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第1部   世界の中で
第1章  世界の中での我が国の科学技術
第2節  先進国の中での我が国の科学技術
3.  科学技術の成果


科学技術への投入については資金,マンパワーのような比較的使いやすい国際比較のための指標があり,OkCD(経済協力開発機構)や国際連合において定期的に同一基準のデータが収集されている。

しかし,科学技術の成果については,これを直接に比較できる指標がなく,OECDを中心に各国で最適な指標の研究が行われている。そして現段階では技術集約製品の輸出額,技術貿易額,特許の登録件数,文献引用数,イノベーション(技術革新)数等がその傾向を表わすと考えられている。

そこで以下にこれらの指標について主要先進国間の比較を行い,我が国の特徴を明らかにしてみよう。


(技術集約換品の輸出額)

化学製品や各種機械製品等は,前にも述べたように,非常に技術集約的な製品であり,その国の技術の質が製品の競争力に直接反映するため,その輸出額により,各国の科学技術の水準をある程度比較できると考えられる。

第1-1-14図 は1977年における主要5ヵ国の技術集約製品の輸出額を製品別に図示したものである。これによれば,技術集約製品全体では我が国は西ドイツ及び米国に次いで第8番目であるが,製品別にみると我が国は電気機械製品,輸送用機械製品及び精密機械製品において世界のトップにある。

第1-1-14図 技術集約製品の輸出額(1977年)

特に輸送用機械製品の輸出額は他を引き離しており,これは,その内訳をみればわかるように,自動車産業及び造船産業の国際競争力の強さを示し,その主たる要因の一つとしてこれらの産業の技術水準の高さが挙げられよう。

一方我が国は化学製品及び一般機械製品において西ドイツ及び米国に大きく引き離されており,特に化学製品は5ヵ国中最低となっている。


(技術貿易額)

産業の近代化や経済の発展を図るために,ノウハウ(技術情報),特許等の技術を対価を払って外国から導入することを技術輸入といい,逆に国内で研究開発した技術を外国へ提供し,その対価を受け取ることを技術輸出という。

そしてこの両者を合わせて技術貿易という。

この技術輸入はその国の科学技術の水準を押し上げる大きな要因の一つであり,また技術輸出はその国の科学技術の水準の高さ及びそれを基盤とした研究開発の成果の質の高さを反映するものと考えることができる。

ここでは技術輸入に伴う対価支払額(技術輸入額)及び技術輸出に伴う対価受取額(技術輸出額)について各国比較を行ってみよう。

第1-1-15図 は主要5ヵ国の技術貿易収支を表わしているが,技術輸出額では,米国が圧倒的に多くフランスも相当多いが我が国は5ヵ国中では最も少ない。技術輸入額ではフランスが多く我が国が続いている。収支バランスについてみると,我が国及び西ドイツが赤字,イギリスが均衡,米国及びフランスが黒字であり,特に米国の出超額は著しい。

しかし,我が国も最近の技術貿易の傾向を表わすと考えられる新規契約分についてみると,1972年以降黒字が続いている(日銀統計と総理府統計の違いについては第2部を参照のこと。)。

第1-1-15図 技術貿易収支(1975〜1977年の平均)

次に我が国の技術貿易の流れと米国の流れを比較してみると, 第1-1-16図 に示すように,米国が先進国,開発途上国の両方に対して大幅な輸出超過になっているのに対し,我が国は先進国に対しては大幅な輸入超過となっており,技術輸出の大宗を東南アジアをはじめとする中進国や開発途上国向けで占めている。

すなわち我が国は依然として欧米先進国から技術を導入しており,逆に我が国の技術のうち欧米先進国へ輸出できるものは少ないといえよう。

しかし前にも述べたように我が国の科学技術の水準が高くなり,商品輸出競争力が強くなってきたことから,こうした外国からの技術導入には, 第1-1-17図 に示すように,年々厳しい制約がかけられるようになってきている。同図は導入技術を利用した商品等の販売可能地域の制限の状況を表わしており,最も制限のきつい「日本のみ」が急速に増えている。なお,「制限なし」が徴増しているのは,輸出のため相手国の特許権のみを購入する契約が多い電気分野の技術導入が増えているためである。

第1-1-16図 我が国及び米国の技術貿易の流れ

第1-1-17図 導入技術を利用した商品等の販売可能地域制限の推移


(特許の登録件数)

内国における特許の登録件数は,現在のその国の科学技術の保有量を反映すると考えられ,また,外国における特許の登録件数は,比較的精選されたものが出願,登録されるので,その国の科学技術の質的な水準を反映すると考えられる。

第1-1-18図 は,1977年において,主要5ヵ国が内国及び外国において登録した特許件数を示しており,我が国は対内国登録件数で第1番目,対外国登録件数で第3番目となっているが,他の各国に比べて特徴的なのは,我が国のみ対内国登録件数が対外国登録件数を上回っていることである。

次に対外国登録の内容をみるため,各国における特許登録者の国籍別の割合をみてみると 第1-1-19図 のとおりである。これによれば,米国及び西ドイツには劣るものの各国登録特許の約1割を日本人が占めており,特に米国における外国人登録では4カ国の中で最も多くを占めている。

第1-1-18図 各国による特許の登録件数(1977年)

第1-1-19図 各国における特許登録者の国籍別割合(1977年)


(学術文献引用数)

研究の水準を測る目安としてしばしば用いられるのが,研究の産物である学術文献がどの程度他の文献に引用されたかの度合すなわち学術文献引用数である。

第1-1-20図 は,1975年において,米国の学術刊行物において各国(自国も含む)の学術文献がどの程度引用されたかの割合を表わしたものであり,これによれば自国である米国が多いのは当然であるし,また言語の違いによる影響等も考慮しなければならないが,我が国の文献は,イギリス及び西ドイツより少ないもののフランス及びカナダとほぼ同水準で引用されている。

第1-1-20図 米国の学術刊行物への各国学術文献の引用割合(1975年)


(イノベーション数)

イノベーションとは,元来,「革新」という意味で,経済発展の基本動因等を指すが,転じて創造的な研究活動の結果として生まれた革命的で産業への波及効果の大きい技術革新のことも意味するようになっている。

このイノベーション(技術革新)は正に科学技術の成果であると考えられ,OECD,米国等でこれに関する調査が行われたが,その中でも最近の調査結果を図示したのが 第1-1-21図 である。これによれば,戦後のイノベーション数は米国が圧倒的に多く,イギリスがこれに続いている。我が国のイノベーション数は,近年になって増え出し,米英に次ぐところとなっているがまだ相対的に少ない。

イノベーションの内容については,イギリスのイノベーションの半分以上,米国及びフランスのイノベーションの約4分の1が画期的なブレークスルー(現状を打破するような技術)であるのに比べて,我が国のそれは1割にも満たない状況にあり,技術的進歩とか改良がイノベーションのほとんどを占めている。すなわち我が国のイノベーションは画期的なものが少なく改良主体であるといえよう。

第1-1-21図 主要国におけるイノベーションの動向 (イノベーションの推移) (イノベーションの画期性)


以上のように我が国の科学技術の成果は産業面に強く表われており,経済との関連における総合的な技術力は相当高い水準にあるものの,革新的,独創的な科学技術の面ではまだ欧米先進国に遅れているように思われる。


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