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第1部   時代を拓く科学技術
第2章  1980年代科学技術発展の展望
第2節  期待される科学技術の進展
4.  材料技術


材料は,科学技術の進歩とともに発展してきたが,近年,宇宙開発,原子力開発等の進展に伴い,今まで以上に新しい性能を持つ新材料が要求されるようになった。材料に期待される性能は,今後,耐熱,耐低温,高性能,特殊機能等ますます苛酷なものになると考えられ,これらの要求を満たす材料の実用化が今後の科学技術の発展に極めて大きな影響を与える事になる。

この材料研究開発は,大きく分けて二つに分類することができる。その1は,現在,材料の諸特性,用途,製法等の確立が十分には行われていないが,今後の開発努力によって豊かな資質を開花させ,新たなニーズを作りだしていくというシーズ育成型材料研究である。これには,高性能セラミックス,超電導性金属材料,複合材料,アモルファス材料,有機金属材料等が含まれる。その2は,現在すでに材料の諸特性,用途,製法等が確立しているが,今後の開発によって,より高度な水準へ発展するというニーズ指向型材料研究である。これには,原子力開発関連材料,非核エネルギー技術開発関連材料,ライフサイエンス技術関連材料,宇宙・航空技術関連材料等が含まれる。

ここで,その1として超電導材料,その2として太陽電池材料の研究開発についてみることにする。

超電導材料は,極低温にすることにより電気抵抗がゼロになり,全く電力の消費なしに大きな電流を流すことができ,したがって強い磁界を作ることも可能である。超電導線を利用した送電は,損失のない電力輸送を可能とし,強い磁界は核融合における高温プラズマのとじ込め,電磁流体発電の出力向上に資する。さらに船舶の高速推進及び磁気浮上列車等,多方面の利用が期待される。

超電導材料は,臨界温度,臨界磁界,臨界電流密度の三つの臨界値により性能が決まり,これらの値の改良によって,高磁界の発生,磁石の小型化,保冷材の低減が推進される。

超電導材料としては,線引加工が容易で80〜90キロガウスの磁界が発生できるNb-Ti系合金が現在広く利用されている。発生磁界は, 第1-2‐7図 に示すように,研究開発の成果として175キロガウスの磁界を発生するV3 a線材が開発されている。

また,近い将来200キロガウスを超す材料が開発されるだろう。超電導状態を示す上限の臨界温度は,研究開発の結果, 第1-2-8図 に示すように年代とともに上昇している。

超電導の主な応用の現況は,発電機では,数MVA級機の製作と運転に成功しており,磁気浮上列車では,国鉄の実験車両で500km/hを超す超高速度走行に成功している。

太陽電池は,太陽エネルギーを直接電気に変換する素子であり,通常,半導体のpn接合で構成されている。太陽電池は,太陽の光が入射すると半導体内部で電子―正孔対が生成され,外部回路に電流が流れるという原理を応用したものである。また,太陽電池の交換効率は

η=太陽電池から得られる最大出力/太陽電池への入射光エネルギー×l00(%)

で表わされる。

第1-2-7図 超電導マグネットの発生磁界の向上

第1-2-8図 超電導材料の臨界温度の上昇の推移

現在用いられている結晶シリコン太陽電池は,材料の単結晶シリコンを作るのに多くのエネルギーを消費し,かつ,加工段階における材料歩留まりが悪く,従来高価であったため,人工衛星用電源,山間へき地の無線中継所及び無人灯台などに使用が限られていた。このため,研究開発は,主に,変換効率の向上,信頼性,耐環境性,軽量化などに重点が置かれてきており,なかでもシリコン単結晶の研究が最も推進されてきた。

近年,太陽電池は,一般的な電力源としての利用が考えられるようになったが,その広範囲な実用化と普及を図るには,低コスト化が必須の条件であり,現在,数千円/Wかかるコストを100円/Wにすることを目標に開発が進められている。このため,太陽電池の製造・利用システム技術の開発とともに,材料を低コストで製造する技術と新しい半導体材料の研究開発が進められている。

半導体材料として,化合物半導体の研究は,II-IV族の単結晶のCdTe系の固溶体CdS-CdTeなど,III-V族の単結晶GaAs系の固溶体GaAs-GaAIAs,多結晶GaAs系の固溶体などが行われている。このような中で,発電コストを下げるため有効とされているものとしてアモルファス(非晶質)シリコン半導体が挙げられる。アモルファスシリコン太陽電池については,現在,基礎から応用レベルに至るまで幅広い研究開発が総合的に進められている。


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