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第3部   政府の施策
第2章  政府機関などにおける研究活動
4.  多分野の協力による研究開発の推進
(1)  原子力開発


我が国は,石油代替エネルギーの中心的役割を担う原子力の研究開発利用を,原子力委員会の策定した原子力研究開発利用長期計画(昭和53年9月決定)に沿って,総合的かつ計画的に推進している。

我が国の原子力発電は,昭和55年3月末現在,運転中の発電所の規模が21基約1,500万KWとなり,総発電規模の約12%に達し,既に我が国の電力供給にとって不可欠の存在となっている。

原子力の研究開発利用の推進に当たっては,安全の確保に万全を期し,国民の十分な理解と協力を得ることが必要不可欠であり,政府としては,昭和53年10月発足した原子力安全委員会を中心に,原子炉等規制法,放射線障害防止法等に基づく厳重な安全規制を実施するとともに,安全研究を推進するなど安全対策の強化に努めている。また,地元に対し的確な情報を提供しつつ,その意向を十分には握し,地元の事情を配慮したきめ細かな対策を講じているところである。

また,原子力が将来にわたって安定したエネルギー源としての役割を果たしていくためには,自主的な核燃料サイクルを早期に確立する必要があり,海外からの天然ウラン及び濃縮ウランの確保等に努めつつ,国内においては,ウラン濃縮,使用済燃料の再処理,放射性廃棄物処理処分等の研究開発を積極的に推進しており,更に,ウラン資源の有効利用を図るため高速増殖炉等新型動力炉の開発,人類究極のエネルギー源といわれる核融合の研究開発,発電以外への原子力利用を目的とする多目的高温ガス炉及び原子力船の研究開発を鋭意推進しているところである。

一方,原子力を取り巻く国際情勢については,近年,核不拡散強化の動きが強まる傾向にあるが,昭和52年以来原子力平和利用と核拡散の防止の両立のための方途を求めて開催されてきた国際核燃料サイクル評価(INFCE)においては,昭和55年2月,国内における再処理等を前提とした自主的な核燃料サイクルの確立という我が国の原子力政策の基本的立場が反映された形で最終的な取りまとめが行われた。我が国としては,核拡散防止のための国際的努力に積極的に協力する一方,工NFCEの成果を踏まえ,我が国の原子力平和利用の促進を確保するよう努めていく必要がある。

第3-2-8表 に54年度原子力関係予算を, 第3-2-9表 に主要国の原子力関係予算の推移を示す。

第3-2-8表 昭和54年度原子力関係予算総表

第3-2-9表 主要国の原子力開発予算の推移


(1) 安全性の確保

原子力開発利用は,放射能の危険性を十分に認識し,開発当初から,放射性物質を確実に管理する対策を講じるなど,安全性の確保を最重点にして技術の開発が行われてきており,他の産業分野には見られない厳しい安全確保に対する法的な措置も講じられてきた。

すなわち,原子炉等規制法により原子炉の設置許可,加工の事業の許可,再処理の事業の指定等を行うに当たって,各主務大臣は原子力委員会,原子力安全委員会の意見を聞くこととされており,特に国民の関心の深い安全性については原子力安全委員会が,行政庁の行った安全審査について最新の科学技術的知見に基づいて客観的立場から再審査(ダブルチェック)するという新たな安全審査の方法をとることとしている。また,設置許可等の後の段階においても,行政庁が安全規制を行うとともに,原子力安全委員会においても必要と認める事項について審議を行うこととしている。

更に,原子炉設置後は,施設内での被ばく線量管理のほか,環境における放射線量が一般の個人に容認される線量限度を十分下回っていることを確認するため環境放射線モニタリングが事業者及び地方公共団体により実施されており,政府は地方公共団体に対し財政的援助を行っている。

原子力に係る安全性研究については,日本原子力研究所を中心として,放射線医学総合研究所等の国立試験研究機関において行われ,また,民間機関への委託により研究されている。

軽水炉施設の安全性研究については,日本原子力研究所をはじめとして,原子炉の反応度事故及び冷却材喪失事故に関する研究等を行っており,昭和54年度には,引き続き原子炉安全性研究炉(NSRR:Nuclear Safety Res-earch Reactor)による各種試験,冷却材喪失事故試験装置(ROSA:Rig of Safety Assessment)による非常用炉心冷却装置の効果に関する実験研究等を行った。

原子力施設から環境へ放出される放射性物質については,放出量の低減化を図るため,回収技術の研究開発及び放射性廃液の処理技術の開発などを実施している。

原子力施設から環境へ放出される放射性物質による一般公衆に対する被ばくは,国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告あるいは法令の定める限度を十分下回るよう努力がなされている。更に,放射線医学総合研究所では,低線量及び低線量率被ばくの人体に対する放射線障害の危険度を推定する上で重要な晩発性の身体的影響及び遺伝的影響,並びに被ばく形式の特異性からみて特に内部被ばくの障害評価の三つの研究に着目し,特別研究に指定して研究を実施している。

放射性廃棄物の処理処分は,原子力開発利用を進める上で早急に解決すべき課題であり,原子力委員会の定めた基本方針に基づいて対策が推進されている。原子力発電所等から発生する低レベル放射性廃棄物の海洋投棄については,十分な安全評価に基づき,まず試験的海洋処分を行った上で本格処分に移行するとの方針のもとに,試験的海洋処分実施のため,(財)原子力環境整備センターを中心に投棄船改造の設計検討をはじめとする所要の諸準備を進めてきたところである。一方,低レベル放射性廃棄物の陸地処分についても安全評価手法を確立するためのフィールド試験を進めている。また,再処理工場から発生する高レベル廃棄物については,その処理処分時の安全評価手法を確立すべく,日本原子力研究所等において調査研究が進められている。

昭和54年3月28日,米国スリー・マイル・アイランド原子力発電所において,二次給水系の故障から発展して環境中に相当の放射性物質が放出されるという事故が発生し,各国に大きな反響を与えた。我が国では,事故発生直後から,原子力安全委員会を中心として事故状況の調査,事故原因の究明,我が国の原子力発電所における安全性の再点検等が行われた。また,原子力発電所等に係る防災対策については,災害対策基本法に基づき所要の防災対策が講じられることになっているが,同事故にかんがみ,中央防災会議の下で関係省庁により,原子力発電所等に係る防災対策の特有の事象に着目した当面とるべき措置について,具体的対応策の再点検作業を行った。その結果を踏まえて,同年7月12日,中央防災会議において,国として当面とるべき措置を決定した(原子力安全委員会参照)。


(2) 核燃料サイクルの確立

我が国の原子力発電が本格的な実用期に入ったことに伴って,核燃料の安定的供給の確保とウラン資源の有効利用などを目指した核燃料サイクルの確立がますます重要な政策課題となっている。

ウラン資源の乏しい我が国は,そのほとんどを海外に依存せざるを得ず,長期の購入契約による確保を図るとともに,長期的には,開発輸入の比率を高め,年間所要量の3分の1程度を開発輸入により確保することを目途として海外ウラン調査探鉱を推進している。昭和54年度においては,動力炉・核燃料開発事業団は,東南アジア,南米等における鉱業事情調査を実施するとともに,カナダ,アフリカ諸国,オーストラリアなどの有望地区において引き続き独自の鉱床調査・探鉱及び他国機関との共同調査を行った。また,民間においては,金属鉱業事業団等からの助成により海外でのウラン探鉱開発が進められている。

また,当面原子力発電の主力は濃縮ウランを燃料とする軽水炉であることから,このための濃縮ウランの安定確保も重要な課題となっている。このため我が国電力会社は,米国エネルギー省との契約により約5,100万KWの原子力発電に必要なウラン濃縮役務を確保しているほか,ユーロディフからも購入する契約を締結している。また,長期的な濃縮ウランの安定確保を図るため,我が国において自主技術による濃縮工場を稼動させることを目標に,遠心分離法によるウラン濃縮技術の開発を国のプロジェクトとして積極的に推進している。昭和54年度においては,動力炉・核燃料開発事業団が岡山県人形峠において昭和56年度完成を目途に建設を進めてきたパイロットプラント(遠心分離機7,000台規模)が遠心分離機1,000台による部分運転を開始した。

使用済燃料の再処理については,我が国は,当面,動力炉・核燃料開発事業団の東海再処理施設並びにイギリス及びフランスへの海外委託により賄うこととしており,これによりほぼ昭和65年頃までの必要量を確保している。

東海再処理施設については,昭和53年8月に発生した酸回収蒸発缶の故障以来運転が停止していたが,修復作業が進められた結果,昭和54年11月からホット試験が再開され昭和55年2月まで行われた。今後,施設の性能及び安全性を十分に確認した上で操業を開始することとしている。一方,長期計画で,今後増大する再処理需要に対処するため,昭和65年頃の運転開始を目途に速やかに建設に着手することが必要であるとされた民間再処理工場の建設については,昭和54年6月原子炉等規制法が改正されたことにより,再処理事業の民営化及び安全規制の充実のための法令が整備された。これにこたえて産業界においては昭和54年7月「再処理会社設立準備委員会」が発足し,翌年3月日本原燃サービス株式会社が設立された。

また,核燃料サイクルの確立にとって,放射性廃棄物対策の確立は重要な課題であり,その基本的考え方は,原子力委員会決定(昭和51年10月)によっており,現在この決定に沿うべく次のような施策を進めている。

原子力発電所等から発生する低レベル廃棄物に関しては,今後原子力発電規模の増大に伴い発生量の増加が予想されるため,その一層の減容化を図ってきており,今後ともその努力を進めるとともに,最終処分としては試験処分の結果を踏まえた上で,海洋処分及び陸地処分を行うこととしている。

再処理工場から発生する高レベル廃棄物については,動力炉・核燃料開発事業団及び日本原子力研究所を中心に固化処理に関する研究開発及び地層処分の可能性のある地層に関する机上調査を進めている。なお,原子力委員会及び原子力安全委員会において,政策面及び技術面での検討が進められている。


(3) 新型動力炉の研究開発

在来の軽水炉はウラン資源の1%程度しか利用できないのに対して,高速増殖炉は,その利用効率が60〜80%にも達することから,世界各国においても競ってその開発が進められている。我が国では,昭和42年以来動力炉・核燃料開発事業団において,「動力炉開発業務に関する基本方針」及び「同第2次基本計画」に基づき,昭和70年代の実用化を目指し,自主技術による研究開発が進められている。さらに,高速増殖炉が実用化されるまでの間を補完する炉として,ウランの利用効率の高い新型転換炉についても,昭和60年代の実用化を目指し同様に研究開発が進められている。

高速増殖炉については,大洗工学センターにおいて出力上昇を行ってきた高速増殖実験炉「常陽」が,昭和54年7月熱出力7.5万KWに達した。また原型炉「もんじゅ」(電気出力30万KW)について,環境審査が実施され建設のための諸準備が進められつつあるとともに,ナトリウム技術開発試験,蒸気発生器試験,核燃料,炉材料の開発試験,安全試験など所要の関連研究が進められている。

新型転換炉については,福井県敦賀市において原型炉「ふげん」(重水減速軽水冷却型,電気出力16・5万KW)が,54年3月から本格運転に入り,順調な運転を行っている。また,実証炉については,その技術的,経済的評価等を行うため,55年2月,原子力委員会に「新型転換炉実証炉評価検討専門部会」が設置された。


(4) 多目的高温ガス炉の開発

現在の原子炉は主として発電に利用されているが,原子炉で発生した熱を,製鉄,水素製造,石炭ガス化,石炭液化等の熱源として多方面に利用することが考えられている。

我が国では,炉心出口温度1,000°Cの多目的高温ガス炉の開発を目指して研究を進めており,昭和60年代前半の運転を目途に実験炉を建設することとしている。このため,日本原子力研究所において,実験炉の設計研究,高温工学の試験,燃料・材料の開発,安全性の研究,材料試験炉(JMTR)に接続したOGL-1による高温ヘリウム取扱技術及び伝熱流動の研究などの研究を行っているほか,大型構造機器実証試験ループ(HENDEL)の建設を進めている。今後はこれらの成果を踏まえつつ実験炉の建設へと進むこととしている。また,多目的高温ガス炉の開発と並行し,通商産業省では,このような高温ガス炉などを熱源とした製鉄への利用プロセスについての研究開発を行っている。


(5) 核融合

核融合は,海水の中に含まれている重水素などを燃料とするため,世界に偏在する化石燃料,ウランといった地下資源に依存することなく,永久的にエネルギーの安定供給が可能となることからその早期実現が期待される。

我が国においては,昭和43年7月に決定された「核融合研究開発基本計画」に基づき,第一段階の研究開発を推進してきた。この結果,日本原子力研究所に完成したトカマク型の中間ベータ値トーラス装置(JFT-2)及び高安定化磁場試験装置(JFT-2a)により高温ブラズマの閉じ込めについて顕著な成果を収めた。これらの成果を踏まえ,50年7月「第二段階核融合研究開発基本計画」を策定し,核融合動力炉実験の前提となる臨界プラズマ試験装置(JT-60)の建設,実験を主計画とする第二段階の研究開発を進めており,現在,日本原子力研究所で,昭和50年代後半の完成を目途にJT-60の建設が進められている。また,非円形断面トーラス試験装置の設計研究も行われている。

更に,工業技術院電子技術総合研究所では,トロイダル・ピンチ装置(TPE-IR)により,高ベータ・プラズマ閉じ込めについて着実な成果を収め,現在,これらを大型化し断面形状が非円型であるTPE-2を建設している。

大学関係については,名古屋大学プラズマ研究所,京都大学ヘリオトロン核融合研究センター,大阪大学レーザー核融合研究センター,筑波大学プラズマ研究センター等を中心に,各種閉じ込め方式等に関する理論及び実験的研究が行われている。

国際協力に関しては,IAEA,IEAにおける研究者交流,情報交換等の協力,共同研究計画への参加等が進められているほか,日米間において,昭和54年5月に締結された日米エネルギー等研究開発協力協定に基づいて同年8月から研究者の交流計画,米国の核融合実験装置「ダブレット-III」による共同研究等の研究協力を開始した。


(4) 原子力船

原子力船は,少量の核燃料で長期間にわたって運航でき,高速化・大型化が進むほど経済性が良くなるなどの特長を有するため,その実用化が期待されており,我が国においても,昭和38年に日本原子力船開発事業団を設立し,原子力委員会が決定した「原子力第一船開発基本計画」に従って,自主技術により原子力船「むつ」の開発を進めている。

「むつ」の開発は,昭和49年9月,出力上昇試験の際に遮蔽の不備による放射線漏れが発生したことにより,一時停滞の止むなきに至ったが,政府としては,「むつ」放射線漏れ問題調査委員会等における専門家の検討結果を踏まえ,遮蔽改修及び安全性総点検を行った上で引き続きその開発を進めることとした。日本原子力船開発事業団は,現在,佐世保港において「むつ」の安全性総点検を実施するとともに,遮蔽改修工事の準備を進めているところである。また,「むつ」の定係港(母港)については,昭和49年の放射線漏れの際,政府が青森県,むつ市及び青森県漁連との間で締結した協定(いわゆる四者協定)に基づき現定係港(青森県むつ市の大湊港)を撤去することとなっているので,新たに定係港を選定する必要があり,目下,日本原子力船開発事業団において,調査を進めているところである。


(7) 放射線利用

放射線利用は,基礎科学の分野から工学,農業,医療等の応用分野まで広範な分野において重要な地位を占めるに至り,放射性同位元素や各種放射線発生装置を使用する事業所は,医療,農業,工業等の各分野において逐年増加しており,昭和54年3月末現在では,放射線障害防止法の規定により許可を受け又は届け出ている使用事業所数は,3,826にのぼっている。

医療分野における放射線利用は,エックス線を用いる診断,高エネルギー放射線発生装置やコバルトを用いる治療及び放射性同位元素を用いる診断治療(核医学)の3分野にわたって行われている。特に,放射線治療の主たる対象である悪性腫瘍に関しては,従来の治療法に加え,サイクロトロンを用いた方法が注目され,昭和51年2月から本格的に稼動した放射線医学総合研究所の医療用サイクロトロンにおいては,悪性黒色腫等に著しい治療効果を挙げている。

工業利用分野では,その利用は広範な業種に及び,ゲージング,非破壊検査,螢光エックス線分析,放射化分析等多岐にわたっている。また,農業利用分野についても,作物の品種改良,農林水産生物の生理機構の研究におけるトレーサー利用,放射化分析等広い分野にわたって放射線利用技術の普及をみている。

特に,放射線による食品照射の研究については,昭和42年9月の「食品照射研究開発基本計画」に基づき,現在まで,ばれいしょ,玉ねぎ,米,小麦,ウインナーソーセージ等について,国立試験研究機関,日本原子力研究所,理化学研究所等が連携して実用化のための研究を進めており,既に,ばれいしょについては,実用化,普及段階に至っている。

このような放射線利用における実用化の進展とともに,放射性同位元素の需要も毎年増加してきている。これら放射性同位元素の供給については,外国からの輸入のほか,日本原子力研究所を中心として,需要の多い核種に重点を置いて国産化を進めており,特に,海外に依存することの困難な短寿命核種については,放射線医学総合研究所,理化学研究所等で積極的に製造の研究開発を進めている。


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