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第1部   創造性豊かな科学技術を求めて
第2章  自主技術開発への展開
第3節  先導的・基盤的科学技術分野における自主技術開発の展開
7.  情報・電子技術


情報・電子技術は,高度化,多様化する社会において国民生活の向上,社会・経済の発展を支える基盤的技術として重要な役割を果たしており,その範囲も多岐にわたっている。ここでは多種,多様な情報・電子技術のうちで将来の中心的な情報伝送手段になると考えられている光通信を主とする光技術及び情報処理分野における基盤的技術である半導体等の素子技術の動向について見ることにする。


光技術

光を対象とする技術は,従来,望遠鏡,顕微鏡,カメラ等の光学あるいは各種の照明技術として発展してきたが,1960年のレーザの発明を契機として急速に発展してきた。レーザをはじめとする光技術は, 第1-2-60図 に示すように,工業,医療,通信,計測・制御など広範な分野に適用が可能であり,これらのうちで,穴あけ,切断等の工作加工,レーザメスなどの医療,干渉計測や土木工事の直線基準などの分野における応用が早くから実用化されている。

近年ではこれらの応用技術の高度化とともに光技術の核融合への応用,光コンピュータや光ディスクなど情報処理分野への応用,計測・制御分野への応用,通信分野への応用などの研究開発が活発化している。

これらの新しい光技術のうちで,最も注目を集めているものの一つが通信分野への応用であろう。光ファイバを伝送媒体として用いる光通信は,細く軽く低損失な伝送路により広帯域,大容量の情報伝送ができ,かつ,誘導障害を受けないなど,多くの利点を有し,さらに光ファイバの主原料である石英は地球上に大量に存在し,省資源効果も高い。光通信は,これらの特徴を生かして 第1-2-61表 に示すような分野に適用される。

このように多くの利点を有する光通信は,今後の情報化社会を大きく変革するものと期待されており, 第1-2-62表 に示すように世界各国で積極的に実験が行われている。また,最近ではアルゼンチン,香港が大規模な光通信システムを我が国から導入するなど欧米先進国のみならず開発途上国においても国内公衆通信に光通信システムを導入する動きが目立っている。

第1-2-60図 光技術の適用分野

我が国においては,雷,高圧送電線などによる誘導障害を受けないという特徴を生かして電力会社の通信システムへの実利用が比較的早期から行われており,国内公衆通信については,昭和59年度までに北海道から九州までを結ぶ幹線通信系を完成することを目途に日本電信電話公社(電電公社)により全国各地で現場試験及び商用試験が行われている。また,中継区間を従来の海底ケーブルに比べて飛躍的に長くし,大容量の伝送が可能であることから,電電公社及び国際電信電話株式会社(KDD)によって,光海底ケーブルの研究開発も活発に行われている。

第1-2-61表 光通信の適用分野

第1-2-62表 光ファイバ通信の実験状況 (1976〜1979年)

昭和56年度前半までに国内で導入された光通信システム数は300を超え,その導入分野も 第1-2-63図 に示すように多岐にわたっている。

光通信システムは,基本的に電気信号を光に変換して送出する発光素子,光を伝送する媒体としての光ファイバ及び受信した光を電気信号に変換する受光素子の三つの技術要素から構成されている。

まず,光ファイバについては,低損失かつ安定に光信号を伝送することが要求される。光ファイバに関する研究開発の経緯は, 第1-2-64表 に示すとおりであり,光ファイバそのものは1950年代から医療用などに用いられていたが,その伝送損失が非常に大きく,通信に使用できるとは考えられていなかった。ところが,1960年代に低損失の光ファイバの提案がなされ,光通信への利用の可能性が高まり,米国を中心に各国で低損失の光ファイバの実現を目指す研究開発が開始された。その結果,1970年に米国のガラス会社がCVD法(化学気相沈積法)という製法により損失が20dB/Km(1Km当たりの光の透過率が10%。)の光ファイバの製造に成功し,これにより光ファイバを用いた通信方法が現実的なものになった。その後,各国において光ファイバの伝送損失を低減化するための研究開発が急速に進展した。

第1-2-63図 分野別の光通信システム比率

第1-2-64表 光ファイバ及び半導体レーザ研究開発略年表

我が国においては,当初米国に遅れをとっていたものの,電電公社を中心に研究開発が積極的に行われた結果, 第1-2-65図 に示すように1976年以降は電電公社の開発した光ファイバが世界で最も低損失のものになっており,1979年には石英ファイバの理論限界値に近い0.2dB/km(1km当たりの光の透過率が約97.7%)という極低損失の光ファイバが開発され,石英ファイバの低損失化競争に終止符が打たれた。また,電電公社は,VAD法(気相軸付け法)という光ファイバの新しい製造法を開発した。このVAD法は,経済性に富み,生産性に優れているため,世界中から注目を集めている。

石英ファイバに関しては,上に述べたようにその低損失化がほぼ理論限界に達しているが,フッ化物ガラスなど新しい材料を用いることによって損失を0.OldB/km(1km当たりの光の透過率が約99.9%)以下にすることが可能であると期待されており,特に中継距離を長くすることによる利点が大きい海底ケーブルへの適用を目指して研究が行われている。

第1-2-65図 光ファイバ損失値の低減化推移

光通信における発光素子は,電気信号を忠実にかつ効率良く,また,光ファイバの伝送損失ができるだけ低くなる波長帯の光信号に変換する必要がある。このような素子としては,直接電気信号を光信号に変換できる発光ダイオード(LED)及び半導体レーザが適している。LEDは半導体レーザと比較すると高速伝送に適していないが,技術的にはほぼ確立しており,低価格であるので,中・短距離の小・中容量の光通信システムに用いられている。ここでは,大容量伝送には不可欠であり,積極的に研究開発が進められている半導体レーザの技術動向を見ることにしよう。

半導体レーザについては, 第1-2-64表 に示すとおり,1957年に我が国において提案が行われ,1970年に低損失光ファイバの開発と時を同じくして日本,米国及びソ連でガリウム・アルミニウム砒素(GaAlAs)という化合物半導体を用いた室温での連続レーザ発振に成功した。当時の光ファイバは,0.85μm(1μm(ミクロン)は100万分の1m)帯で損失が低くなっており,この半導体レーザの発振波長がこれに一致したため,光通信用の発光素子として注目され,研究開発が積極的に進められた。

これ以降,光ファイバの理論的低損失域が1.2〜1.6μm帯にあることが判明しこのような波長帯のレーザ光を発振する半導体材料の研究開発が半導体レーザ自体の信頼性の向上に関する研究開発と並行して進められた。この結果,0.85μm帯及び1.3μm帯のレーザ光を発振する半導体レーザは,室温での連続発振寿命が10万時間以上と実用上十分な性能のものが得られている。

石英ファイバの伝送損失が最も低くなる1.55μm帯のレーザ光を発振する半導体レーザーについても,1979年に日本及び米国で連続発振に成功するなど,我が国は米国と並んで世界をリードする形で半導体レーザの研究開発を進めている。

受光素子は,弱い光信号でも元の電気信号に再生できることが要求される。受光素子としては,PINフォトダイオード,アバランシェ・フォトダイオード(APD)などがあり,APDが高感度,低雑音,高速であるため,高性能なシステムを実現するのに有利である。

APDではシリコンAPD(Si-APD)とゲルマニウムAPD(Ge-APD)が実用化されており,技術的にも確立されている。このうちでは,シリコンAPDの方が低雑音であり高性能であるが,光ファイバで低損失域である長波長帯(1.2〜1.6μm帯)では使用できないため,短波長帯(0.85μm帯)で使用され,長波長帯では雑音が比較的大きいもののゲルマニウムAPDが使用されている。

このため,長波長帯において短波長帯におけるシリコンAPDと同等の性能を有する受光素子の開発が課題になっている。現在,PINフォトダイオードと増幅素子である電界効果トランジスタ(FET)を集積化する方向及び新しい半導体材料によるAPDを採用する方向の二つの流れがある。長波長帯における各種受光素子の性能は 第1-2-66図 のとおりである。同図において,同一の伝送速度に対して受光電力の低い方がより弱い光信号でも電気信号に変換することができるより高性能の素子であることを示している。

第1-2-66図 長波長帯における各種受光素子の 伝送速度に対する受光電力

欧米においては,技術的に比較的容易であるインジウム・ガリウム砒素(InGaAs)などの化合物半導体によるPINフォトダイオードとガリウム砒素FETの集積化に重点が置かれている。一方,我が国では数百Mbit/sの高速伝送を目標にしており,PINフォトダイオードとFETの集積化は 第1-2-66図 から明らかのようにこのような用途には適していないため,理論的に短波長帯におけるシリコンAPDとほぼ同等の性能を有する化合物半導体による新しいAPDの研究開発が重点的に行われている。

光通信システムは,以上に述べてきたような光ファイバ技術,発光素子技術,受光素子技術を基本にして成り立っており,光通信技術の総合的な水準を見ることができる。ここでは,各国における公衆通信用の光通信システムによって技術水準を見ることとする。

第1-2-67表 1980年における各国の光通信システム (現場試験又は商用試験の代表例)

光通信システムについては,世界的に実用段階に入りつつあるが, 第1-2-67表 から明らかなように光ファイバの低損失域である1.3μm帯の技術が現場試験又は商用試験段階に達しているのは我が国のみであり,最長中継間隔も長く,長波長帯の利点がよく現れている。また,400Mbit/sと我が国のシステムが最高速の伝送を達成している。

以上で見てきたように我が国は世界最高水準の光通信技術を有している。

今後は,石英ファイバの損失が最も低くなる1.55μm帯を用いる光通信システムの実用化,発光素子,受光素子,中継器関連の光回路の集積化が研究開発の課題である。


素子技術

1960年代後半から量産実用化されたIC(集積回路)は,微細加工技術等の研究開発が積極的に推進された結果, 第1-2-68図 に見られるように急速にその集積度を増し,今や超LSI(超大規模集積回路)の時代に入っている。

この結果,性能,信頼性が向上し,小型,軽量化が図られ,しかも価格が低下し,コンピュータが高性能化,小型化したばかりでなく,電子卓上計算機,デジタル腕時計,オフィスオートメーション,産業用ロボット等,広範囲に応用されており,我々の日常生活に身近なものにまでその影響が及んでいる。

第1-2-68図 ICの高集積度化の変遷

このように半導体技術は,通信・情報分野のみならず広範な産業における技術革新を支える基盤的技術であり,特に超LSIについては,我が国において超LSI研究開発計画が実施されたのをはじめとして,米国におけるVHSI(超高速集積回路)計画のほか,西ドイツ,イギリス,フランスなどで研究開発が国家的規模で進められている。

今後の新しい素子の研究開発の方向は,大きく三つに分けることができる。すなわち,より多くの機能を組み込む高集積度化,素子の動作速度を速める高速化,そしてどのような厳しい環境下でも安定に動作するための耐環境強化である。


(高集積度化)

ICの高集積度化は,一つの素子の中に多くの機能を詰め込むことを可能とし,あわせて動作速度を速め,その信頼性を向上させ,さらに機能当たりのコストを大幅に低下させてきた。

高集積度化を図る上で微細加工技術は最も基本的な技術であり, 第1-2-69図 に示されるように最小線幅で代表される微細加工技術の進歩に伴ってICの集積度が向上してきている。

微細加工には,これまで紫外線を用いる光露光方式が用いられてきたが,256kbit以上のRAM(書き込み,読み出し自在の記憶素子)のような超LSIでは,この限界を超える新しい微細加工技術の開発が必要となる。このため,昭和51年に開始された我が国の超LSI研究開発計画では,電子ビーム露光技術に研究開発の重点を置き,最小線幅1μm以下を達成できる電子ビーム露光装置を開発した。また,電電公社も同様の性能を有する装置を開発し,これを用いて世界に先駆けて256KbitRAMの開発に成功した。

更に微細な加工を行うための集束イオンビーム等による微細加工技術の研究も進められており,微細加工技術は現在も進歩し続けているが,物理的な制約もあって1990年代には限界に近づくとの見方が一般的になっている。こうした状況を打破し,更に高集積度化を図るための種々の研究開発が行われているが,中でも従来平面的であったICを多層化する方法が有力視されている。

第1-2-69図 微細加工の歩み

このICの多層化は古くからその発想があり,これによってICの超高集積度化,大量の情報の高速処理が可能になり,また,センサ,信号変換処理,メモリ等多くの機能を一つのICに集積することも可能になるものの,平面素子の上に新たに素子を形成するための結晶成長を制御する技術が隘路となっていた。しかし,近年米国においてレーザを利用する新しい手法が開発され,この多層化の研究が活発に行われるようになってきている。

米国では大学を中心に二層構造のCMOS-IC(相補型MOS-IC)の試作に成功するなどかなりの成果をあげている。一方,我が国では,ICの多層化が先端的基盤的技術であり,その開発までに長期間を要することから,次世代産業基盤技術研究開発制度において「三次元回路素子」として取り上げられ,ようやく本格的な研究開発が始められたところである。


(高速化)

科学技術の進歩に伴って,人工衛星から送られてくる画像情報の処理,核融合のプラズマ状態のシミュレーション,気象解析,航空機設計における空気力学計算など,極めて膨大な量の計算を必要とする分野が増大しており,現在の大型コンピュータの約1,000倍の処理速度を有するコンピュータが必要とされるようになってきている。このためには,多数個の基本プロセッサを用いて同時並行的に高速演算処理を行う並列処理方式とともに新しい高速素子の開発が必要不可欠である。

素子の高速化はその高集積度化と密接な関係を有している。すなわち,集積度が高まると回路の大きさも小さくなるため,回路内を電気信号が流れる距離が縮まり,結果的に高速化が達成できる。しかし,現状のシリコンを用いたICの集積度には限界があることから,原理的にシリコン素子に比べて性能の飛躍的向上が期待できるジョセフソン素子(JJ素子),ガリウム砒素素子(GaAs素子)及び高電子移動度トランジスタ素子(HEMT素子)が注目されている。このため昭和56年度から工業技術院に大型プロジェクトとして開始された「科学技術用高速計算システム」においてもこれらの高速素子の研究開発が並列処理方式の研究開発と並んで主題として取り上げられている。これらの新高速素子の主な特徴は 第1-2-70表 に,各種論理素子の消費電力と遅延時間の関係は 第1-2-71図 に示すとおりである。

第1-2-70表 新高速素子の特徴

第1-2-71図 各種論理素子の消費電力と遅延時間

ジョセフソン素子は,これまでの半導体素子とは全く動作原理の異なる超電導現象を利用する素子であり,これまでの技術からの飛躍が大きく,極低温技術,材料技術,回路技術,微細加工技術,実装方法など解決すべき研究開発課題も多い。一方, 第1-2-71図 から明らかなように消費電力が著しく小さいため,高密度に実装することが可能になり,配線間の遅延時間を小さくすることができるので,素子自体の高速性とあわせて総合的に極めて優れた特性を示し,超高速コンピュータへの適用が注目されるようになった。

米国は早くからジョセフソン素子の研究開発を開始し,素子自体はもとより,集積技術,実装技術など幅広い研究開発を積極的に行っており,16kbit RAMの設計とそれを模擬した2kbitRAMの試作を行うなどの成果をあげており,世界をリードしている。

我が国においては,米国に遅れてジョセフソン素子の研究開発に着手したが,精密計測分野への応用を中心に実用化が進められ,昭和52年からは電圧の国家標準としてジョセフソン素子を用いる方法が採用されている。また,生産性に優れたこれまでと異なる構造の純平面型ジョセフソン素子の開発や世界最高水準の動作速度を有する論理素子の開発が行われるなど,積極的な研究開発による成果も生まれている。このように我が国も実力を蓄積しつつあるが,総合的には依然として米国に遅れをとっているものと見られている。

ジョセフソン素子については,国際的に見ても理想的な素子材料などの基礎技術すら確立したとは言えない段階にあり,今後も基礎研究を中心に材料から実装に至る幅広い研究開発を積極的に進める必要がある。

ガリウム砒素素子は, 第1-2-71図 から明らかなように,性能面ではジョセフソン素子に劣るものの,室温で動作し,周辺回路との接続も比較的容易であり,超高速コンピュータに用いる素子の有力候補の一つになっている。

FETなど単体素子としては,衛星通信用地球局の低雑音増幅部等に実用化されており,この面では日本のガリウム砒素素子技術は世界の最高水準にある。このような単体素子の開発が一段落した昭和53年頃から,これまでに培われた半導体における技術的蓄積を背景に,ガリウム砒素素子の集積技術の研究開発が盛んに行われるようになってきた。

化合物半導体であるガリウム砒素素子は,材料の純度を高くすることがシリコンと比較すると困難であり,不純物濃度及び導電層の厚さを高精度に制御すること高温に弱いガリウム砒素に適した加工技術の確立が大規模集積化の研究開発課題になっている。

我が国では工業技術院電子技術総合研究所,電電公社,主要企業等で研究開発が進められており,高速でかつ低消費電力の大規模集積化に適すると見られる論理回路が発表されているほか,MSI(中規模集積回路)規模の試作がいくつか行われるなどかなりの成果を得ている。米国では既にLSI(大規模集積回路)規模の試作が行われているが,我が国においても最近電電公社によって1kbit RAMの試作に成功するなど,急速に米国に追いつきつつあるものと見られている。

HEMT素子は,アルミニウム・ガリウム砒素と高純度のガリウム砒素という2種の化合物半導体の積層構造(ヘテロ接合)を利用したFETの1種である。このような構造にすることによって,電子移動度を高めることができ,この効果は 第1-2-72表 に示すように冷却することによって特に顕著になる。このような電子移動度の増大効果は,1978年に米国で実験的に確められたものであり,HEMT素子は,我が国でこの原理を半導体素子として結晶化させた技術である。

第1-2-72表 各素子の電子移動度の比較

SSI(小規模集積回路)規模のHEMT素子を用いた最近の我が国の実験から,液体窒素温度(約-196°C)に冷却した場合,ジョセフソン素子に迫る高速動作が確認されている。

HEMT素子は,極低温とは言うもののジョセフソン素子の動作温度よりはるかに高い液体窒素温度で高速動作をし,しかも常温でも使用可能である,ことから,超高速コンピュータをはじめ,広い分野への適用が期待されている。

HEMT素子は,ようやく高速デバイスとしての動作原理が確認された段階であり,今後超LSI規模の集積回路を開発する上で,結晶成長技術,回路技術をはじめ多くの課題を抱えており,積極的な研究開発が進められている。

このほか,完全結晶素子,超格子素子などの新しい素子も,将来の超高速,高性能素子として注目されている。我が国で提案された静電誘導トランジスタ(SIT)は,完全結晶素子の一種で高速,大電力など多くの優れた特性を有し,国際的にも注目を集めている。また,超格子素子は,従来の素子の限界を超えた超高速動作をするものと期待されており,海外では米国において活発な研究開発が進められている。我が国においては,創造科学技術推進制度において「完全結晶」が,また,次世代産業基盤技術研究開発制度において「超格子素子」が取り上げられ,本格的な研究開発が進められている。


(耐環境強化)

一般に普及している半導体素子は,比較的穏やかな環境下での使用を想定しているが,近年,宇宙空間,原子炉,自動車・航空機等の移動体などの厳しい環境の下でもコンピュータをはじめとする電子機器を使用する必要性が高まっている。このような用途には,放射線,熱,機械的衝撃等に対する耐環境特性を高めた特別な素子が必要になる。

こうした耐環境強化素子の研究開発は,従来宇宙開発用や軍需用に様々な素子の開発を行ってきた米国が大きく先行しており,現在進められているVHSI計画においても厳しい耐放射線及び耐温度特性が達成目標のーつになっている。

一方,我が国においては,次世代産業基盤技術研究開発制度において「耐環境強化素子」が取り上げられ,本格的な研究開発が開始されたところである。この計画では,シリコン素子による耐機械的衝撃性を高めるとともに,人工衛星搭載用として十分な耐放射線性と耐熱性を有するマイクロコンピュータに相当する集積度を有する素子の開発を第一の目標としている。また,高い耐放射線性をもつ原子炉用のガリウム砒素素子,自動車のエンジン周辺やプラント等において求められる耐熱性を有する炭化ケイ素(SiC)素子などについても,広範で総合的な研究開発が行われることになっている。

半導体等の素子技術のうち,シリコン半導体の超LSI化に代表される既存の技術の改良又は高度化については,我が国の技術が世界最高水準にあるものの,将来の新しい素子については,総合的に見ると米国に遅れをとっているのが現状であろう。しかしながら,既に述べたように我が国で生まれた創造的な技術の芽もいくつか見られ,これらを含めて創造科学技術推進制度,次世代産業基盤技術研究開発制度などによって積極的な研究開発が行われ始めている。


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