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第2部   科学技術活動の動向
第4章  国際交流の動向
1.  国際機関における活動
(1)  国際連合及び専門機関



(1) 国際連合

国際連合(国連)の科学技術活動は,国連総会及び経済社会理事会(ECOS OC)のもとの各種機関,委員会並びに各専門機関を通じて進められている。

特に近年,南北問題解決の大きな鍵となる開発途上国の科学技術能力の育成及び全地球的視野で解決に当たる必要がある天然資源,エネルギー,食糧,人口,保健問題などに関する活動が積極的に展開されている。

1979年8月にはオーストリアのウィーンにおいて,1970年代に国連が主催してきた環境,人口,食糧,人間居住などの諸会議を総括し,あわせて1980年代の国際開発戦略の策定に寄与するものとして「開発のための科学技術国連会議」(UNCSTD)が開催された。

この会議の結果,開発途上国の科学技術能力を強化するための人材の育成,開発途上国への技術の移転の促進,国際的科学技術情報ネットワークの設立,開発のための科学技術融資システムの設立,「開発のための科学技術政府間委員会」(ICSTD)の設立とこの委員会をサポートするための事務局としての開発のための科学技術センターの新設等を内容とする開発のための科学技術世界行動計画,いわゆる「ウィーン行動計画」が採択された。我が国は,この会議の代表演説において,開発途上国の開発のためには科学技術に関しての「人造り」が重要であり,我が国はこの「人造り」のための協力を積極的に行う旨を表明するとともにウィーン行動計画の審議に参加した。

その後,このウィーン行動計画は,第34回国連総会において承認され,これを受けて同行動計画の実行プランの作成等を行う上記政府間委員会の第1回会合が1980年1月に開催された。

このような開発のための科学技術国際協力に関連し,近年世界的に緊急に解決すべき問題となっているエネルギー問題に対処し,石油への依存を脱し,かつ非産油開発途上国のエネルギー源の創出を図っていくために,風力,波力,地熱,バイオマス等の新・再生可能エネルギーの開発及び利用の促進策を世界的規模で検討するための「新・再生可能エネルギー国連会議」(1981年8月にケニアのナイロビで開催される予定)にも我が国は積極的に参加することとしている。このため,海洋及び地熱のテクニカル・パネルには我が国専門家を派遣するとともに,1980年2月に開催された第1回世界準備会合においては,議長国として積極的に貢献した。

また1979年5月には,南北問題を貿易及び開発の面からグローバルに検討するための国連貿易開発会議(UNCTAD)第5回総会がフィリピンのマニラにおいて開催され,国際的な技術移転のための行動規範,経済社会開発における工業所有権制度の役割及び開発途上国の科学技術能力の強化のための国際協力についての審議が援助,貿易,後発開発途上国(LLDC)問題等の討議と並行して行われた。このうちの技術移転行動規範については,1979年秋の国連会議において南北の大幅な歩みよりがみられ,また世界知的所有権機関(WIPO)においては1980年2月〜3月に,工業所有権保護に関するパリ条約改正の外交会議が開催されるなど技術の移転における工業所有権の保護と開発途上国の社会全体の開発ニーズとを調和させるための方策が検討され,成果を挙げつつある。

国連工業開発機関(UNIDO)においては,1979年4月の工業開発理事会(IDB)第13会期において,それまでパイロットオペレーションであった技術情報銀行(INTIB)の活動を,UNIDOの実行プロジェクトとして継続,拡充することを決定するなど,従来の工業開発プロジェクト協力に加え,開発途上国の技術能力の向上による自立的な研究開発を助長するための技術移転の諸措置が実行に移されている。これらの活動をふまえ,1980年1月には,UNIDO第3回総会が開催され,エネルギー,工業技術を含めた工業開発の諸問題について検討が行われたが,工業開発分野におけるグローバルな構造変革等を企図する途上国と先進国との間に意見が対立し,健全な合意を見出せぬまま終了した。

経済社会理事会のもとにあるアジア・太平洋経済社会委員会(ESCAP)は,アジアの地域的特殊性にもとづきアジア・太平洋地域の開発途上諸国の具体的な開発ニーズに即応した活動を行っており,天然資源委員会,台風委員会などの特徴ある活動のほか,鉱物資源,技術移転,総合農村開発などの分野に重点を置いたプロジェクトを実施している。我が国は,アジア地域諸国との協力の重視策に基づき,資源探査,防災,気象,技術・情報の流通,移転などの分野で積極的に科学技術協力を行っている。

このESCAPの第36回総会は,1980年3月にタイのバンコクにおいて開催され,ESCAP地域開発のための政策,計画及び展望などの主要テーマについて活発な討議が行われた。

国連環境計画(UNEP)は,国連組織内の諸機関の環境に関する活動を調整し,環境問題解決のための国際協力を促進することなどを目的としている。1979年4月〜5月には,事務局のあるナイロビで,第7回管理理事会を開催した。この会議では,環境と開発,新国際開発戦略(NIDS)への環境保全の組込み,環境状況は握と環境容量,国際環境法などの幅広い活動の今後の基本的方向を討議するとともに,15の決議を採択した。また,1977年12月の国連総会において,人間居住環境改善のため人間居住委員会及び人間居住センターの設立が決議され,第1回の人間居住委員会が1978年4月にニューヨークで,第2回の委員会が1979年3月にナイロビで開催された。

第3次国連海洋法会議は,伝統的な海の国際法を根本的に再検討し,新しい時代の要請にこたえる海洋法を作ることを目的として,1973年以来開催されている。第8会期(1979年3月〜4月,ジュネーヴ)及び再開第8会期(1979年7月〜8月,ニューヨーク)では,残された主要問題である深海底鉱物資源開発制度,大陸棚の定義,海洋科学調査における諸問題などに関し,新しい制度を確立するための努力が引き続き払われた。1980年2月から4月にかけてはニューヨークで第9会期が開催されている。なお,第8会期には約140か国が参加しており,我が国は,新しい時代の要請や開発途上国の主張を配慮する一方,我が国の大局的利益が確保されるような公正な新海洋法秩序の確立に努力している。

宇宙空間平和利用委員会は,宇宙分野における国際協力の推進,宇宙空間の利用から生ずる法的問題などの検討を行う目的で設立された委員会である。同委員会は,これまでに宇宙条約,宇宙救助返還協定,宇宙損害賠償条約,宇宙物体登録条約及び月協定を成立させたほか,開発途上国での宇宙応用分野の活動を発展させ,強化させるための宇宙応用計画などを推進してきた。現在,同委員会においては,直接放送衛星を律する原則案,リモートセンシング活動に関する法的技術的問題,その他宇宙応用計画などについて継続して審議がなされている。1978年1月の原子力衛星カナダ墜落事件に端を発した原子力衛星問題については,1980年1月〜2月の同委員会科学技術小委員会において前年に引き続き第2回作業グループが開催され,専門家にょる検討が進められているとともに,1980年3月〜4月の同委員会法律小委員会でも法的側面から検討が開始されている。

国連大学(UNU)は,日本に本部を置く唯一の国連機関であり,大学本部を中心に,世界各地に設置される同大学の研究研修センター及び研究研修計画の活動並びに各国の既存の研究・研修機関との提携協力により,人類の存続,発展及び福祉にかかわる緊急かつ世界的な問題の解決に寄与することを目的とする研究研修機関である。現在,優先プログラムとして「世界の飢餓問題」,「人間と社会の開発」,「天然資源の利用と管理」の3テーマを取り上げ,世界各地の既存の研究・研修機関との提携協力により活動を進めている。

我が国では,提携機関としてアジア経済研究所が国内の関係研究機関と協力しつつ,「技術の移転,変容及び開発:日本の経験」について研究を進めており,また,協力機関として農林水産省食品総合研究所が,「未利用原産穀類等からのたん白食品の開発」について国連大学の研修生を受け入れているほか,三つの研究・研修機関が個々の関係プロジェクトに参加している。


(2) 国連専門機関及び国際原子力機関(IAEA)

国連専門機関とは,国連憲章第57条及び第63条に基づき,協定により国連と連携関係をもつ国際機関であり,科学技術の分野では,国連教育科学文化機関(UNESCO),世界保健機関(WHO)などにおいて,独自の憲章に基づいて活動が行われている。

UNESCOについて,各事業分野における活動の状況について概観すると,科学技術情報の分野では,各国の科学技術情報量の飛躍的増大に対処するため,その国際的流通を円滑迅速にすることを目的とした世界科学情報システム(UNISIST)事業は,先進国間の情報交流と開発途上国援助の両面から多角的に展開されつつある。本事業の一環として行われている国際逐次刊行物データシステム(ISDS)には,国立国会図書館が国内センターとして参加している。また,1976年からは,国内の図書館,資料館,文書館に関するインフラ整備計画(NATIS)を本事業のそれに併合した総合情報計画(GIP)において,我が国は,政府間理事会の理事国として参加している。

基礎科学の分野では,我が国は1965年以来,東京工業大学で「化学及び化学工学国際大学院研修講座」を開設しているほか,1973年10月以来,大阪大学を中心として「微生物学国際大学院研修講座」を開設している。また,天然産出物に関する微生物学及び化学の分野においては,1975年以来東南アジア諸国の若手研究者養成を目的とする基礎科学のネットワーク事業推進のためUNESCOに信託基金を提供しており,この大学及び研究機関間を結ぶネットワークを通じて,研修コースの開催,科学者の交換事業などが進められている。

技術及び工学における研究・教育の分野では,エネルギーの効率的利用等に関する国際協力事業が実施されつつあるほか,工学教育の内容・方法に関する検討も行われている。この分野では,我が国は,九州大学において「国際地熱エネルギー研修コース」を1970年以来毎年実施している。

海洋学,水文学及び天然資源等の研究の分野では,人間と生物圏(MAB)計画,国際地質対比計画(IGCP),政府間海洋学委員会(IOC),国際水文学計画(IHP)の諸事業がそれぞれ進展している。これらの計画は,いずれも人類の生活環境としての地球の実態を明らかにし,天然資源の合理的利用と環境保全のための科学的基礎を提供しようとする長期的な国際共同研究事業であり,我が国は,これらに理事国等の立場で積極的な参加を行っている。

また,IOC第10回総会(1977年)における西太平洋海域の海洋気象,海洋生物資源及び地球物理学的現象等の解明を目的とした西太平洋海域共同調査(WESTPAC)の発足決議に基づき,我が国は,本事業参加の東南アジア諸国をはじめ太平洋沿岸諸国の要望により,1979年2月に東京で本事業の準備のための会議を開催したのに続き,1980年3月に東京で具体的調査・研究活動を検討するためのワークショップを開催する等積極的かつ主導的に参加・協力している。

WHOは,すべての人が可能な最高の健康水準に到達することを目的としており,我が国は毎年,研修生の受入れ,各種セミナーへの講師派遣,専門家の派遣などを通じて積極的な協力を進めている。

また,国連食糧農業機関(FAO)及びWHOについては,両機関合同の食品規格委員会において,53年度に引続いて消費者の健康を保護し,食品の公正な取引を保証するため,世界的規模の食品規格を作成している。

IAEAは世界の平和,健康及び繁栄のための原子力の貢献を促進・増大することを目的としており,我が国はIAEAの理事国として,総会,理事会に代表を派遣し,その活動方針策定に積極的に参加するとともに,各種専門家会合への参加,技術援助計画に基づく専門家の派遣,国際原子力情報システム(INIS)への参加などIAEAの各種活動に参加している。また,我が国は,1978年8月,アジア,太平洋,極東地域の工AEA加盟国間の原子力科学技術に関する研究,開発及び訓練の推進,協力を目的とした「原子力科学技術に関する研究,開発及び訓練のための地域協力協定(RCA)」に加盟し,開発途上国に対し積極的な貢献を行っている。


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