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第1部   世界の中で
第3章  重要研究開発の国際比較
第1節  エネルギー関連技術
1.  原子力


今日まで世界各国に建設された商業用原子炉の主流は軽水炉 注) であって,主としてウラン235の熱中性子による核分裂のエネルギーを利用している。ところが,天然に存在するウランの中には,ウラン235はわずか0.7%しか含まれておらず,残りの99.3%を占めるウラン238は熱中性子によっては核分裂を起こさない。現在主流となって開発されている軽水炉では,この天然ウラン中のウラン235を2〜4%に濃縮して燃料として使用しているが,残りのウラン238はほとんど有効に利用されていない。

そこで,現在世界各国において,燃料中の燃えないウラン238を燃えるプルトニウム239に変え,しかも燃やした燃料よりも多くこのプルトニウム239をつくり出すことにより,ウランの飛躍的有効利用を図る高速増殖炉が次の本命として開発が進められている。

なお,核燃料の有効利用の観点から我が国においては,高速増殖炉が実用化されるまでの間軽水炉の使用済燃料を再処理して得られるプルトニウム等を有効に利用できる新型転換炉の開発も進められている。

さらに,ウラン資源に比べて豊富に存在する重水素などを燃料とし,核分裂とは全く異なる原理である核融合反応によりエネルギーを発生させる核融合は,究極的な夢のエネルギー源として,21世紀の実用化を目指した長期的展望に立ってその研究開発が進められている。


(1) 高速増殖炉

高速増殖炉は将来,発電炉の主流を占めると考えられており,各国で開発が進められている。各国とも一般の原子炉と同様,概ね実験炉→原型炉→実証炉の3段階を経て商用大型炉へ向かうという開発方針をとっている。


注)減速材及び冷却材として普通の水(軽水)を使っている原子炉をいい,これには沸騰水型(BWR)と加圧水型(PWR)がある。アメリカ,ソ連をはじめ世界で最も多く使われている原子炉である。


1) フランス

米国や英国に比ぺて出遅れたものの,その後一貫した自主開発路線により,自由世界の中では最先端を行っており,昭和42年には実験炉ラプソディーを,昭和48年には原型炉フェニックスをそれぞれ臨界 注) にし,昭和52年には実証炉スーパーフェニックスの工事に着工し,昭和58年末臨界を目途に建設が進められている。また,西ドイツ,イタリア等と共同で開発事業を推進している。


2) 西ドイツ

昭和52年に実験炉KNK-IIが臨界に達し,昭和48年には原型炉SNR-300を着工し,昭和59年臨界を目途に現在建設中である。


3) 英国

古くから開発に力を注いでおり,昭和34年に実験炉DFRが,昭和49年には原型炉PFRがそれぞれ臨界に達しており,商用実証炉であるCDFRについては,現在概念設計中である。


4) 米国

世界で最も早く開発に着手し,基礎工学的研究開発に力を注いできたが,カーター政権下では原型炉CRBR建設の大幅な遅れなど,原型炉規模以降については開発テンポが遅く,西欧先進国に遅れを見せていたが,レーガン政権に変わり開発を促進する動きがみられる。


5) ソ連

古くから開発に着手し,昭和44年には実験炉BOR-60,昭和47年には原型炉BN-350を臨界にさせ,昭和55年2月に原型炉BN-600も臨界となり,更に大型のBN-1600の計画に着手している。


注)ウラン235が核分裂すると,2〜3個の新しい中性子が飛び出し,この中性子1個が次の核分裂を起こす。このようにして連続的に核分裂が続いていくことを核分裂の連鎖反応というが,連鎖反応が同じ割合で続けられている状態を臨界という。

原子炉では制御棒の出し入れによって原子炉を臨界状態に保つことができる。


6) 日本

昭和45年に実験炉「常陽」の建設に着手し,昭和52年には臨界に達した。

現在原型炉「もんじゅ」の建設に着手できるよう諸準備が進められている。


(2) 核融合

核融合については,トカマク方式,ミラー方式,レーザー方式 注1) 等があるが,このうち,トカマク方式は現時点において,臨界プラズマ条件 注2) 達成のため最も有望視されており,米,ソ,ヨーロッパ共同体及び日本で精力的に研究開発が行われている。また,核融合実現の次の段階である核融合炉条件の実現を目指して,国際協力による開発も進められている。


1) 諸外国

米国,ソ連,フランス等における数多くの中規模トカマク型装置によって得られたこれまでの研究成果に基づき,トカマク型装置によって臨界プラズマを実現し得るとの見通しが一般的となったため,米国,ソ連及びヨーロッパ共同体(ユーラトム)において次の段階の大型のトカマク型装置の計画又は建設が進められている。これらのうち臨界プラズマ条件の達成を目途とする計画としては,米国のTFTR,ヨーロッパ共同体のJET,ソ連のT-15などがあり,現在これらの建設が行われている。


注1)核融合反応を起こすためには数千万度以上の超高温の状態(プラズマ)をつくり出し,かつ,この状態を維持する必要があるが,このような超高温に耐えられる物質はないので,磁場または慣性力を利用した空間の中に超高温プラズマを閉込める。プラズマの閉込め方法としてトカマク,ミラーの各方式は磁場を利用する方法であり,レーザー方式は慣性力を利用する方法である。1) トカマク方式円周方向に沿って作ったプラズマの中に電流を流して,この電流によって発生する磁場の力でプラズマを閉込め,さらにプラズマを安定させるために外部から強い円周方向の磁場(トロイダル磁場)を加える方式である。3) ミラー方式トカマク方式は磁場がドーナツ状となっているが,ミラー方式は磁場の両端部が開いている方式である。3) レーザー方式レーザーにより,燃料に一瞬のうちにエネルギーを与え超高温にし,燃料外表面が外に向かって吹き出す反作用により内部を圧縮し,プラズマをつくる方式である。


注2)核融合の場合は,核融合反応に必要な超高温をつくりだすために注ぎ込むエネルギーと,核融合反応により発生するエネルギーとが等しくなる点が臨界である。このときのプラズマの温度などの条件を臨界プラズマ条件という。

第1-3-2図 世界の高速増殖炉開発状况


2) 日本

我が国においては,昭和50年核融合の研究開発が「原子力特別研究開発計画(ナショナルプロジェクト)」に指定され,昭和53年より臨界プラズマ条件の達成を目指したトカマク型の「臨界プラズマ試験装置(JT-60)」の建設に着手している。

また,ヘリオトロン方式,レーザー方式等についても積極的に研究が進められている。


3) 国際協力による研究開発

現在世界各国においては,国際協力による研究開発が進められており,日米間でも米国の実験装置ダブレットIIIを使用した研究協力が行われている。

更に核融合の実現に一歩近づくための次の段階として,核融合炉条件の達成を目標とした装置を開発するため,4大トカマクを建設している米,ソ,ヨーロッパ共同体及び日本の4者が国際原子力機関(IAEA)の場で,INT OR(“国際トカマク炉”)の共同設計研究を進めている。


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