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第1部   時代を拓く科学技術
第2章  1980年代科学技術発展の展望
第2節  期待される科学技術の進展
1.  エネルギー関連技術


石油の供給不安により注目を集めたエネルギー関連技術も研究開発において重要なものとなり,原子力,化石エネルギー,自然エネルギー及び省エネルギーの研究も活発に行われている。このうち,1980年代に実用化が期待される技術を中心に研究開発の状況を概観すれば次のようになる。

原子力発電は,その燃料であるウランの安定供給が期待できること,燃料の輸送,備蓄が容易であること,使用済燃料の再処理を通じて燃料の再利用が可能であることにより,国産エネルギーに準じた供給の安定性を持ち,また発電コストに占める燃料費の比率が小さいなどの特徴を有している。1978年(昭和53年)に原子力委員会が策定した「原子力研究開発利用長期計画」によれば,原子力発電の開発規模として1985年度(昭和60年度)3,300万KW,1990年度(昭和65年度)6,000万KWを大きな遅れなく実現することとされており,最も有望な石油代替エネルギーとして期待されている。また,この計画に沿って,軽水炉定着化のための努力の一環として,軽水炉の信頼性の向上,検査の効率化等を目的とした第二次の改良,標準化が進められており,また,原子力発電の拡大に見合う自主的な核燃料サイクル確立のために,海外におけるウラン探鉱,遠心分離法によるウラン濃縮パイロットプラントの建設・運転,東海村の再処理施設の運転及び民間再処理工場建設のための諸準備,放射性廃棄物処理処分の研究開発等が進められている。高速増殖炉,新型転換炉等の新型炉の開発も精力的に進められており,高速増殖炉については,熱出力7.5万KWの実験炉「常陽」が順調に運転されているほか,電気出力約30万KWの原型炉「もんじゅ」が1987年(昭和62年)の臨界を目途に建設される予定であり,新型転換炉については,電気出力16.5万KWの原型炉「ふげん」が順調に運転されている。また次の段階の実証炉については,原型炉の経験及び成果を踏まえ,80年代から90年代前半の実用化を目指して評価検討が進められている。多目的高温ガス炉は,発生高温ガスの温度1000゜Cを目標とする実験炉を昭和60年代前半の運転を目途に建設することとされている。核融合の研究については,核融合一歩手前の臨界プラズマ条件を達成するため,国際的にも最先端の水準にある臨界プラズマ装置(JT-60)の建設が進められるほか,大学等においても各種の装置による基礎研究などが幅広く行われている。また,日米間においては,昨年から研究者の交流,米国にあるプラズマ試験装置(ダブレット―III)を使った共同研究が行われている。

このほか,放射線利用の分野については,医療,農業,工業などの広い分野で応用が進められており,今後も利用の多様化,高度化が期待されている。

石油代替エネルギーとしての化石エネルギーとしては,技術的に問題が少なく資源量も豊富な液化天然ガス(LNG)の導入,石炭の利用拡大などが挙げられている。石炭の利用に関しては,石炭が固体であり,液体燃料に比べ汚染物質を多く発生するという欠点をなくすためガス化・液化の研究が行われ1980年代の新エネルギーとして期待されている。ガス化技術としては,LPG,LNG等の代替として使用可能な高カロリーガスを製造する技術,発電用低カロリーガスの製造に関する技術,高温のプラズマ中に石炭を送入して瞬間的にガス化する技術などがある。高カロリーガス製造技術では,加圧流動床方式による石炭・重質油混合原料のガス化技術と石炭のみを用いる水添ガス化技術の研究が行われており,混合原料のガス化については7,000m3 /日級ガス化パイロットプラントが建設され,実用化の研究が進められている。石炭の液化は,変換効率が高カロリーガス化に比べ高く,灰分などが大部分除去されるため単位体積当たりの発熱量が大きく,多種類の石炭の液化が可能であるといった特徴を有しており,原油あるいは石油製品と同様の液化燃料を製造する技術として期待されている。この技術としては,石炭と石油系の残渣油であるアスファルトを反応させて石炭を液化させるソルボリシス液化技術,石炭に水素を添加する溶媒を用い,可溶分を抽出する溶剤抽出液化技術,水素ガス中で石炭と溶剤を高温高圧で熱処理する直接液化技術の研究開発が行われ,ソルボリシス液化法の原料処理量1t/日のプラントの運転が行われているのを始め,溶剤抽出法では石炭処理量1t/日のプラントの建設が行われ,実用化への研究が進められている。

自然エネルギーとしては,将来,地熱,太陽,海洋,風力,バイオマスなどが利用可能なエネルギー資源とされるが,これらのエネルギーは開発が始まってから日が浅く,研究開発のための投資もまだ大きくはないが,今後強力に実用化を目指し研究開発が進められるものと期待されている。このうち,地熱に関しては,地下3,000〜4,000mから噴出される蒸気を利用した発電や,蒸気と共に噴出される熱水を利用した発電の調査・研究が行われている。太陽エネルギー利用には,太陽冷暖房・給湯システム,太陽熱発電,太陽光発電などがあり,冷暖房・給湯システムに関して普及を図っているほか,太陽熱発電では,太陽エネルギーを高い塔に集中的に集めるタワー方式と,曲面を用いていったん小さな部分で集熱し,その熱を集める曲面集光方式が開発され各々の方法について1,000KW級のプラントの建設が進められている。太陽光発電では,新しい半導体材料の研究開発,太陽電池の低価製造技術の開発,太陽光発電利用のためのシステム開発などが進められている。海洋エネルギーの利用では,波力発電や海洋温度差発電などの実用化が期待され,波力発電では,空気タービン方式,浮消波堤式波力発電方式などの研究開発を進め,海洋温度差発電では,実用プラントを1990年代前半を目途に開発を進めている。また,バイオマスでは,生物又は生物の光合成機構をエネルギーとして利用するため,バイオマス生産技術,セルローズ分解技術,固定化酵母を利用した連続発酵技術などの研究が進められている。

省エネルギーは,長期エネルギー需要暫定見通しにおいて,1990年度(昭和65年度)に14.8%を見込んでおり,「エネルギーの使用の合理化に関する法律」を中心として,産業分野,民生分野,輸送などの各分野で省エネルギー化を推進する必要がある。省エネルギーについては,工場,事業場におけるエネルギー使用の合理化,特に,エネルギー消費の約6割を占める産業分野でのエネルギー使用効率の向上,廃熱利用等を進める必要があり,省エネルギー技術として,MHD発電,高効率ガスタービン,燃料電池,廃熱回収システム,電力貯蔵システムが挙げられる。また,住宅及び建築物の省エネルギー構造化,自動車,家庭用機器などのエネルギー消費効率向上など,産業用から民生用まで広範囲にわたっての技術開発が必要である。このうち,MHD発電,高効率ガスタービンは,発電の際に今まで利用されていなかった高温での発電を可能にし,火力発電と組み合わせた複合発電を行い,発電効率を現在の40%程度から50〜60%に向上させるもので,これらを実現させるため高温材料等の研究が活発に行われており,1980年代の実用化が期待されている。


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