ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
第1部   時代を拓く科学技術
第1章  戦後から現在までの科学技術発展の軌跡
第3節  1970年代
2.  エネルギー対策としての科学技術


第2次大戦後,探鉱技術が急速な進歩を遂げ,中東等において大油田が相ついで発見され,石油供給量が増大し,また,油送船,パイプライン等の輸送手段も改良され,原油の価格が低下した。これに対し,石炭は採掘条件の悪化などにより生産費が上昇し,石炭価格が石油価格を上回るようになり,石油は石炭に対し経済的に有利なエネルギーとなった。また,科学技術の発展に伴い石炭を燃料とする蒸気機関の利用が減少し,石油を燃料とするガソリン機関,ディーゼル機関等の内燃機関が普及し,輸送,貯蔵,点火の容易さ,ばい煙,灰が少ないといった石油の特徴を生かした利用技術が進んだ。これらの原因により,産業革命以後,世界的にエネルギーの主役であった石炭が生産量で1967年(昭和42年)に石油より少なくなり,我が国においても 第1-1-33図 に示すように一次エネルギー供給量で1962年(昭和37年)に石油が第1位となった。

しかし,1970年(昭和45年)を境に石油の生産量が新たに発見される埋蔵量を超え,中東産油国が原油取引に直接加わるようになり石油価格の上昇が始まり,その後,1973年(昭和48年)に起こったオイルショックにより石油の生産・輸出の削減,価格の倍増等が行われ,石油を従来のように安価で欲しいだけ入手できる時代は終わり,産油国に石油保存政策が広まった。これにより,経済活動におけるエネルギーの果たす役割の重要性や,エネルギーを含めた資源の有限性に対する認識が新たとなり,各国でエネルギー政策の変更などが行われ,エネルギー関連の研究開発も活発に行われるようになった。

第1-1-33図 一次エネルギー供給量の推移

一方,我が国では1960年代を通じて,安価で豊富なエネルギーとしての石油をもとに高度成長を遂げ,エネルギー多消費型の産業である重化学工業の急速な成長などにより,工業部門におけるエネルギー消費量は大きく増大し,1人当たりの国民所得,エネルギー消費が欧州諸国に追いつきつつあった。高度成長に伴って蓄積された技術により,産業内部でのエネルギー利用の効率化も行われたが,石油が石炭に代わってエネルギーの主役となったため,エネルギーの海外依存度が高まり,我が国はエネルギー供給における安全保障の問題に困難な課題を負うことになった。1960年代の発展過程においては,量,価格ともに石油は安定的な供給を維持し,エネルギー問題は日本経済の発展にとって大きな選択要因とはならなかったが,1973年(昭和48年)のオイルショックにより我が国は従来のエネルギーコスト負担の有利さが,石油依存度が大きいために一挙に打ち消されて,不利な国となった。さらに,1970年代初めから大気,水質等環境汚染の問題化によるエネルギー供給産業立地の制約,順調な伸びを示していた原子力発電に対する原子力反対運動の活発化等による建設計画の遅れ,石油の輸入基地,備蓄基地等の立地の困難化などによって我が国のエネルギー問題は一段ときびしいものとなった。これに対して,エネルギー問題の解決のため,新エネルギーの開発,省エネルギー技術,原子力エネルギーの利用に関する各種の研究開発が活発化し,エネルギー供給の多様化によって海外依存度を低下させる努力が進められた。

また,現在,我が国のエネルギー供給量の約3割を占め,重要なエネルギー供給源である電力についてみると, 第1-1-34図 に示すとおり戦後から1961年(昭和36年)までは,我が国の地形を生かした水力発電が主役であったが,石油供給の増加とともに火力発電が増大し,1962年(昭和37年)にその地位を入れ換え,火力発電が中心となり,1978年(昭和53年)現在で総電力量の77%となった。この内82%が石油をエネルギーとする発電であった。一方,原子力発電が実用化され,1966年(昭和41年)から発電が開始され,現在では総電力量の10%以上となっている。

最近のエネルギー関連技術の研究開発活動を総理府統計局の行ったエネルギー研究調査でみると,1977年度(昭和52年度)で2,230億円,1978年度で2,770億円で,各々総研究費の6.9%,7.7%を占め,研究開発の重要分野となっている。 第1-1-6表 で見られるようにエネルギー研究費の半分以上が原子力エネルギーであり,省エネルギーがそれに次いでいる。一方,増加率をみると原子力エネルギーの増加率が全体の増加率より低く12.2%となっているが,ほかは大幅な増加率を示している。また,各々の分野における研究活動を概観すると次のようになる。

第1-1-34図 我が国の発電電力量の推移

第1-1-6表 研究テーマ別エネルギー研究費


エネルギー開発
1) 化石エネルギー

化石エネルギーの研究には,石油・天然ガスの探査,生産,備蓄等の研究,石炭の利用研究などがあるが,石油の代替エネルギーとしては,石炭の利用研究が中心となっている。最近の石炭エネルギーの利用研究には,新しい燃焼法の研究開発と石炭のガス化・液化とがあり,燃焼法の研究では,燃焼効率が高く,汚染物質の発生の少ない流動層燃焼方式の研究や重油中に微粉炭を混合して液体として利用する石炭・石油混合(COM)燃料の研究などが行われ,石炭のガス化・液化に関しては,各種の方法の研究や,パイロットプラントの建設などが行われた。


2) 原子力エネルギー

我が国のエネルギー研究費で最も多く使用されているのが原子力であり,その多くが原子力発電に関係した研究である。我が国の原子力発電は,1978年度(昭和53年度)において発電電力量で10.1%,一次エネルギー供給量で3.6%を占め,重要なエネルギーとなっている。 第1-1-7表 に示すとおり,我が国の実用の原子力発電が始まったのは1966年(昭和41年)であり,その後1970年に2番目の原子力発電所が発電を開始した。以後次々と発電が開始され,電気出力も増大され,最近では100万KWを超える大出力の発電所が運転されている。

また,安全研究については日本原子力研究所を中心として,原子炉燃料体の健全性,冷却材喪失事故の工学的安全性,原子炉反応度事故の試験,原子炉施設の構造安全性,安全性の解析と評価,環境放射能の評価と解析,放射性廃棄物の処理・処分などの研究が活発に進められた。

また,燃料の有効利用のために動力炉・核燃料開発事業団により使用済燃料再処理施設が建設され,1977年(昭和52年)にホット試験が開始された。

一方,遠心分離法によるウラン濃縮技術が自主技術により開発され,1979年(昭和54年)にパイロットプラントが部分運転を開始し,濃縮ウランの生産が始まった。これは,1959年(昭和34年)に試作された遠心分離機を順次改良して実用化し,濃縮ウランの国内生産を可能にしたもので,原子力エネルギーに関する対外的立場をも高める重要なものであった。

第1-1-7表 我が国の原子力発電所

新型の動力炉の開発も活発に行われ,高速増殖炉,新型転換炉の研究開発が進められた。高速増殖炉は,ウランの利用効率が60〜80%(軽水炉では約1%)と格段に優れた動力炉であり,我が国の自主技術により開発された実験炉である「常陽」は,1977年(昭和52年)に臨界を達成し,以後順調に運転され,各種性能試験が実施された。高速増殖炉の開発と並行して進められた新型転換炉の原型炉「ふげん」は,1978年(昭和53年)に臨界を達成し,我が国初の自主開発による発電炉となった。新型転換炉は,核燃料の利用効率が高く,軽水炉の稼動に伴って生産されるプルトニウムを有効に利用し,核燃料の効率化と多様化を図りうるという点で高速増殖炉が実現するまでの期間,ウラン資源及び濃縮役務を節約するものと期待されている。

また,将来,人類の未来を担う究極のエネルギー源として実現が期待される核融合の研究や,核熱エネルギーを直接産業に供給し,電力以外でも原子炉の利用を図る多目的高温ガス炉などの研究も進められた。


3) 自然エネルギー

自然エネルギーは,クリーンで,国産の豊富なエネルギーとして注目されているが,大型のエネルギー供給源として利用するにはエネルギー密度が低く,供給が不安定である等の問題点もある。しかし,エネルギーの多様化を図るため,現在,太陽の光,熱を利用する太陽エネルギー利用技術,熱水,深部地熱を利用する地熱エネルギー利用技術,効率のよい風車の開発を中心に研究されている風力エネルギー利用技術,波力,温度差などを利用する海洋エネルギー利用技術,農作物,生物系有機性廃棄物の転換によりアルコール,メタン等を得るバイオマスエネルギーなどの研究が活発に行われるようになった。

太陽エネルギーの利用技術としては,太陽熱発電,太陽光発電,太陽冷暖房・給湯システムがあり,太陽熱発電ではパイロットプラントの建設を開始したのをはじめ,各種研究が行われた。また,我が国における地熱発電は,1979年(昭和54年)現在で6地区約16万KWの発電を行っているが,更にその適切な開発を図るため日本各地の地熱分布状況の調査及び探査技術,採取技術,熱水利用発電技術,多目的利用技術,環境保全技術等の研究開発が行われている。このほか,海洋エネルギー利用技術では,波力を利用して発電を行う空気タービン方式の大型ブイ式発電装置「海明」を開発し,発電実験を行い,データ解析を行っている。


4) 省エネルギー

省エネルギーとはエネルギーを効率的に利用することで,今まで無駄にしていたエネルギーを少なくし,それによってエネルギー消費を削減しようというものであり,熱の利用を少なくし,熱バランスをくずすことにより起こる熱公害の防止にも役立つ。また,石油高騰により経済性の面からも注目を集めるようになり, 第1-1-35図 に示すとおりオイルショック以降確実に効果が現われてきている。

省エネルギーの技術開発は,対象となる技術がソフトからハードにわたり,研究開発の規模,目的が様々であり,また,成果の利用者が各分野にわたるなどの多様性をもっていることが特徴である。この技術が有効と考えられる分野としては,エネルギー供給部門,製造業部門,民生部門,運輸部門などがあり各分野における研究開発が活発に行われた。

第1-1-35図 エネルギー利用率の推移

エネルギー供給部門では,高温度のエネルギーの利用を可能にし,エネルギーを多段に利用できるようにするためのMHD発電や,高効率ガスタービン複合発電の研究,超電導電送技術等に関連した極低温技術の研究などが行われた。また,製造部門における研究は,経済的メリットの認識とともに活発に行われ,鉄鋼業における高炉炉頂圧発電設備,セメント製造業におけるNSPキルンなどプロセスの改良,設備の改良等多くの技術が開発され,実用化された。他方,運輸部門での研究も活発に行われ,自動車・船舶の燃料消費の改善,鉄道の回生ブレーキ付チョッパ制御電車の開発,車両の軽量化などが行われた。


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ