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第1部   時代を拓く科学技術
第2章  1980年代科学技術発展の展望

第1章でみてきたように,我が国の経済は1960年代まで,世界経済の速やかな拡大,豊富低廉な資源・エネルギーの海外からの供給,主として海外技術の導入による技術革新の進展,耐久消費財等新製品を中心とする大量消費市場の出現などを背景とし,設備投資と輸出を主導力として高度成長を続け,これに伴ない国民の所得も増大し,生活も大きな変化を遂げた。また我が国の科学技術水準も飛躍的に高まった。

しかし,こうした高度成長を支えた内外環境条件は,1970年代以降大きく変貌してきている。国際環境面では,世界的に資源・エネルギーの制約が高まり,貿易面でも国際摩擦が増大しつつある。国内においては,土地,水等国土資源の制約が益々強まる一方,耐久消費財等に対する物財的な欲求が相当に充足されたことから,国民のニーズは生活の質の向上へと向かい,価値感が多様化しつつある。

このようなことを背景としながら,時代は80年代に移行したが,第2章においては予想される社会経済情勢を踏まえ,科学技術がどのような進展をみせるかについて展望する。

ここで,まず80年代の社会経済情勢について概観することにする。

新経済社会7カ年計画(昭和54年8月閣議決定)は,昭和54年度から昭和60年度までの我が国の経済社会を予測しているが,これによると,この間の実質経済成長率は年平均5.5%(昭和55年1月修正)で,計画期間中におおむね240兆円(昭和53年度価格,用地補償費を含む)の公共投資が行われ,東北,北陸,中央,中国,九州の縦貫5道及び関越道,常磐道等の高速自動車国道や青函鉄道トンネルの完成を目指すなど,社会資本の整備は一段と進むこととなる。

一方社会構造については,1975年(昭和50年)における老年人口(65才以上)の全人口に占める割合は7.9%であったが,1990年(昭和65年)には11%に上昇すると予想され,確実に高齢化社会に移行するものとみられる。高齢化傾向は先進国共通の問題であるが,我が国の場合,高齢化の進展が急激に現われること,高齢化の程度が高いことなどの点が他の先進諸国と異っている。また,高齢化社会への移行に伴い,就業構造も変化が予想され,29才以下の若年労働力割合の大幅な減少,50才以上の労働力割合の増加など労働力人口の中高年齢化が進行するものとみられる。就業人口の産業別構成も80年代において,第1次,第2次産業の減少,第3次産業の増加が見込まれている。

以上のような社会状況の変化が予想されているのに加え,経済的変動要因としてはエネルギー問題がある。エネルギーは食糧と並んで経済社会や国民生活の基礎をなす資源であるが,エネルギーの大宗である石油の最近における供給不安は,輸入石油に依存している多くの先進国の経済運営に大きな影を落している。我が国における将来のエネルギー需給見通しについては,1979年(昭和54年)8月総合エネルギー調査会需給部会から「長期エネルギー需給暫定見通し」の中間報告が発表された。この暫定見通しでは,今後,輸入石油に対する依存度を可能な限り低下させることが重要であり,このためには省エネルギーの推進,輸入石油代替エネルギーの開発・導入に意欲的に取り組む必要があることを基本的な考え方とし,1990年度(昭和65年度)においてエネルギー需要量は8億2,000万kl程度(石油換算)と見込み,15%程度の省エネルギーの推進によって需要を7億kl程度とするものとしている。この結果エネルギーの総需給は,1977年度(昭和52年度)実績に比べ約1.7倍になるものの,輸入石油の割合を75%から50%に低下させ,輸入石油以外のエネルギーの割合を1977年度実績の25.5%から50.0%まで高めることとしている。

以上述べたような80年代における社会経済情勢を踏まえ,今後における科学技術の役割や,発展が期待される科学技術分野について以下第1節においてみてみることにする。


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