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第1部   世界の中で
第2章  主要先進国の科学技術振興施策
第5節  ソ連
2.  科学技術施策



(1) ソ連科学技術の問題点と諸施策

ソ連では,科学技術重視政策により,かなり以前から基礎科学理論面,特に物理学はかなり高い水準にあり,その応用面である工業技術面では,電力・エネルギー産業,鉄鋼業を発展させ,また工作機械,農業用機械,輸送用機械等を生産する大型機械工業を擁している。さらにこれらの部門の発展を基盤として,宇宙開発産業,原子力産業等の面で相当の開発成果を上げているといわれている。

しかし全体として科学技術の発展には不均衡がみられ,特にエレクトロニクス,石油化学,自動車等の技術集約的産業や衣料,食料,家庭電器等の消費財を生産する軽工業,農業などの部門における技術水準はかなり低い状況にあるとみられる。

こうした状況の下で,ソ連では,応用開発研究を円滑化し,開発成果の実用化を促進するために,主として次のような施策が掲げられてきている。


1) 研究―生産企業合同の設立

研究所が中心となって組織され,研究・開発・試作を一貫して実施する。


2) 科学技術発展統一資金の導入

実用化のための研究に経済的刺激を与えることを目的とした資金で,生産技術の改善,新製品の開発等のための資金や新製品の生産初期におけるコスト増に対する補償等に費やされる。


3) 委託研究の奨励

研究開発と生産現場との有機的な結合を強化し,また研究開発意欲を刺激するため,企業や各省から研究機関への委託研究業務が奨励される。


4) 研究業績評価の実施

研究の効率を上げ,むだな研究を排除するために研究成果等に対する評価制度を取り入れる。


(2) 80年代の方向

昨年(1980年)までは第10次5ヵ年計画(1976〜1980年)に沿って諸施策が講じられてきた。この第10次5ヵ年計画は,「質と効率の5ヵ年計画」をキャッチフレーズとし,科学技術の進歩が,生産性を引き上げ製品の品質を向上させる必須条件であるとして,その促進が強調された。

しかし第10次5ヵ年計画中における鉱工業生産は当初目標を大幅に下回り,農業生産も近年の凶作にたたられてやはり当初目標を大きく下回った。

また国民生活の上でも十分な消費財等の供給が困難であったこと等を考えると,種々の要因に加えて科学技術政策の成果も十分に上がったとはいいがたい状況となっている。

こうした状況を踏まえて,1980年代及び今後5ヵ年において実施されるべき科学技術の発展の方向付けは,ソ連共産党第26回大会(1981年2月)におけるブレジネフ書記長の演説及び同大会で採択された「1981〜1985年及び1990年までのソ連経済及び社会発展の基本方向」すなわち第11次5ヵ年計画の「基本方向」に示されている。

ブレジネフ演説にみられる科学技術の役割及び方向は以下のとおりである。

1) 80年代のソ連経済の発展にとって科学技術の進歩は不可欠であり,このため科学アカデミーの役割と責任を強め,研究組織を柔軟性,機動性に富んだものとする。また科学アカデミーがともすれば,基礎科学の場として,多くの直ちに実用化に結びつかない研究を抱え込む傾向にあることから,これからは成績を上げない研究所は認めないこととする。
2) 科学者は幅広い見識によりソ連経済の問題点を指摘し,どうすれば前進を早め成功裏に社会経済を発展させることができるかを指示すべきである。
3) 従来より問題とされてきた研究成果の社会経済への導入については,時間がかかったり,新技術へ抵抗する傾向があるので,関係機関の指導者の個人的責任を高めることとする。
4) 軽工業等の分野の進歩が遅れており,この分野における研究開発が不足していることから,現在,軍事産業や一部の重工業へ集中している研究費や研究者を再編成する。

また,第11次5か年計画の「基本方向」における科学技術発展の主な方針は次のとおりである。

1) 経済の全部門において,生産技術の改善を図り,その生産性を高め,資材を節約できるような機械,設備の技術開発を進める。
2) 根本的に新しい技術,機材を開発し,生産過程に導入する。さらに開発及び導入までの期間を大幅に短縮する。
3) 部門別の研究機関における研究水準に対する各省の責任を高め,完了した研究開発の成果を迅速に生産にとり入れる。
4) 開発,生産される製品の技術水準の評価システムを改善し,陳腐化した製品の製造を適時に取り止める。
5) 研究の実用化が容易なように研究機関における試験的生産のための基盤を強化する。
6) 科学アカデミー等の学術機関及び研究機関の組織構成を改善し,科学技術進歩の促進にこれらが果たす役割を強化する。
7) 高等教育機関の研究潜在力をより活用し,また研究者等の養成,資格向上に努める。

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