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第2部  科学技術活動の動向
第4章  国際交流の動向
1  国際機関における活動
(1)  国際連合及び専門機関



(1) 国際連合

国際連合(国連)の科学技術活動は主として経済社会理事会(ECOSOC)の総括の下に,各種機関,委員会などを通じて進められている。特に近年,南北問題解決の大きな鍵となる開発途上国の研究開発能力の育成及び全地球的視野で解決に当たる必要がある食糧,エネルギー,環境問題などに関する活動が積極的に展開されている。

1979年8月には,1970.年代に国連が主催してきた環境,人口,食糧,人間居住,水などの諸会議の総括となる開発のための科学技術国連会議(UN CSTD)が開催されることになっているが,この会議の準備のために世界各地での地域準備会合及び世界準備会合が行われており,我が国は既に開催された2回のアジア・太平洋経済社会委員会(ESCAP)地域準備会合と3回の世界準備会合への出席を含め国内の準備体制作りを積極的に進めている。

特に,この会議への協力の一環として1978年11月には日本政府の主催により,18か国87名の参加者を得て「開発のための科学技術に関するアジア・太平洋地域セミナー」を開催した。

ここでは開発における主要テーマである1)総合農村開発,2)適正技術の移転と育成,3)開発のための科学技術協力に関する地域機関の役割,を議題として学識経験者による講演と参加者相互の意見交換が行われ,開発に関しての諸課題解決の方策等についてアジア・太平洋地域内諸国間の相互理解が促進された。

なお,8月の本会議においては,各国及び国連等の国際機関の開発施策の指針となる行動計画についての議論が中心となる予定である。

ESCAPは,近年,新たな展開を目指し,食糧,農業,エネルギー,原料,技術移転,外国資金援助及び総合農村開発の各分野に重点を置いて活動の強化を図っている。第35回総会は,1979年3月にマニラ(フィリピン)において開催された。主要テーマとして, ESCAP地域開発のための政策,計画及び展望,技術協力と資金運用, ESCAP諸活動の検討などが取り上げられ,活発な討議がなされた。

国連環境計画(UNEP)は,国連組織内の諸機関の環境に関する活動を調整し,環境問題解決のための国際協力を促進することなどを目的としている。1978年5月には,事務局のあるナイロビで,第6回管理理事会を開催した。この会議では,地球モニタリング・システム,有害化学物質登録制度,人間居住と健康,環境と開発,海洋汚染防止などの幅広い活動の今後の基本的方向を討議するとともに,16の決議を採択した。また,1977年12月の国連総会において,人間居住環境改善のため人間居住委員会及び人間居住センターの設立が決議され,その委員会が1978年4月にニューヨークで開催された。

第3次国連海洋法会議は,伝統的な海の国際法を根本的に再検討し,新しい時代の要請にこたえる海洋法を作ることを目的として,1973年以来開催されている。第7会期(1978年3月〜5月,ジュネーブ)及び第7再会期(1978年8月〜9月,ニューヨーク)では,船舶通航,深海海底鉱物資源開発制度,海洋汚染防止及び大陸棚外縁の定義などの諸問題に関し,新しい制度を確立するための努力が払われた。また,1979年3月から4月にかけてジュネーブで第8会期が開催された。なお,今次海洋法会議には約150か国が参加しており,我が国は,新しい時代の要請や開発途上国の主張を配慮する一方,我が国の大局的利益が確保されるような公正な新海洋法秩序の確立に努力している。

宇宙空間平和利用委員会は,宇宙分野における国際協力の推進,宇宙空間の利用から生ずる法的問題などの検討を行う目的で設立された委員会である。同委員会は,これまでに宇宙条約,救助返還協定,宇宙損害賠償条約及び登録条約を成立させたほか,宇宙応用計画などを推進してきた。現在,同委員会においては,月条約案,直接放送衛星を律する原則案,リモートセンシング活動に関する法的技術的問題,その他宇宙応用計画などについて継続して審議がなされており,1978年1月の原子力衛星カナダ墜落事件に端を発した原子力衛星問題については,1979年2月の同委員会科学技術小委員会において第1回作業グループが開催され,専門家による検討が進められている。また,宇宙応用計画の一環として1978年10月にWMO/UN気象衛星セミナーが,東京で開催された。

国連大学(UNU)は,日本に本部を置く唯一の国連機関であり,「大学本部」を中心に,世界各地に設置される同大学の「研究研修センター及び研究研修計画」の活動並びに各国の既存の研究・研修機関との提携協力により,人類の存続,発展及び福祉にかかわる緊急かつ世界的な問題の解決に寄与することを目的とする研究研修機関である。現在,優先プログラムとして「世界の飢餓問題」,「人間と社会の開発」,「天然資源の利用と管理」の3テーマを取り上げ,世界各地の研究・研修機関との提携協力により活動を進めている。

我が国では,提携機関としてアジア経済研究所が国内の関係研究機関と協力しつつ,「技術の移転,変容及び開発:日本の経験」について研究を進めており,また,協力機関として農林水産省食品総合研究所が,「食糧収穫後保存技術」について国連大学の研修生を受け入れる予定である。


(2) 国連専門機関及び国際原子力機関(IAEA)

国連専門機関とは,国連憲章第57条及び第63条に基づき,協定により国連と連携関係をもつ国際機関であり,科学技術の分野では,国連教育科学文化機関(UNESCO),世界保健機構(WHO)などにおいて,独自の憲章に基づいて活動が行われている。

UNESCOについて,各事業分野における活動の状況について概観すると,科学技術情報の分野では,各国の科学技術情報量の飛躍的増大に対処するため,1973年からその国際的流通を円滑迅速にすることを目的とした世界科学情報システム(UNISIST)事業が発足し,先進国間の情報交流と開発途上国援助の両面から多角的に展開されつつある。本事業の一環として行われている国際逐次刊行物データシステム(ISDS)には,国立国会図書館が国内センターとして参加している。また,これに加え1976年からは,国内の図書館,資料館,文書館に関するインフラ整備計画(NATIS)を本事業のそれに併合した総合情報計画(GIP)が発足し,我が国は,政府間理事会の理事国に選出されている。

基礎科学の分野では,国際原子力機関(IAEA)との協力による国際理論物理学センター(イタリア)での開発途上国の研究者への援助事業が拡充されつつあるほか,ライフサイエンス(脳細胞の研究,微生物学及び分子生物学),コンピュータ科学などが重点的に推進されている。我が国はこの分野では,1965年以来,東京工業大学で「化学及び化学工学国際大学院研修講座」を開設しているほか,1973年10月以来,大阪大学を中心として「徴生物学国際大学院研修講座」を開設している。また,1975年から天然産出物に関する微生物学及び化学の分野において,東南アジア諸国の若手研究者養成を目的とする基礎科学のネットワーク事業推進のためUNESCOに信託基金を提供しており,この大学及び研究機関間を結ぶネットワークを通じて,研修コースの開催,科学者の交換事業などが進められている。

技術及び工学における研究・教育の分野では,エネルギーの効率的利用等に関する国際協力事業が実施されつつあるほか,工学教育の内容・方法に関する検討も行われている。この分野では,我が国は,九州大学において「国際地熱エネルギー研修講座」を,1970年以来毎年実施している。

海洋学,水文学及び天然資源等の研究の分野では,人間と生物圏(MAB)計画,国際地質対比計画(IGCP),政府間海洋学委員会(IOC)の諸事業のほか,1975年から発足した国際水文学計画(IHP)がそれぞれ進展している。これらの計画は,いずれも人類の生活環境としての地球の実態を明らかにし,天然資源の合理的利用と環境保全のための科学的基礎を提供しようとする長期的な国際共同研究事業であり,MAB国際調整理事会,IGCP委員会,IOC総会,同執行理事会,IHP政府間理事会がその国際調整に当たっている。我が国は,これらに理事国等の立場で積極的な参加を行っている。IOCは,加盟国の共同活動を通じ,海洋の性質及び資源に関する知識を増すための科学調査を促進する活動を行っている。1977年10月にパリで開催されたIOC第10回総会では,1965年以来実施されてきた黒潮共同調査(CSK)の終了を決定するとともに,CSKの調査対象海域を更に拡大した西太平洋海域共同調査(WESTPAC)を東南アジア諸国をはじめ太平洋沿岸諸国の参加を得て実施することが決議され,上記シンポジウム及び本共同調査準備会議が,1979年2月東京で開催され,具体的な調査・研究分野等が決定された。WESTPACは,西太平洋海域の海洋資源や地球物理学的現象等の解明を目標としており,CSK同様,我が国の主導的かつ積極的な役割が期待されている。

WHOは,人類の健康において可能な最高水準の享受を目的としており,我が国は毎年,研修生の受入れ,各種セミナーへの講師派遣,専門家の派遣などを通じて積極的な協力を進めている。

また,国連食糧農業機関(FAO)及びWHOにおいては,両機関合同の食品規格委員会において,52年度に引続いて消費者の健康を保護し,食品の公正な取引を保証するため,世界的規模の食品規格を作成している。

IAEAは世界の平和,健康及び繁栄のための原子力の貢献を促進,増大することを目的としており,我が国はIAEAの理事国として,総会,理事会に代表を派遣し,その活動方針策定に積極的に参加するとともに,各種専門家会合への参加,技術援助計画に基づく専門家の派遣,国際原子力情報システム(INIS)への参加などIAEAの各種活動に参加している。


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