい伸びを示しており,政府においても科学技術を重要施策の一つとして取り上げ積極的な施策を講ずる等科学技術の一層の促進に向かって強い意欲が見られる。また,エレクトロニクス,ライフサイエンス等の分野で社会・経済に大きな変革を与えるであろう革新技術の芽が生れつつある。このように,科学技術を取り巻く環境の変化に伴って創造的自主技術開発の推進に向けて科学技術活動が活発化し,また1970年代の技術革新の停滞期と言われた時代を抜け出し,新たな革新への胎動が見られる。

創造的自主技術開発を推進していくためには,大学,国立試験研究機関,民間企業の各界の研究者の創造性を十分に生かした基礎的研究の積み重ねが最も基本となるものであり,このような研究の蓄積を基に革新技術のシーズの探索・育成と同時に,先導的・基盤的科学技術分野における研究開発等の積極的な展開が必要とされている。

このような意味から,本白書では特に先導的・基盤的科学技術分野を取り上げ,ある程度掘り下げた分析を行い我が国における研究開発の現状の位置づけを行ったが,これらの分野は各国においても積極的な研究開発が推進されており,我が国が自主技術開発力を身につけていくため今後より一層重視しなければならない重要な分野と言えよう。

生産技術面で主要先進国に追いつき追い越すという目標z達成しつつある我が国は,今後,自ら未来に向かって新しい道を切り拓かなければならず,このような開拓に経験の少ない我が国にとっては,従来になかった困難がつきまとうことになろう。しかし,第2章第3節の先導的・基盤的科学技術分野でも見てきたとおり,我が国では積極的な研究開発が実施されており,我が国独自の自主技術もいくつか出ており,また,創造科学技術推進制度のように,革新技術のシーズの探索のための施策も打ち出される等活発な動きが見られる。

冒頭で述べたように,内外ともに厳しさを増す情勢下にあって,山積する課題を解決していくための科学技術に対する期待が従来にも増して大きくなっており,我が国は,このような情勢下で,国の将来の発展を確保し,主要先進国の一員として国際社会への貢献を果たしていくためには,従来の科学技術の特長を生かしつつ,新たな技術革新の道を求めて,より創造的な研究開発を推進することが求められている。

このような研究開発には長い期間と多くの困難が伴うことから,国民のより一層の理解と協力を得つつ,今後,国全体の英知を結集して新しい時代を創る科学技術の振興に取り組んでいくことが必要である。


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