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第1部   創造性豊かな科学技術を求めて
第2章  自主技術開発への展開
第4節  国際協力の展開
2.  我が国の事例



(1) 概況

我が国の科学技術分野の国際協力は,昭和20年代後半,我が国の生産が戦前の規模に回復した時期に入って本格化した。この時代の科学技術分野の国際協力は,主要先進国との間に締結された文化協定等の枠組の下に,人材の交換,文献の交換の形で行われ,欧米諸国の知識や成果の吸収に貢献した。

その後,昭和30年代の後半から,・科学技術分野の協力を目的とする枠組が徐々に形成されてきた。国の試験研究機関や大学等が実施主体となって行っている二国間協力について見ると, 第1-2-75図 に示すように,科学技術協力推進のための政府間協定等の枠組が現在に至るまで増加を続けている。

第1-2-75図 我が国の二国間科学技術協力の枠組の件数(累計)

この間,昭和40年代終盤以降,石油危機に象徴される世界的な規模の諸問題の発生に伴い,代替エネルギー開発,食糧の確保,環境保全等の課題が人類共通の課題として強く認識されるようになってきている。これらの課題の解決のためには,科学技術の果たすべき役割が極めて大きく,しかも,将来の重要なエネルギー源として開発が進められている核融合のように,科学技術上の困難が多く一国の研究開発能力では負担しきれないような研究開発課題も増加してきている。

こうした状況の変化及び我が国の科学技術水準が急速に向上してきたこととも関連して,昭和50年前後からは科学技術分野の協力を目的とする包括的な政府間協定が相次いで締結された。その中には,後で述べるエネルギー及び非エネルギーの両分野における日米協定のように,共同プロジェクトの実施を前提とするものも含まれている。


(2) 日米間の協力

米国は,政治・経済面で我が国と最も緊密な国の一つであると同時に,科学技術面では世界の最先進国であるため,我が国の科学技術分野の国際協力にとって最も重要な相手国である。このため, 第1-2-76表 に示すように日米間には,他国との間には例を見ない,多様な協力の枠組が設けられている。

第1-2-76表 科学技術分野の日米協力の枠組

日米両国首脳の合意に基づいて,昭和36年に設置された科学協力に関する日米委員会は,我が国の科学技術分野の国際協力の枠組としては最も古いものである。同委員会の活動は,科学教育,科学技術情報,生物科学・農学及び医学といった比較的学術的な領域を中心に協力研究,科学者の交流,セミナーの開催等の形で進められている。一方,天然資源の開発利用に関する日米会議(UJNR)は,昭和39年の第3回日米貿易経済合同委員会での合意に基づいて設置され,水技術,牧草種子等17の専門部会の下で国の試験研究機関を実施主体として,行政目的に対応した協力を展開している。

上記の二つの委員会により,日米間の科学技術協力の基礎固めが行われてきたが,UJNRにおいて,昭和54年から耐風・耐震構造専門部会の下に,実物大建造物の耐震実験を行っている等協力形態は多様化しつつある。また,日米間の協力の多様化に伴って近年共同プロジェクトの実施を指向したエネルギー研究開発に関する日米協定,非エネルギー分野の日米科学技術研究開発協力協定の二つの協定が締結された。これらの協定に基づく協力は, 第1-2-77表 に示すように我が国の科学技術分野の国際協力としては予算的規模の最も大きいものと言える。

このうちエネルギー研究開発に関する日米協定の下では,核融合,石炭転換,光合成による太陽エネルギー転換,地熱エネルギー,高エネルギー物理学等の共同研究が行われている。一方,非エネルギー分野の日米科学技術研究開発協力協定は,エネルギー分野の協力を補完するものとして締結され,現在,宇宙利用及び基礎物理の分野で共同研究が行われているほか,広い分野で情報交換等の協力が行われている。これらの協力は,1)我が国の科学技術水準がこの時期に急速に向上したこと,2)米国がこうした形態の二国間協力を一層重視するようになったこと,の二つの要因を背景として,3)個々の協力課題について,両国の問題意識が一致したことによると考えられる。

第1-2-77表 エネルギー及び非エネルギー分野の日米協力予算の推移 (プロジェクト経費のみ)

このように,科学技術の国際協力,特に共同プロジェクトを円滑に運営するためには,1)関係国のニーズが一致することが前提となるのは言うまでもないが,とりわけ,2)当該分野において関係国の科学技術能力が相互補完的であることが重要である。

この意味で,核融合分野の日米協力は象徴的な事例と言える。昭和50年頃,我が国の研究機関が米国の大学等に研究協力を要望した際には,日本側の研究水準が米国と比べて低かったこともあって,具体化に至らなかった。

その後,日本側の研究開発の進展によって研究水準が向上するとともに,米国側のダブレットーIII研究装置の完成に必要な資金が不足していた等の事情もあって,共同研究の機運が高まり,昭和55年からの共同研究に結びついたものである。

以上諸外国と我が国における科学技術分野の国際協力のいくつかの事例について見てきた。これらの協力は,研究開発資源の利用効率を高め,各国の科学技術水準の向上に貢献する。また,一国のみで取り組むには規模の過大な研究開発や,気象や地球環境に関係する課題等,本来国際協力が望ましい研究分野も少なくないであろう。こうした意味で,科学技術分野の国際協力の果たすべき役割は,今後とも一層大きくなっていくと考えられる。そして,今後,協力の規模や件数が大きくなるにつれて,各国のニーズを適確に把握し,個々の参加国が高い科学技術水準及び明確な目的意識をもち,確固たる責任体制によって支えられていく必要性が増大してくる。

我が国としても,科学技術分野の国際協力の重要性を十分認識し,我が国の科学技術能力を活用し主体性をもって積極的に取り組んでいく必要がある。これがひいては,我が国自身の自主技術開発能力の向上にも結びついていくのである。


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