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第1部   世界の中で
第4章  我が国科学技術の今後の課題
  むすび


戦後の我が国の科学技術の発展はどのようなものであったか,終戦当時,技術面で大きな遅れを持っていた我が国が先進国にいかにキャッチ・アッフしていったかが前回白書(昭和54年度科学技術白書:科学技術発展の軌跡と展望)の主たるテーマであった。

それでは,現在我が国の科学技術は,世界の中でどのような位置にいるのであろうか,それが今回のメイン・テーマである。

前回がいわば座標の縦軸を求めたのに対し,今回はその横軸を求めるものであり,その交点に我が国科学技術の現在の姿がある。

本白書第1部では,国際比較を行うに当り,考えられる科学技術関連の指標をできるだけ多く用い,関連づけ,分り易く表現することに意を用いた。

また先進各国の科学技術施策の紹介や各国が特に力を入れようとしている分野での比較も試みた。

日本の工業製品の優秀さはすでに定評のあるところであり,これが,我が国の工場の生産管理,品質管理に多く由来していることも今や定説となっているようである。特に昨年は日本の優れた生産方式が海外でも大きな話題となり,欧米から多くの人々がこれを学びにやってきた。また,生産ラインヘのロボットの導入についても,我が国は世界を大きくリードしていると言われる。これらを国際比較できる確たるデータは無いものの,技術集約製品の輸出状況などからみて,多くの製品の生産技術面では,主要先進国に追いつき,あるいは追い越したということができよう。

しかし,本文で分析したように,あるいは多くの識者からすでに指摘されているように,革新的,独創的な科学技術の面ではまだ欧米先進国にたち遅れているようであるし,これを産み出していくポテンシャルにも未だしの感がある。

原理,原則的なものは導入に頼り,これを改良,洗練させて行くというやり方は必ずしも我が国だけのものではない。かつてヨーロッパやアメリカにも見られた現象で,これは追いかけるものの常ということもできよう。

しかし,すでに自由世界第2の経済大国になった現在,いつまでも導入技術に大きく依存して行くことは,国際的にも批判を買うことにもなろう。また,今や我が国は国際社会における先進国の一つとして,科学技術の面においても進んで人類社会が直面する問題の解決に大きく貢献してゆくことが求められている。

このような状況に対処して,今後我が国は,独創性に富んだ自主技術の開発を主体として科学技術振興に全力を傾注して行くことが必要であろう。

華々しい技術革新が相ついだ1950年代,60年代のあとを受けた1970年代には,新しい画期的な技術は当分出現しないだろうという説も有力であった。世界各国で研究開発投資にも停滞が見られた。一方,オイル・ショック以後,経済の低迷の中で,これを救うものとしての科学技術の重要性が再認識されてもきた。

1980年代に入るにつれ,社会経済の大きな変革をまき込む革新が言われるようになり,人類史上,1万年前の農業の出現,2世紀前の産業革命に匹敵する「第3の波」の到来を告げる説も出て来た。そして,この変革にはエレクトロニクスをはじめとする科学技術の進歩が大きくかかわりあうとされている。

世界各国とも,1980年代を迎えて,科学技術のあり方を改めて考えようという気運が出ているように見える。

ここ数年,国民所得の2.1%前後が続いた我が国の研究開発投資は,昭和54年度に至り,2.29%へと上昇し当面の目標である2.5%へ一気に近づいた。

また,昨55年の就職戦線では,久し振りに理工系学生の求人ブームとなった。そして年の特に後半から産業界,政界での科学技術に対する振興気運が大きく盛り上って来た。その端的な表れが本文で紹介した科学技術関係閣僚連絡会議である。昭和56年1月第94国会(常会)冒頭の首相の施政方針演説の中で,科学技術の振興は重要な柱の一つとして取り上げられ,昭和56年を「科学技術立国元年」として科学技術振興施策を充実強化しようとの考え方も出されるようになってきた。また,昭和56年度の国の一般会計予算一般歳出の伸びは前年対比4.3%に止まったが,科学技術関係予算は8.2%の増となった。これらに対応して首相の諮問機関である科学技術会議も年初から活発な動きを示しつつある。また,昭和56年4月には,我が国が申請していた筑波研究学園都市における国際科学技術博覧会の開催(昭和60年3月〜同年9月)が国際的に承認されたが同博覧会の開催によって科学技術の重要性についての国民の認識を深めることになることが期待される。

国土が狭く,資源に乏しい我が国が世界の中で生きて行くために,また世界に貢献していくために,科学技術が重要であるという主張は別に今始まった訳ではない。しかし前述の一連の動きは,一つの新しいうねりの始まりを思わせる。

このうねりを長く真に大きなものとして行くためには,政府の旧に倍する努力とこれに対する国民の理解と協力が必要である。


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