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第1部   時代を拓く科学技術
第2章  1980年代科学技術発展の展望
第2節  期待される科学技術の進展
6.  宇宙開発


従来までに推進された宇宙開発の結果,太陽系空間の科学や天文学等は,画期的に進展し,人類の宇宙に関する知識が急速に深まるとともに,テレビ中継,気象予報等と知らず知らずのうちに宇宙が人々の生活に取り込まれ,ごく日常的にその生活を支えるものとなりつつある。

ここで,1980年代以降の宇宙開発について,米国及び日本についてみてみよう。

米国では,打上げロケットとして現在までに,デルタ,サタンV等各種の消費型ロケットを開発してきたが,現在,再使用可能な宇宙輸送システムであるスペースシャトルを開発しており,この本格運用に伴い,今後は,ほとんどの打上げ遂行をこれに引き継ぐ計画である。スペースシャトルは,乗員と荷物を積み込むオービタ(軌道宇宙船)と外部燃料タンク,2基の固体ロケットブースタから構成されており,オービタに約30トンの荷物を積み,高度約400kmの軌道で通常7日間の飛行が可能である。この特徴は,再使用が可能なほかに打上げた人工衛星に対するサービスや回収が可能となることであり,また,打上げ経費等を軽減する効果がある。さらに在来型のロケットに比べて振動,加速度等が小さいためとう乗人員は過酷な訓練を受ける必要がない。

スペースシャトルのオービタ荷物室は,無人実験観測用機器,有人宇宙実験室(スペースラブ)のとう載のほか,各種人工衛星をとう載し,ここからさらに静止軌道等高い軌道への打上げに利用される。

宇宙の利用及び科学探査については,米国の今後25年における望ましい非軍事活動の可能性を検討した宇宙開発の長期展望(Out100k for Space)の中で,基本的な人類のニーズにこたえる地球指向の活動として農林資源の生産と管理,環境の予知と保護,生命と財産の保護,エネルギー及び鉱物の発掘,情報の伝達,科学及び商業目的の宇宙環境の利用,地球科学の7テーマと人類文化のニーズにこたえる地球外の活動として,宇宙の性質,物質の運命,星のライフサイクル,太陽系の進化,生命の起源と未来の5テーマについて述べられている。

日本では,世界の宇宙開発が,現在,これまでの技術的成果の一般化を急速に増進させていく世代に進みつつあり,さらに1990年代からはポスト・スペースシャトル時代として,大量の輸送や宇宙空間の自由な航行の手段の整備とあいまって全人類的規模で高度かつ大規模の活動が展開される次世代に入るとの予想のもとに,宇宙開発委員会は,全人類的な協力のもとに進められることが予想される世界的な次世代の宇宙開発活動に参加していく能力を確立するために,以下の様に,我が国の宇宙開発の進め方について長期的な指針を示す宇宙開発政策大綱を1977年度(昭和52年度)に策定した。

これによると,我が国の宇宙開発は,1)社会的ニーズに対応した宇宙開発を国力との調和を図りつつ進める,2)自主性を確保することにより,宇宙開発の安定的遂行,自在な展開を図る,3)世界の宇宙開発との調和を図り,我が国の宇宙開発を国際的に高いレベルで推進する,という三つの基本方針のもとに進めることとされている。

また,宇宙開発シリーズは,当面15年間に実施すべきシリーズ,実施について検討すべきシリーズ及び15年後の課題として配慮していくべきシリーズに分類されている。

当面15年間に実施すべきシリーズでは,通信の分野においては,我が国の自主技術をベースとして,通信系技術を確立するための「移動体系通信技術衛星シリーズ」並びに既定計画の国産化の促進及び上記技術の成果を踏まえて技術的向上を図りつつ,実用に供していくものとして「固定通信衛星シリーズ」,「放送衛星シリーズ」,「移動体通信・航行衛星シリーズ」を実施する。

観測の分野においては,我が国の科学の発展のために,その時点その時点における世界的に最高水準の活動を行う「天文系科学観測シリーズ」及び「地球周辺科学観測シリーズ」並びに我が国の自主技術をベースとした観測系技術の確立を図るとともに,その実利用への応用の途を開いていく「海域及び陸域観測衛星シリーズ」,これらの応用等を行う「電磁圏及び固体地球観測衛星シリーズ」及び既定計画の国産化の推進とその高度化,実利用への応用を行うための「気象衛星シリーズ」を実施する。さらに,地球周辺で培った技術の総結集として,また,宇宙技術の新たな飛躍への踏台として,月及び地球型惑星の探査を中心とした「月・惑星探査シリーズ」を実施する。

宇宙空間の環境条件を利用する宇宙実験の分野においては,その代表的なものとして,「材料実験シリーズ」及び「ライフサイエンス実験シリーズ」を実施する。なお,「材料実験シリーズ」では,地上における基礎実験及び小型ロケットによる飛翔試験並びに電気炉,分離装置等の多目的ないし特殊実験機器を中心にして開発を進め,1985年頃からのシャトルとう載実験を手始めに,米国のスペースシャトル,国産人工衛星の双方を適宜組み合わせながらこの分野の技術の発展を図る。

また,これらの共通系として,スペースプラットフォームやシャトルとう載実験機等の「人工衛星系共通技術の分野」及び打上げ用のM,N-I,N-II,H-Iロケットやそのロケット応用技術等の「輸送系共通技術分野」の技術開発を実施する。なお,共通系全体の技術シナリオは 第1-2-10図 の通りである。

当面15年間に実施について検討すべきシリーズとしての「宇宙パイロット工場」,「木星型惑星探査計画」,  「理学実験シリーズ」,「H-IIロケット」,「有人宇宙船」及び「有人軌道間輸送機」については,その技術的見通しについて一層の調査研究を進めることとする。

15年後の課題として配慮していくべきシリーズとして,各シリーズの機能を総合的に達成できる「宇宙通信ステーション」,「静止観測ステーション」「宇宙工場」,「大型宇宙実験所」,「大型宇宙発電所」等については,当面15年程度の間に実現はできないが,自国の計画としても,また,今後の国際協力の核のひとつとしても,極めて重要なものであり,各宇宙開発シリーズの実施に当たっては,これらの発展への考慮を十分に行っていく必要がある。

第1-2-10図 共通系全体の技術シナリオ


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