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第1部   創造性豊かな科学技術を求めて
第2章  自主技術開発への展開
第4節  国際協力の展開
1.  諸外国の事例



(1) 欧州宇宙機関(ESA)

ヨーロッパは,技術水準の高い国々が地理的に近接しているうえに,欧州共同体(EC)の成立に象徴されるように,古くから政治的・経済的に緊密な関係が形成されている。この意味で,科学技術分野の国際協力の素地も整っており,いくつかの二国間・多国間協力が行われているほか,国際原子力機関(IAEA),OECDの国際エネルギー機関(IEA)や同じく原子力機関(NEA)等ヨーロッパに本拠を置く国際機関を通じても,多くの科学技術協力活動が行われている。

欧州宇宙機関(ESA)は,ロケット及び人工衛星を開発し,ヨーロッパの宇宙産業の競争力を強化する目的で1975年に発足した国際機関である。ESAにはルクセンブルク及びギリシアを除くEC8か国と,スペイン,スウェーデン及びスイスの計11か国が加盟している。

ESAは,ともに1962年に設立された欧州ロケット開発機構(ELDO)及び人工衛星の開発及び宇宙研究を目的とする欧州宇宙研究機構(ESRO)の二つの国際機関を,発展的に解消して設立された。このうちELDOは,イギリス,フランス等7か国の参加により人工衛星打上げ用ロケットの自主開発を進めたが,ヨーロッパI型及び同II型の打上げ失敗により1973年に事実上解散した。ESAはこのELDO及びESROの開発計画を引き継ぐ目的で設立されたものである。

ESAは現在 第1-2-73表 に示すプロジェクトの研究開発を推進しているが,1979年及び81年のアリアン・ロケットの成功に表れているように,科学技術上の成果も順調にあがっていると見られる。ESAではこの成果に力を得て,ESA加盟国以外の国を含む各国の人工衛星を,アリアン・ロケットで打上げる民間組織を設立した。これにより,ESAは米国,ソ連に次ぐ宇宙開発分野の第三勢力として名乗りをあげたと言えるだろう。ESAの見積りによれば,今後10年間に世界中で打上げが予想される約200個の静止衛星のうち40〜50個を打上げたいとしている。

ここで,ESAの研究開発の運営方法について見てみよう。ESAにおいては,ESA理事会が政策決定機関として全体の調整を図り,ロケットについては,ELDO当時は,1段目がイギリス,2段目がフランス,3段目が西ドイツという分担で開発・製作を行っていたが,ESAとなってからは,フランスの国立宇宙研究センター(CNES)が一貫して開発を行う体制をとっている。衛星については,衛星ごとに各国の企業が開発に参加するがその中から主契約者を決め,主契約者が責任をもつ体制をとっている。また,ESAの資金は加盟国の拠出金によってまかなわれている。加盟国は主に国家収入に基づき,義務的に科学及び計画維持に必要な基礎活動に分担金を負担している。一方,応用計画については,各国の関心の度合いに応じて,分担金を負担している。

第1-2-73表 ESAのプロジェクト


(2) 国際エネルギー機関(IEA)

次に,先進国間の国際機関を通じる研究開発協力の事例として,国際エネルギー機関(IEA)のプロジェクトを取り上げる。IEAは,経済協力開発機構(OECD)の一機関として,石油危機後の1974年に設立された。設立の目的は,石油消費先進国が協力して石油供給の安定化を図るとともに,石油供給制限等の事態に対処することであり,OECD加盟24か国中,フランス,フィンランド及びアイスランドを除く21か国とECが加盟している。

IEAは,この目的に沿って,1975年にエネルギー研究開発委員会(CRD)を設け,省エネルギーや石油代替エネルギーに関する国際共同研究を実施している。CRDでは1982年9月末現在41の協定の下に,47の共同プロジェクトを実施している。これらのプロジェクトは,おおむね次のような手順で設定される。1)加盟国の一つがCRDに対しプロジェクトを提案する,2)CRDを通じて実施協定を準備する,3)同協定の案文が各国のOECD代表部を通じて加盟各国に配布され,参加の呼び掛けがなされる,4)各国政府は参加の妥当性を検討する,5)各国は参加を決定した場合にはCRDにその旨伝えるとともに,適切な機関を参加主体に指定する,6)2か国以上の参加意思表明及び実施協定への参加主体の署名により,CRDプロジェクトが成立する。このようにして設定されたプロジェクトは,参加国の代表者で構成される執行委員会の管理の下に置かれる。

プロジェクト運営上の一つの特徴は,特定の国(複数国の場合もある)が運営責任のかなりの部分を負うことである。多くの場合,その国の政府が指名した運営機関がプロジェクトを実質的に運営する。一方,経費はIEAの予算からではなく,当該プロジェクトの参加国が負担する。その方法としては,1)事業分担方式-参加国がプロジェクトの特定部分をそれぞれ分担し,自らの費用でその部分の研究開発を実施する方式,2)共同資金拠出方式-参加各国が資金を拠出して,運営機関の管理下で共同研究開発を実施する方式,及び3)これらの2方式の中間的な方式,のどれかによっている場合が多い。

このようなCRDのプロジェクト運営方法は,1)各プロジェクトに強い関心をもつ国だけが参加するため効率的であり,2)特定の運営機関が執行委員会の管理の下,責任をもって運営するため,機動的かつ柔軟である,という特徴をもっている。我が国は,22協定,22プロジェクトに参加しており,そのうち 第1-2-74表 に掲げる三つのプロジェクトについては運営機関を担当している。この3プロジェクトのうち,波力変換は,IEAのプロジェクトでも比較的数の少ない,単一の実験施設を用いた共同研究である。昭和54年度に実施された波力発電装置「海明」の実海域実験においては,米国,イギリス,カナダ及びアイルランドが資金を拠出し,我が国と共同研究を行った。特にイギリスは,独自の設計に基づく波力発電タービンを製作し,海明に搭載している。本実験では,波力発電の可能性を実証するとともに,出力の一部を陸上の一般送電系統に接続することに成功しており,現在この成果を踏まえ,より効率的な発電システムの検討を行っている。

以上述べたように,ESA及びIEAのCRDは,ともに共同プロジェクトの実施に当たって,1)プロジェクト運営責任の所在を明確にすること,2)参加国の関心とニーズに適合させること,及び3)参加国の主体性を確保すること等に力を注いでいること,が分かる。こうしたことが,個々のプロジェクト運営の効率化,ひいては計画の成功をもたらす条件であることがうかがえる。


(3) 科学技術分野の国際協力に臨む各国の対応

ここでは,主要先進国がどのような考え方の下に,科学技術分野の国際協力を行っているかについて,米国,フランス両国を例に取り上げて見てみよう。

米国は,1982年3月に,科学技術分野の国際協力に関する大統領報告を行った。この中で,米国は無限の資源をもっているわけではなく,世界中の科学技術の知識を独占していくことはできない旨表明し,西欧先進国,カナダ及び日本を主な相手国とする国際協力を重視していくとの方向を示した。今後の米国の科学技術分野の国際協力は,1)技術水準の高い西欧先進国及び日本を主な相手とし,2)直接的な利益還元が期待できる二国間の大規模な共同研究開発に重点が置かれていくものと推定できる。他方,国際機関を通じる科学技術分野の国際協力のための予算は,既に削減されつつある。

1-2-74表 日本が運営機関を担当しているCRDプロジェクト

フランスは,ミッテラン政権成立後,科学技術水準を向上させるための基本計画の策定を進めてきたが,1982年7月「科学技術振興法」として明文化した。この中で今後フランスは,世界におけるフランスの文化・科学技術面でのイメージを向上させ,フランスの科学技術水準を維持するため,科学技術分野の国際協力を重視していくとしている。協力の相手国としては,まずヨーロッパ諸国を挙げ,開発途上国との関係も重視することとしている。また,その前提条件として,1)フランスの自主性を確保すること,2)フランスと相手国との能力の相補性,及び3)フランスの市場の拡大を挙げている。

以上のことから,米国,フランス両国は今後,自らの主体性を保ちつつ科学技術水準の向上を目指し,多様な分野での科学技術国際協力を展開していくと考えられよう。


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